牛乳から色々作ってみよう!(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

食べ物とか食器とか色々作ります。

8月も残り2週間ほど。長い夏休みもそろそろ終わりを迎えようとしています。

しかし、この期に及んでまだ夏の自由研究のネタすら決まってないなんて困った子はいませんか?今日は身近な牛乳を使って色々作ってみます。

遠くに行かなくても1日あればなんとかなる!家にある物でなんとかしてみよう!

2009年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

まずは生命の神秘。牛乳を発酵させよう!

自由研究というと昆虫採集、植物観察など生き物を題材にするネタが定番でしょう。しかし、今更植物観察するにも朝顔は既に生長して花が咲いてしまっている。虫を捕まえに行くにしても今年は天候不順だし、近所でという訳にはなかなかいきません。

しかし、身近な所に何億もの生き物がいるのです。それを増やして成長観察すれば生き物観察日記が出来てしまいます。その生き物とはこれ。

P02_auto_x2.jpg
ラクトバチルス・ブルガリカスとかストレプトコッカス・サーモフィラスなんて奴らが生きてます。

味噌、酒、納豆、醤油。我々の周りには沢山の発酵食品が存在します。それはどれも微生物の力を借りて作られたもの。遠くのカブトムシより近くの微生物。ヨーグルトは発酵食品の中でもかなり短時間で作れます。半日ほどで生物観察日記を書くことが可能なので、締め切りが押し迫ったお子様にも安心して挑んで頂ける自由研究ネタでしょう。

まずは材料準備。用意するものは以下になります。

  • 牛乳1リットル(無調整の物が良い)
  • ヨーグルト50g~100g
  • 牛乳を入れる為のフタができる容器
  • お湯を入れるペットボトルなどの容器
  • 保温用の発泡スチロールなどの箱

続いて作り方。

P03_auto_x2.jpg
温度が高すぎると菌が死滅してしまうので注意。

まずは牛乳を40度前後に温めます。温度が高くなりすぎた際には40度ぐらいまで冷まして使います。

P04_auto_x2.jpg
適当にスプーン2、3杯で構いません。使用した牛乳の量に対して5から10 %入れます。

続いて暖めた牛乳を容器に移して種菌となるヨーグルトを投入します。容器は熱湯をかけて殺菌してから使いましょう。ヨーグルトをすくうスプーンや温度計なども一度熱湯消毒します。もちろん手もちゃんと洗う必要があります。そうしないと悪い菌が繁殖して大変なことになります。

P05_auto_x2.jpg
我が家では夏でも湯たんぽ大活躍。

暖めて種菌となるヨーグルトを入れた牛乳はフタをしてそのまま40度程度を保つように保温。保温時間は6時間から12時間です。

P06_auto_x2.jpg
写真は完成後1日冷蔵庫で熟成させたものです。

温度や時間は種菌としたヨーグルトの種類によって若干異なりますが、基本は大体同じ。これだけでヨーグルトは完成。実に簡単です。

観察日記にする際には1時間ごとに取り出して変化を確認してみましょう。時間が経つにつれてだんだんと固まってきます。味も徐々に変わってきます。どのように変わっていくか実際に少し舐めて確認してみましょう。

他にも、こんな点を調べてまとめてみよう!

  • ヨーグルトの中にはなんという菌が何個ぐらい生きていますか?
  • ヨーグルトは牛乳の何が固まって出来た物ですか
  • 固まっていない水の部分は何ですか?
  • 温度が高すぎるとどうなりますか?
  • 温度が低すぎるとどうなりますか?
  • 保温する時間が長すぎるとどうなりますか?
いったん広告です

牛乳以外の物もヨーグルトにして比較してみよう!

