LINE NFTマーケットで二次流通機能が本格稼働
LINEの運営するNFTマーケットで、売買されるNFTへのコンテンツ料を設定できる機能が正式リリースされた。これにより、IPホルダーやクリエイターが、二次流通市場でNFTが売買されるたびに一定の収益をあげることができるようになる。
今回のリリースでは、併せて出品アイテムをサービスごとにまとめて閲覧できる機能も追加された。海外のOpenSeaなどですでに提供されている機能が続々と追加されている様子が伺える。
LINEのNFTマーケットは、独自のブロックチェーンであるLINE Blockchain上で稼働するサービスだ。通常、NFTはイーサリアムブロックチェーンを使って発行されるものの、LINEのNFTマーケットで流通するNFTはLINE Blockchain上で発行されたものが基本となっている。
イーサリアムの場合、取引手数料が高く少額のNFTを売買しづらいことや、日本円での売買に対応していないことなどから、NFT取引に一定のハードルが存在する。LINEのNFTマーケットであれば、安価な手数料でNFTを売買でき、すべて日本語でサービスを利用できる点も特徴だ。
今週は、そんなLINE NFTマーケットでも追加された二次流通市場におけるコンテンツ料の重要性について説明する。
参照ソース
- LINE BITMAX Wallet、「NFTマーケットβ」にて二次流通を本格開始
[LINE]
OpenSeaでインサイダー取引が発生
NFTマーケットプレイス最大手のOpenSeaで、従業員によるインサイダー取引が行われていたことが発覚した。
プロダクト責任者を務める人物が、OpenSeaのトップページに掲載予定となっていたNFTの情報を入手し、掲載前に購入していたという。トップページに掲載後は価格が高騰する傾向があったため、高騰後に売却して多額の利益を得ていたようだ。
現状、NFTに関する法律は、インサイダー取引を含め世界各国で特に制定されていない。過去にもインサイダー取引を疑う声は出ていたものの、違法性が確立されていなかったため無法地帯となっていたのだ。
今回の件は、1人のOpenSeaユーザーが、インサイダー取引と疑われるトランザクションを見つけたことを報告したことから明らかになった。OpenSeaのプロダクト責任者が過去に公開していたウォレットアドレスを特定し、トランザクション履歴をまとめた上でTwitterで指摘した。
NFTのトランザクション履歴はブロックチェーンに記録されるため、ウォレットアドレスと持ち主を紐づけることができれば、どのような取引を行なっているのかは容易に明らかとなる。NFTのインサイダー取引に違法性はないものの、OpenSeaは今回の件を重く受け止め、プロダクト責任者に辞任を要求した。
参照ソース
- Employee information use at OpenSea
[OpenSea]
今週の「なぜ」NFTの二次流通機能はなぜ重要か
今週はLINE NFTマーケットの二次流通機能とOpenSeaのインサイダー取引に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
NFTが高額で売買されても、クリエイターに収益はほとんど入らない市場構造
マーケットプレイスはOEM機能を提供する流れに
1週間あたり10億ドルを超えるNFT市場の取引量をクリエイターに還元するためにロイヤリティ機能が必要
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
NFTの高額売買におけるクリエイターの収益
高額売買が続くNFT市場だが、実はクリエイターには販売額の大部分が還元されていない構図となっている。クリエイターの活動をエンパワーメントするとして注目を集めたNFTだが、販売方法によっては転売ヤーが収益をあげているだけなのだ。
ブロックチェーン上で発行されるNFTは、特定の管理者の影響を受けないため、個人間での売買が可能となる。クリエイターからNFTを購入した人物は、購入額よりも高い値段で自由に転売することができる。こうしてNFTの価格は釣り上げられていくが、肝心のクリエイターには最初の売却時しか収益が入っていないことがわかるだろう。
NFTは転売されることで価格が高騰していく仕組みとなっているため、初回販売時に高い価格をつけることは困難だ。転売目的でNFTを購入するユーザーが多いため、最初から高いNFTにはなかなか買い手がつかない状況となっている。
二次流通市場のロイヤリティ
そこで重要なのが、二次流通市場におけるロイヤリティだ。今回LINE NFTマーケットが発表したコンテンツ料は、NFTの転売時にクリエイターへ永続的に収益を還元できる仕組みである。
先行する海外のOpenSeaやRaribleといった大手マーケットプレイスではすでに実装されており、1%~3%程度のロイヤリティを設定するのが一般的となっている。LINEではコンテンツ料と名付けられているが、この機能により、NFTが売買される度にその金額の数%がクリエイターに自動的に還元される仕組みだ。
たとえば、初回販売時に1万円で購入されたNFTが、その後に5万円、10万円、100万円と転売されていった場合のクリエイターの収益を考えてみよう。(便宜上マーケットプレイスの手数料は考慮しない)
- ロイヤリティなし:1万円
- ロイヤリティ3%:1万円 + 5万円×3% + 10万円×3% + 100万円×3% = 4万4500円
上記の通り、3%といえどロイヤリティによる収益の方が初回販売時の収益を上回っていることがわかる。転売を経て高額売買されるNFTを作ったとしても、ロイヤリティがなければ転売ヤーにのみ収益が入り、クリエイターには一銭も入らないことになってしまうのだ。
NFT市場の取引量は1週間で10億ドルを突破
NFTのデータ分析企業NonFungibleによると、8月最終週の1週間におけるNFT市場全体の取引量は、一時10億ドルを突破していた。仮にロイヤリティが設定されていない場合、先述の通りNFTの転売ヤーだけが収益をあげ、肝心のクリエイターにはほとんど還元されていないことになる。
日本の場合、NFTの二次流通市場における売買をRTM(リアルタイムトレード)と呼び賭博法に抵触する可能性が指摘されているが、まさに個人間で売買できるのがNFTの特徴だ。
しかし、それだけでは転売ヤーおよび投資家のみが市場の伸びから恩恵を受けるだけとなり、クリエイターの活動に還元することができない。日本は世界有数のコンテンツ大国であることから、クリエイターの活動を支える根本的な仕組みが必要だと言えるだろう。
日本発のNFTマーケットプレイスを提供するLINEが、ロイヤリティ機能であるコンテンツ料に対応したことは、クリエイターだけでなく日本のNFT市場全体にとって非常にポジティブなことなのだ。