ヤフー、ゼンリンら地図サービス7社が大集結した「地図広告ネットワーク」が始動、Mapbox Japanが立ち上げ “群”戦略で3000万ユーザーへリーチ、地図広告の収益性を向上

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(上左から)マップボックス・ジャパン合同会社の山崎友敬氏、インクリメントP株式会社の三浦勝氏、株式会社駅探の奥津浩一氏、株式会社マップルの大日方祐樹氏、マップボックス・ジャパン合同会社の高田徹氏、(下左から)株式会社ナビタイムジャパンの毛塚大輔氏、ヤフー株式会社の出口謙一氏、株式会社ゼンリンの堀江重実氏、ジョルダン株式会社の佐藤俊和氏

 マップボックス・ジャパン合同会社(Mapbox Japan)は8月24日、地図サービスを手掛ける国内企業7社とともに、広告配信で連携する「マップアドネットワーク」を立ち上げたと発表した。同ネットワークへ配信する「Mapbox広告プラットフォーム」を独自開発するとともに、地図のネイティブ広告を提供する「Mapbox広告」のベータサービスを提供開始した。参加企業はヤフー株式会社、株式会社ゼンリン、ジョルダン株式会社、株式会社ナビタイムジャパン、株式会社駅探、インクリメントP株式会社、株式会社マップル。

「マップアドネットワーク」の参加企業

 デジタル地図サービスはユーザーに無料で提供されることが多く、単体の地図サービスでは十分な広告収益を上げる規模には足りず、効果的なビジネスモデルが存在していないことが課題だった。

 マップアドネットワークでは、広告主は、同ネットワークで共通化された広告フォーマットを用意することにより、同ネットワークの参加企業が提供する複数の地図サービス上に同時に広告を配信することが可能となり、効率よく、多くのユーザーへ広告を届けることが可能となる。

 これにより、単体の地図サービスで広告事業を展開する場合と比べ、掲載される広告の量が増加するとともに、各ユーザーに最適な広告を届けられるようになり、地図サービスにおいて広告収益の増加が期待される。

「マップアドネットワーク」を利用することで多くのユーザーへリーチ可能

「地図の収益化に関する課題」を日本から解決する

 マップアドネットワークの設立にともなってMapbox Japanが7月よりベータサービスとして提供開始したMapbox広告では、広告主は、消費者が普段利用する地図アプリやサービスに、自社ブランドのアイコンやバナー、関連情報を掲載し、認知の向上と、電話やサイト閲覧、店舗誘導などの行動喚起を促進できる。

「Mapbox広告」のビジネススキーム

「Mapbox広告」

 Mapbox JapanのCEOを務める高田徹氏は8月24日に開催されたオンライン記者発表会において、「地図の収益化に関する課題は日本だけではなく、グローバルな課題だ。Mapbox JapanはMapbox社とソフトバンクの合弁会社として設立したが、地図業界の課題を日本から解決し、それを世界に展開するのが使命だと思っており、今日、その第一歩を踏み出した」と語った。

3D都市データによる「バーチャル空間」での広告展開や「AR広告」なども視野に

 Mapbox Japanの山崎友敬氏(広告ソリューション事業管掌バイス・プレジデント)は、Mapbox広告が目指すものとして、以下の4点を挙げた。

1. 地図デザインを邪魔しない

地図のビジュアライゼーションの進化により、2次元の静的な地図ではなく、3次元の表現やストーリーテリング/スクロールテリングなどの技術も使われるようになっており、地図がコンテンツとして利用されるようになってきている中、地図デザインを最大限に生かして、邪魔をしないかたちで広告を表現するのが重要となる。

2. 利用シーンと連動した広告表示

地図で花火大会を検索した場合にビールの広告を下部に表示させたり、キャンプ場でルート検索を行った場合にキャンプ道具の広告を出したり、海水浴場を目的地とした場合に日焼け止めの広告を出したりと、利用シーンに連動して広告を表示させる。

利用シーンと連動した広告表示

3. バーチャル空間の活用

国土交通省が主導する「PLATEAU」など、各都市の3Dの建物データがオープンデータとして利用可能になってきており、バーチャル空間において屋外広告のようなかたちで表現したり、建物全体を使ったラッピング広告を提供したりと、3Dのバーチャル空間を活用して広告展開を検討する。

4. 新デバイスが登場した場合でもいち早く収益化を実現

スマートグラスや自動車用のヘッドアップディスプレイなど新しいデバイスが登場したときに、例えばARで街を案内してくれる「ARコンシェルジュ」を表示させ、道の横にARで広告を表示させるなど、新デバイスに対応した新しい広告スタイルを提供する。

 Mapbox広告は現在、iOS版の「Yahoo! MAP」アプリにおいて、地図上にスポンサーのピンを表示し、タップすると基本情報やサイト誘導、ルート検索などのアクション動線が設置された広告カードが表示される「プロモーテッドピン広告」のテストを行っており、大手レストランチェーンと電動スクーターサービス「LUUP」の2社がキャンペーンを展開している。

 Mapbox広告のために開発された「Ads SDK」を使うことにより、メディアは最小導入工数で広告事業を開始することが可能で、広告効果測定などもSDKを実装するだけで導入が完了する。

“群”戦略で規模を実現し、3000万ユーザーへリーチ。数千億円市場を構築

 現在の状況を見ると、巨大な地図サービス事業者がいる一方で、地図サービス提供事業者は差別化戦略として特化型地図を作ることが多くなってきており、ユーザーに対して非常に魅力あるサービスではあるものの、結果としてMAU(月間アクティブユーザー数)を増やしにくく、単独では規模が不足し、魅力的な広告にならないことが課題となっている。マップアドネットワークを利用することで、“群”での広告配信が可能となり、より多くのユーザーへリーチが可能となる。

 「近いうちに3000万ユーザーへのリーチを目指しており、マップアドネットワークのパートナーシップも拡大していき、より大きなネットワークを築いていきたい。地図のネイティブ広告の技術と“群”戦略による規模の実現により、新しい数千億円の市場を構築していきたい。」(山崎氏)

 記者発表会では、マップアドネットワークに参加する7社からも担当者が登壇した(一部ビデオメッセージ)。

 「マップ上に展開されるローカル情報は、まだまだ可能性を秘めている。さらなるチャレンジを続けてサービスを磨いていきたい。」(ヤフーの出口謙一氏)

 「Mapbox広告は今までになかったサービスで、多くのクライアント様の情報と地図情報を組み合わせることにより、ユーザー様にとって価値のある情報提供ができるソリューションとなることを期待している。弊社の地図サービスとのビジネス連携についても検討したい。」(ゼンリンの藤澤秀幸氏)

 「マップアドネットワークへの参加により、ステーション周辺の広告主様とユーザー様とのマッチングを広げられるように進めていきたい。」(ナビタイムジャパンの毛塚大輔氏)

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