次に牛乳以外の物をヨーグルトにして牛乳のヨーグルトと比較してみましょう。発酵させるのはこちら。

P07_auto_x2.jpg
牛ではなく豆から作った乳。にがりを入れて固めれば豆腐です。

豆乳も40度前後に暖めて種菌となるヨーグルトを入れて保温すればヨーグルトのように固まります。

P08_auto_x2.jpg
牛乳と同様に無調整の物がいいです。
P09_auto_x2.jpg
豆乳の半分ぐらいの量の牛乳を入れます。

ただし、豆乳だけでは固まりづらいので牛乳を足して発酵させます。あとは牛乳の場合と全く同じ作り方。

P10_auto_x2.jpg
出来上がったものがこちら。見た感じは豆腐のようです。
P11_auto_x2.jpg
味は酸味のある豆腐です。

豆乳のヨーグルトが出来上がったら牛乳の物と比べてみましょう。味はどう違うでしょうか?硬さは?色は?香りは?気づいた点をまとめて表にすると分りやすくなります。

ちなみに、味のついた調整豆乳でも物によっては固まります。こんな豆乳をヨーグルトにしてみました。

P12_auto_x2.jpg
やはりバナナ味でしょう。

作り方は通常の豆乳と一緒。牛乳を半分ぐらい足して温めたらヨーグルトを入れて発酵させます。

P13_auto_x2.jpg
最近のフレーバー付き豆乳は豆乳臭さがほとんどありません。豆乳を飲んでいる気がしない。
P14_auto_x2.jpg
かなりゆるいですが、一応ヨーグルト状。

無調整の豆乳で作るヨーグルトは酸味のある豆腐味で若干食べづらいです。しかし、こちらはバナナ味。最近のフレーバー付き豆乳は豆乳臭さがほとんど無いようで豆腐的な味はあまり感じらません。なかなか美味しい。

このように色々な物をヨーグルトにしてみて、牛乳との違いを比べると内容が増えて楽しくなります。柔軟な発想で色々な物に挑んでみましょう。

続いては作り方を工夫してみます。

いったん広告です

色々な方法で保温してみよう!

牛乳からのヨーグルト作りでは既に説明したとおり、6時間から12時間40度近い温度で保温する必要があります。そのぐらいの温度で保温する方法にはどんなものが有るでしょうか?

暖めた物を保温機能のついた水筒に入れるなんて方法がまず考えられます。熱を発している家電製品の上に置くなんてのもいいでしょう。今の時期なら日が直接当たらないようにして冷房を使ってない部屋に置いてもいいかもしれません。色々な場所の温度を測ってみて最適な場所を探すのも研究のネタになります。

しかし、意外に身近な所に40度近い温度を常に保っているものがあります。誰でも必ず持っているものです。分りましたか?これです。

P15_auto_x2.jpg
人肌感覚でヨーグルトを作ります。

それは体温。およそ36度ぐらいを常に保っています。若干温度が低いので発酵時間は長めになるものの十分な温度です。これを使って保温を行いヨーグルトを作ってみましょう。

P16_auto_x2.jpg
腹の上で数億の生き物が活動しています。

暖めた牛乳を熱湯殺菌した瓶に入れてヨーグルトを投入。それにフタをしてビニールを被せ、紐をつけて首からつるします。直接瓶に触れている方が熱の伝わりはいいですが、サウナに入っているようなものなので汗がつかないための対策。更に風を通さない上着を着て保温します。

P17_auto_x2.jpg
こまめな給水と1時間に1度休憩。トイレに行くときは外してから。
そりゃもう暑いのなんのって・・・。

この状態で日向に座り続けます。とにかく暑い。暑いけど我慢。こまめな給水と1時間に1度の休憩を挟み8時間ほど続けます。上下で風を通さない服を着ていたけど。よく考えたら保温の為なら上着だけでよかった。

P18_auto_x2.jpg
体温ヨーグルト完成。人に食べさせるときは作り方をあまり説明しない方がいいかも。

温度が低いので出来上がりは若干ゆるいです。しかし、紛れもなくヨーグルト。自由研究でまとめる時には固まり具合や温度の変化などを1時間毎に記録するといいです。

この方法を実施する場合はくれぐれも体調管理に気をつけ、水分補給と休憩を必ず行ってください。

では、出来上がったヨーグルトを食べてみましょう。ヨーグルトを食べるスプーンは牛乳で作ります。次は牛乳からプラスチックを作ります。

いったん広告です

カゼインプラスチックといいます。

続いて牛乳からプラスチックのスプーンを作ってヨーグルトを食べてみます。材料と必要な物は以下になります。

  • 牛乳
  • レモン汁、または酢
  • 牛乳を温める鍋
  • ふきん
  • ボウル
  • 電子レンジ
  • フタ付きの耐熱食器
  • キッチンペーパー、またはろ紙など吸水できるもの。

牛乳から作り出すプラスチックはカゼインプラスチックというもので、牛乳に含まれるタンパク質から作られます。普通のプラスチックは土に埋めてもそのままですが、これは生分解性プラスチックと言って微生物により分解されて土に返ります。とってもエコなプラスチック。

