「ごはんがもりもりすすむ!」というイメージがあまりない食材、きゅうり。ですが、はたして本当にそうなんでしょうか? 我々人類はこれまで、そういう固定観念にとらわれていただけなんじゃないでしょうか。
そこで今回は、ごはんがすすんですすんでしょうがないきゅうり料理が作れないか、あれこれ試してみようと思います。
で、先に結論を言ってしまいますが、ぶっちゃけきゅうりで白メシ、めちゃくちゃもりもり食べられました!
きゅうりにつきまとう「清貧」の空気
突然ですがみなさん、ある日、家で夕飯のしたくをしてくれているお母さんからこんなLINEが来たらどう思いますか?
「ものすごくわくわくする!」という方はあまり多くないのではないでしょうか? むしろ「なにかあったのか心配になる。今日は早く帰ってあげよう」という方のほうが多いのではないでしょうか? 「無性に怒りがこみあげてくる」という方もいるかもしれません。そういう方は、日々積極的にカルシウムをとることを意識してみてください。
とにかく、きゅうりって、「ごはんをもりもり食べる」というイメージからはちょっと遠い存在ですよね。
いやもちろん、ごはんがすすむきゅうり料理だってたくさんありますよ。代表的なところだと、
とかね。でも、「焼肉!」とか「からあげ!」とかとはやっぱりテンションが違う。どうしても「清貧」という空気がつきまとう。どこからか「昨日はちょっと食べすぎちゃったから、今日はこのくらいにしとくか」なんてセリフが聞こえてくる。
って、全国のきゅうり農家さんすみません! きゅうり、大好きなんですよ僕。特にこの夏はハマりまくって、毎日のように食べてたくらいで。
ただ、きゅうりはやっぱり、ごはんのおかずのメインを張るというイメージからは遠い。どうしても「サブ」感、「サポート」感があることは否めない。そもそも、「火を通すもの」というイメージがあんまない。ただ、本当にそうなのだろうか? もしかして僕は、そういう固定観念にとらわれているだけにすぎないんじゃないだろうか?
そこで今回は、白メシがすすんですすんでしょうがないきゅうり料理は作れないのか、思いつくままに試していってみようと思います。
あ、こんなこと言うと最近は、「は〜? きゅうりに火を通す料理なんていくらでもあるんですけど〜! あなたが知らないだけですよね?」なんて由の、とてもありがたいアドバイスをSNSでいただく機会も増えました。が、まぁそうプンスカせず、いったんカルシウムをとって落ち着いてください。あくまで、「どっちかというとそういうイメージじゃない?」が前提の、僕の興味本位の実験ということで。
まずはシンプルに「生きゅうり丼」から
いきなり珍妙な料理を生み出してしまってすみません。まずはシンプルにきゅうりそのものの実力を知りたいと、海鮮丼をイメージしてどんぶりメシの上に盛りつけてみました。
少しでも味のバリエーションが出ないかと、輪切り、縦切り、それから、まぐろなんかの「たたき」をイメージし、細かく刻んだきゅうりにつなぎがわりのマヨネーズを混ぜた「きゅうりのたたき」の3種を用意して。
いざ、まずは薄く縦切りにしたきゅうりにわさびをちょんとのせ、シャクっと食べたらごはんをひと口。もぐもぐもぐ……ん?
ここで問題発生。食べているリアクションを記録しておこうと撮っておいた動画に、ものすごい顔の自分が映っていました。
これは、おかずになるならない以前の話! あまりにも味がシンプルで、かつ油分がまったくないきゅうり、わさびの辛味の逃げ場がなく、食べた瞬間に涙が出てくる強烈な辛さです!
こりゃあだめだだめだ! と、マヨネーズ様に頼るべく「たたき」をあわててかっこむと……
1品目の結論としては、「きゅうりのたたきわさびマヨあえ」は、たっぷり用意すれば、ぜんぜんどんぶりメシ一杯いけます。大葉はそこまで合わなかったのでいらないかも。
ただ、これはやっぱり、マヨネーズ様の力によるところが大きいかなぁ。
きゅうりを揚げてみよう
きゅうりの天ぷらってあんまり聞いたことないですよね? どんな味なんだろ。よし、次は「きゅうり天丼」を作ってみましょうか。
加えて、ナス風にカットしたもの、かき揚げ用に細切りにしたものも用意して、
が、皮をむいたきゅうり、表面がスルッスルすぎて、ぜんぜん衣をまとおうとしてくれませんね。まるで「頼むから服着て!」っていう、風呂あがりの子供状態。
が、いったん表面に凹凸ができたので、もう一度衣をつけて二度揚げしたらなんとかいい感じに。水分が多いので、かき揚げなんかは特に油はねが心配だったのですが、ぜんぜん問題もなく3種のきゅうり天が完成しました。
醤油、みりん、砂糖を3:2:1で合わせて軽く煮詰めたタレ(栗原はるみさんのレシピで簡単で超うまい)をかければ、
どうでしょう? 「てんや」から夏の新作として発表されたらさすがに正気を疑うけど、それはそれとして、衣とタレの威力で普通に美味しそうですよね。
うん、海老天風、この見た目で味がぜんぜん海老じゃないので一瞬脳がバグるけど、とろっとジューシーで、ほんのりときゅうり独特の青くささを感じるズッキーニの天ぷらって感じ。ナス風もこれまた味がきゅうりなんで混乱するけど、いや、いけますよぜんぜん。
いちばん良かったのがかき揚げ! かき揚げといえば絡みあった食材と衣のザクザク感が醍醐味ですが、そこにしっかりと残っているきゅうりのシャキシャキ感が加わり、ふたつの食感のハーモニーが楽しい! しかも、衣含有量が他より多いからですかね。青くささがいちばんおだやかで、純粋にきゅうりの美味しさが感じられます。これは今まで食べてきたかき揚げにはない美味しさだな〜。
結論、思わずがっついて一気に食べつくしてしまいました。きゅうり天、特にかき揚げは、白メシがもりもりすすむ!
