大気中の水素は人間の活動により20世紀中に70%増加した

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南極で得たサンプルの分析から、19世紀には安定していた大気中の水素量が、20世紀になって大幅に増加したことがわかりました。これまで水素の主要な排出源は自動車であると考えられてきましたが、排ガス規制により自動車による影響が減少したと考えられる時期にも水素排出量の減少傾向は見られないことから、専門家は他に重要な要因が存在していると指摘しています。

H2 in Antarctic firn air: Atmospheric reconstructions and implications for anthropogenic emissions | PNAS
https://doi.org/10.1073/pnas.2103335118


Scientists Just Identified Another Mysterious Surge in The Atmosphere Due to Humans
https://www.sciencealert.com/scientists-identify-yet-another-rising-atmospheric-emission-due-to-humans

カリフォルニア大学アーバイン校の地球科学者ジョン・D・パターソン氏らは、南極で万年雪の空気層を採取して大気中の水素量の分析を行いました。すると、1800年代半ばから後半にかけての水素量は330ppbだったのに対し、そこから2003年までに550ppbにまで増加していることがわかりました。

水素は、燃料電池に用いることで大気汚染物質が削減できるということで、「クリーンなエネルギー源」として期待を寄せられていますが、一方で、大量に漏出した場合、メタンの寿命を伸ばしてしまい、成層圏のオゾン濃度低下につながることが指摘されています

これまで、大気中に水素を排出する主要因は自動車であると考えられてきました。しかし、近年は自動車のテールパイプに搭載された触媒コンバーターによって、排気ガス中の水素量は減少しており、実際、大気中の一酸化炭素濃度は対策によって減少傾向がみられるのですが、水素の排出量は減少の兆候もなく増加の一途にあるとのこと。

他の研究でも、2000年から2015年にかけて、大気中の水素量が一貫して増加していることが示されています。

この結果から、パターソン氏は「我々は自動車以外の水素発生源を過小評価している可能性が高い」と語っています。

パターソン氏らが注目しているのは、工業プロセスからの「水素漏れ」です。どれぐらいの「水素漏れ」が発生してるのか過去に計測されたことはありませんが、推定では、1985年から2005年の水素排出量の半分が「水素漏れ」によるものだとみられています。

近年、水を水素と酸素に分離するにあたり、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーを用いることで、生成過程において二酸化炭素が発生しない「グリーン水素」が注目されていますが、今後、「グリーン水素」が大規模に生成されるようになると、「水素漏れ」の量はさらに増加する恐れがあるとパターソン氏らは懸念を示しています。

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