工業的にはホルムアルデヒドを使って作られます。しかし、加熱でも同様の作用を与えることができるので、家に有る物で作ることができます。

では、早速作っていきましょう。

P19_photos_v2_x2.jpg
沸騰すると吹きこぼれてくるので注意。
P20_photos_v2_x2.jpg
酢でもいいですが、匂いがキツイ。

まず牛乳を沸騰するぐらいまで加熱します。加熱したら牛乳にレモン汁を徐々に加えます。するとモヤモヤとした固形物が浮いてきますのでレモン汁を入れるのを止めてそれを集めます。

P21_photos_v2_x2.jpg
ふきんで漉します。いわゆるカッテージチーズの出来上がり。
P22_photos_v2_x2.jpg
分離された液体は乳清(ホエー)と言われもの。カルシウムなど多く含み食べられますが、レモン汁や酢を加えているので香りが味がキツイです。

ふきんで漉して固形物を集めます。この固形物の多くがカゼインタンパク質。まずはこの状態で軽く絞って水気を切ります。

P23_photos_v2_x2.jpg
これがプラスチックになります。
P24_photos_v2_x2.jpg
水を替えて3、4回洗浄。

続いて集めたものを水で洗います。これで集めたカゼインタンパク質に混ざっている水溶性物質を洗い流します。洗ったらよく絞って脱水です。

P25_photos_v2_x2.jpg
紙粘土のように見えなくもない。

集めたカゼインタンパク質は成形後更に水を抜いていきます。オーブンシートなどを敷いたまな板で行うと裏返す時に便利です。

P26_photos_v2_x2.jpg
スプーンの形状に成形。スプーンというよりヘラぐらいの厚みと大きさ。
P27_photos_v2_x2.jpg
ここで出来るだけ脱水することが成功の秘訣。

脱水はキッチンペーパーなどを使って入念に行いましょう。この時しっかり押して十分な圧力をかけます。ここで脱水が足りないとうまく固まりません。

成形と脱水が済んだら最後の過熱工程です。

P28_photos_v2_x2.jpg
形は悪いがスプーンです。

 

加熱は電子レンジで行います。固めたものを耐熱食器に入れてフタをして1分づつ加熱。様子を観察しながら加熱します。かなり熱くなるのでやけどに注意してください。

P29_photos_v2_x2.jpg
加熱1分。
P30_photos_v2_x2.jpg
加熱2分。まだフカフカしています。
P31_photos_v2_x2.jpg
加熱3分。ここで一度裏返す。
P32_photos_v2_x2.jpg
加熱4分。部分的に硬くなってきました。重合反応というものが起きているそうです。
P33_photos_v2_x2.jpg
加熱5分。ほぼ全体的に固まっています。残念ながら私は機械系の学部出身で重合が何なのか細かく聞かれても困ります。
P34_photos_v2_x2.jpg
加熱6分。全体が硬く固まりました。完成です。ちなみに、卒業論文のテーマは振動搬送に関して。化学は一切関係無し。

全体が硬くなり、フタに水滴が付かなくなってきたら完成です。見た目よりも軽く、ちょっとパンのような香りがします。しかし、手触りはまぎれもなくプラスチック。

では出来たての牛乳スプーン(?)でヨーグルトを食べてみましょう。

P35_photos_v2_x2.jpg
体温ヨーグルトと牛乳スプーン。変な匂いはしませんよ。
P36_photos_v2_x2.jpg
ちゃんとすくえます。

スプーンは全く問題なく利用できます。折れたり、こぼれたりすることなく、強度は十分。

P37_photos_v2_x2.jpg
味も全く問題なし。旨い!

体温ヨーグルトも問題なく出来上がっていました。若干スプーンが大きく厚みがあって食べづらいけれども、そのあたりは手作りということで大目に見ます。いずれにしろ、食べる物も食べる道具も牛乳から作ることができました。

まだ間に合うぞ!

牛乳からプラスチックのスプーンを作る製作時間はおよそ1時間でした。ヨーグルトと合わせても半日あれば実施可能です。残り2週間あれば十分実施してまとめる事ができます。最後の追い込みは牛乳でどうでしょう?

ちなみに、牛乳から作るプラスチックは成形する形を変えれば色々なものが作れます。また着色も出来るので、ちょっとした小物を作ってみるなんてのでもいいでしょう。

実は、スプーン以外に皿を作ることにも挑戦したのですが、過熱の際に縮むので上手く皿の形にならず、ただの丸い板になってしまいました。複雑な形は向いてないようです。

P38_photos_v2_x2.jpg
この中にニセモノのソフトサラダがあります。どれでしょう? 皿のつもりが食品サンプルになってしまいました。

 

Source

タイトルとURLをコピーしました