うなぎ風はどうか?
お次はきゅうり自体に濃い味を染みこませてみましょう。みんな大好き「うな重」風なんてどうかな?
なんとも不思議な感覚。
いきなり目の前に出されたらなにがなんだかわからない料理だけど、とにかくうまそうではあります。
いや〜笑いましたね。うなたれと山椒と白米が合わさったときの威力はすごい。これ、想像してたのの10倍はうなぎ気分味わえるんですけど!
うなタレの旨味を宿しきった、とろりとしたきゅうりの身、まだ食感の残る皮、構成的にはうなぎと一緒ですもんね。もちろん、本物のうなぎにしかない圧倒的な旨味、ふわふわ感、それに及ぶはずはないんですが、それでも従来のポテンシャル以上の力は発揮できている。きゅうり自体によけいな主張が強すぎないのもいいんでしょう。
これは本当、無心でもくもく食べてたら、どんどんうな重食べてる気分になってきますよ。
うなぎを食べに行くと毎度、最後のこの部分で、「あ〜、もうすぐ終わっちゃうよ〜!」と寂しくなりますが、その気持ちすらもしっかりと追体験できます。
よく考えてみたら、これ、きゅうりなんですけどね。
結論、きゅうりのうな重風、白メシがすすむどころかおかわりしたいくらいの美味しさ! 正直、また作る。
「肉きゅう」と「きゅうりの炊き込みごはん」定食
今回の検証ラストは、きゅうりづくしのきゅうり定食を作ってみようと思います。
メインのおかずは「肉じゃが」ならぬ「肉きゅう」なんてどうでしょう? 名前も肉球っぽくてかわいいし。
というわけでまずは、味が染みこみやすいんではないかという狙いから縞目に皮をむき、ひと口大にカットしたきゅうりを炒めていきます。
ここに、豚こま、白滝を加えてさらに炒め、酒、醤油、みりん、砂糖などでお好みの味に調整。
そしたらきゅうりによく味が染みこむよう、いったん火を止めておきます。
その間、ごはんも用意しておきましょうね。今回は「きゅうりの炊き込みごはん」を作ってみようと思います。
炊飯器に、いつもどおりに水加減したもち麦ごはんと、白だし少々、そして、
で、
ここで火を止めて30分くらい経った肉きゅうの様子を見てみると、
この肉きゅうにもう一度火を通したら「きゅうり定食」の完成!
今回はせっかくなので、一部の大衆酒場では昔からの定番、きゅうり入りチューハイ「カッパサワー」と合わせて食べていきます。
あぁ、これはもう、間違いなく美味しいですね。
とろっとじゅんわりと豚の旨味を内包したきゅうりなんですが、どう加熱調理してもわずかなシャキシャキ感だけは残るのが特徴だな。もうひとつの特徴であるほんのりとした青みのアクセントと合わせて、きゅうりを加熱調理したならではの美味しさがちゃんとあります。この個性、なんで今まで尊重してあげてこなかったんだろうか。
あら、これは今まででいちばんきゅうり味の主張が薄いですね。たぶん、目隠しで出されたらきゅうりとは当てられない気がする。ただ、お米と一緒に噛んでいるとじゅわっとと優しい白だしの香りを広げてくれるきゅうりが、ちゃんといい仕事してます。
結論、きゅうり料理に失敗なし!
僕は今まで、なんできゅうりをもっと料理に使ってこなかったんでしょうか。きゅうり、たとえばにんじんやじゃがいもやナスなんかと同様、どんなふうに調理してもぜんぜんOKな野菜じゃないですか。
これからはもっと気軽に、野菜炒めにきゅうりを入れたりしていこ〜っと。
あ、けどそれはそれとして、やはり昔からある定番ってのは強いですね。きゅうり定食と合わせて飲んだカッパサワーの、うまいことうまいこと!