総裁選討論 報ステとWBSの違い – NEWSポストセブン

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日本記者クラブ主催の自民党総裁選討論会を前に、記念撮影をする(左から)河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行(時事通信フォト)

 自民党総裁選をめぐる報道が連日繰り返されている。候補者でない人について思わず気になってしまうことも少なくないのではないか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘した。

【写真】佐々木明子アナの嫌いなものは「たまった洗濯物」

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 本当に露出の多い4人です。自民党総裁選に立候補した河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏、野田聖子氏が討論するシーンをあちこちの番組で見かけます。同じ日に複数のニュース番組をハシゴしている姿も。4人が横並びに座って語る同パターンが繰り返されるだけに、むしろ、各ニュース番組の「違い」の方が見えてくるのが興味深い。

 9月17日、テレビ朝日系『報道ステーション』(午後9時54分)に生出演した4人。「次の感染拡大ではロックダウンをしますか」「休校にしますか」などの質問に「〇」か「×」か答を求められました。

 しかし、そもそも考えてみれば日本の憲法下でロックダウンはありえない。質問が正確さを欠いていたこともあり、「法律改正もしていないのにロックダウンとはいかがなものか」と候補者から逆質問が飛ぶ。感染状況も地域などで条件が違うのに「休校しますか」とアバウト過ぎる質問に対して指摘され、MCの徳永有美アナは困惑気味に。「前提状況というところもあるんですけど…」などの説明に終始していました。

 逆質問が来ることを想定していなかったのか。あるいは事前に作成された質問を、ただMCとして読み上げていたからか。ネット上でも「報ステの質問がグダグタ」「質問のレベルが低すぎる」と番組側に疑問を呈するコメントが目立ちました。

 さて、その1時間後。今度はテレビ東京系『ワールドビジネスサテライト(WBS)』に同じく4人が生出演。「〇」か「×」の札で答えるコーナーで「将来的には消費税は上げなくてはいけない?」という質問が出されると、やはり4人から「どのぐらいの将来ですか?」と疑問の声が。

 特にばっさり返す傾向が強い河野氏は、札すら上げないで「将来的というのがどれぐらいのタイムスパンを言われているのか分かりません」と回答拒否の姿勢を見せた。さぞやMCがタジタジになるかと思いきや……。

 進行担当の佐々木明子キャスターは、即座に「就任中ということです。もし総理になられたら」と説明を返し、それに対して河野氏は「(総理を)何年やっているのか、日本の場合は分かりません」と答えました。ネットでは「消費税問題から逃げた」「はぐらかし」「国民と対話するつもりがない印象」と、政治家の姿勢の方を批判するコメントが多く見うけられました。

 同じ「候補者4人が揃って討論する」というパターンでも、誰が質問しいかにやりとりするのかで、違う結果が出てくる面白さ。

 そのWBSで水~金曜日のメインキャスターを担当する佐々木明子アナは、テレビ東京へ初の新卒採用女性アナとして入社し、さらに同局初の海外赴任アナとしてニューヨーク支局を担当、経済キャスターとしてリーマン・ショックを現場で体感してきた人です。

 その後は朝の番組『ニュースモーニングサテライト』等でメインをつとめてきました(~2021年3月)。が時に株式市況を伝える口調が早口過ぎて、視聴者に「伝える」ことより株価変動に連動した自分の口調に酔って(?)いるのかと思えたり。「私、マーケットに詳しいのよ」的ノリにちょっとついていけない感じもありました。

 しかし、4月からWBSメインキャスターになると話す速度もぐっと変化して、ゆったりと間合いをとりつつ緩急あり、響く声で明快に語る。その口調は落ち着きと奥行き、視野の広さを感じさせます。夜のニュース番組で視聴者に伝えるためにはどのような自己演出をすればいいのかを考えているのでしょう。

 MCとして用意された原稿もただ読んでいるのでなく、政治や経済の全体状況を把握し各論についての理解を感じる。でなければ政治家から突然返された逆質問に、堂々と即応することはなかなかできない。おびえたり動揺を見せない存在感が何よりも佐々木さんの魅力です。

 時には司会進行だけでなく、批評的なコメントをスッとさしはさむのも心地よい。例えば国と一体に
なって外国の株主に圧力をかけたとされる東芝の問題では、コメンテーターが「東芝は半導体や原発など日本の安全保障に関する企業だから国と話さざるをえない」とコメントすると、すかさず佐々木さんが「資本主義として見れば(国の介入は)問題がある」と返し丁々発止のやりとり。

 あるいは、システムトラブルを繰り返し金融庁が業務改善命令を出したみずほ銀行について「20年の間に(3銀行が合併した)企業文化を一つに揃えることができなかった問題がある」と指摘するなど、とにかく切れ味がいい。

 さて10月、いよいよそのWBSと同じ時間帯の『報道ステーション』で変革が。メインキャスターに超大物の大越健介氏が登場とあって、注目が集まっています。大越氏といえばNHKワシントン支局長を経て『ニュースウオッチ9』『NHKスペシャル』等の看板番組キャスターを務めてきたあの人。

 大越氏自身も「日々のニュースは大事な主食。例えるなら“米”。皆さんに良質な主食をお届けしたい」と所信表明。米どころ新潟県の出身ゆえの言い回しだそうですが、自分の仕事をすらっと「主食」と言い切ってしまう自信家ぶり。東大出超エリート街道を来ただけに、下手をすれば「上から目線」と批判される危険性も孕む。

 仮に、ニュースが「主食」だとしても、ニュース番組同士でさらに主たる席を争うバトルがある。大越さんですらノンキに構えていられない午後10時のニュース番組ガチンコ勝負。秋の夜長、二つの番組を対比させながら見る醍醐味を存分に堪能したいと思います。

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