Microsoft CEOのサティア・ナデラ氏、そのMicrosoftの子会社となるLinkedInのCEOのライアン・ロスランスキー氏の両社CEOが米国時間9月9日8時(日本時間9月10日0時)からオンラインで対談を行ない、Microsoftが推進するハイブリッドワーク(オンサイトであろうが、リモートであろうが、働く場所が固定されない働き方のこと)のパラドックス(本来の目的とは矛盾する逆説にたどり着くこと)について議論している。
両社によれば両CEOは、従業員がリモートワークを続けたいという希望を持ちながらも、対面のミーティングへの参加も望んでいるなどハイブリッドワークには解決すべきパラドックスがまだまだあり、それらはテクノロジーを活用して解決していくことが重要だと強調した。
それにあわせてMicrosoftとLinkedInは、Teamsの新機能や、LinkedInの新サービスなどについて発表を行った。例えば、MicrosoftがPowerPointデスクトップアプリの新機能として提供を発表した「Cameo(カメオ)」は、PowerPointのプレゼンテーションの中にTeamsカメラのセルフィー映像を統合することが可能で、これまでよりも効果的なオンラインプレゼンテーションを行うことが可能になる。
リモートワークは続けたいが、対面のミーティングも必要という従業員が抱えている「ハイブリッドワーク・パラドックス」
Microsoft CEOのサティア・ナデラ氏、LinkedIn CEOのライアン・ロスランスキー氏の両社CEOはオンライン対談の中で、ハイブリッドワークに関する調査やその背景にある「パラドックス」に関して議論。
昨年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生して以降、リモートワーク/テレワークなどと呼ばれる企業のオフィス以外の場所で働く働き方が普及してきたが、特に欧米などではワクチンの接種がアジア各国などに比べて先に進んだこともあり、オフィスに社員を戻す動きが進んでいた。しかし、デルタ株などの変異ウイルスが登場してきたこともあり、そうした動きにブレーキがかかっており、実際、Microsoftが10月4日から行う予定だった米国オフィスの全面再開計画は変更になった。今後、公衆衛生上のガイダンスに従い再開される時期になっても、30日の移行期間を従業員に通告した上で再開されるという。
このため、Microsoftが「ハイブリッドワーク」という言葉で表現している、従業員が自宅で働きたいなら自宅で、外出先で働きたいなら外出先で、オフィスで働きたいならオフィスでという、従来の働き方と新しい働き方を組み合わせたハイブリッドな働き方を実現することが企業に求められる状況になっている。
今回、両社が発表した世界100カ国のMicrosoft従業員を調査したレポートによれば、16万人の従業員を在宅勤務にし、さらに2万5000人の新入社員をリモート採用したMicrosoftの従業員のうち、90%がMicrosoftに対して高い帰属意識を感じており、これは過去最高のスコアだという。
その意味ではMicrosoft自身のハイブリッドワークは成功だったと言えるが、その調査を進めていくと、パラドックスがあることも分かってきたという。例えば従業員の多くはリモートワークを維持したいが、実際にほかの従業員に会う時間を増やしたいと感じているし、管理職はオフィスで過ごすと計画している時間の割合が非管理職に比べて多い(45%対39%)というギャップがあったりする。このように、リモートワークができればいいという単純な状況ではないということを、サティア氏は「ハイブリッドワーク・パラドックス」と呼んでいる。
サティア氏は、こうしたハイブリッドワーク・パラドックスの解決が今後の10年の企業における課題になると指摘。「新しいデータは、従業員の期待が変化し続けていることを示しており、ハイブリッドワークに対する万能のアプローチがないことを示している。組織がこの複雑性を解決する唯一の方法は、働き方、住む場所、ビジネスプロセスへの取り組み方など、事業モデル全体に柔軟性を取り入れることだ」と述べ、テクノロジーを活用したより柔軟な組織やビジネスモデル自体を柔軟にしていくことが重要だとしている。