バルクオムが、いま「ディフェンス力」を強化する理由:ecforceで実現する「D2Cの春」への備え

DIGIDAY

市場が競争激化の一途を辿るいま、D2C企業がすべきことは何か。

いまや、国内でもすっかり浸透したD2C。その勢いは、コロナ禍によるeコマース需要の増加で一層盛り上がりを見せている。しかし一方で、新規プレイヤーが市場に参入し競争は激化。さらに、D2Cブランドにとって戦略の要となるSNS広告のレギュレーションやトレンドも、複雑・高度化しているという。

「D2C企業が獲得できるモメンタムは、いまやほとんど残されていないとすら思う」。こう語るのは、2013年の創業以来、サブスクリプションモデルをベースに、メンズスキンケアブランドを展開してきたバルクオム(BULK HOMME)のCEO 野口卓也氏だ。ただ、同氏は必ずしも状況を悲観しているわけではない。「『D2Cの春』はこれから訪れる。今後のブランドビジネスは、D2C的なコミュニケーションや組織体制が必要不可欠になるだろう」。

そんなバルクオムの躍進を初期から支えてきたのが、SUPER STUDIO(スーパー・スタジオ)だ。同社が提供する、D2C特化型の eコマース基幹システム、ecforce(イーシー・フォース)は、受注データや広告管理分析などのeコマースに必要な機能を揃えている。なお、同社でCRO(Chief Revenue/Relationship/Resource Officer)を務める真野 勉氏によると、ecforceの導入企業は現在400社以上にのぼるという。

野口氏は、2021年7月16日に開催された、DIGIDAY[日本版]が主催するイベント、D2C STRATEGIES FORUMの「D2Cならではの強みをいかに拡大していくべきか」と題されたセッションに登壇。真野氏によるモデレートのもと、D2C市場の変化とバルクオムの戦略について語った。

D2C企業をめぐる環境の変化

イベント冒頭、野口氏は「我々が事業を開始して8年ほどになるが、ここ数年でD2Cをめぐる環境は大きく変化した」と口火を切る。そのひとつが、プレイヤーの増加による競争激化だ。ecforceの利用企業数の推移からも、それは見て取れる。同サービスがスタートしてからわずか約4年間で、その利用企業数は400を超えるまで成長。バルクオムも、はやくからecforceを導入していた。

それだけではない。D2Cブランドにとって、SNS広告はビジネスを展開するうえで重要な存在だが、「昨今、レギュレーションやトレンドが複雑かつ高度化している」と野口氏。フォーマットに関しても、テキストから静止画、さらには動画が推奨されるようになっており、D2Cブランドたちは日々のキャッチアップに追われている状況だ。

「競合の増加と手段の複雑化・高度化によって、差別化と顧客の獲得が難しくなってきている。もちろん例外はあるが、いまはD2Cブランドが獲得できるモメンタムは、ほとんど残されていないとすら思う」。

「競合の増加と手段の複雑化・高度化で、差別化と顧客獲得が難しくなっている」と野口氏

バルクオムのアプローチも変化

当然、バルクオムの戦略もここ数年で急速に変化した。たとえば、当初デジタルに重心を置いていた同社は、いまやテレビCMやリテールでの商品展開も積極的に取り入れている。その狙いは明快だ。デジタルメディアでバルクオムの認知度や好感度を高めることができても、それだけではリーチできない顧客層がいる。ビジネスを拡大するにあたっては、必要な選択肢だったのだという。

真野氏の「ほかのD2Cブランドがやらない、リアルな取組みを進めるという判断は難しかったのでは?」という問いかけに対しても、野口氏は以下のように答える。「バルクオムは、ピュアに『メンズスキンケアブランド』というアイデンティティを持っているため、余計な不安に囚われることなく挑戦できた」。

D2Cブランドが注目されはじめた当初、そのユニークポイントのひとつとして注目されていたのは、デジタルチャネルに軸足を置いている点であった。しかしここ数年、国外のD2Cブランドを見ても、テレビCMやリテール展開を実施するケースが多く見られている。こうした点を踏まえると、バルクオムのチャレンジも自然な流れだったといえる。

現在は「ディフェンス力」を特に強化中

では、そんなバルクオムが、いま特にフォーカスしているポイントは何か。野口氏が強調するのは「ディフェンス力」だ。具体的には、主に体制構築やインナーブランディングといった組織面と、顧客ロイヤリティの強化、そして既存プロダクトの磨き込みを図っているという。実際バルクオムは2020年、顧客ロイヤリティを強化すべく、マイレージプログラムを新たに導入。このプログラムに参加した顧客は、商品を購入する度に貯まる「マイル」を限定商品と交換できる。

このマイレージプログラムの実現には、ecforceも一役買った。「機能開発時には多岐にわたって相談させていただき、SUPER STUDIOさんには非常に感謝している」と野口氏。「おかげさまでものすごい反響を集めており、同プログラムを頻繁に利用する顧客ほど、商品の購入単価、頻度、そして継続率が高くなる傾向が見られている。今後も一層ご協力いただくつもりだ」。

ただ野口氏は、「ディフェンス力」を優先事項としつつも、攻めの姿勢を忘れたわけではない。たとえば同社は、メンズビューティ領域におけるさらなるプレゼンス向上のため、8月10日にメイクアップラインをローンチしている。「我々は現在、ecforce上に累積数10万人の顧客基盤を抱えている。そこに蓄積されたデータを駆使して、最適なマーケティングコミュニケーションを実現していきたい」。

モデレーターを務めた真野氏

来る「D2Cの春」を見据えて

イベント冒頭、「D2Cブランドが獲得できるモメンタムは、ほとんど残されていないとすら思う」と述べた野口氏だが、この発言は決して後ろ向きな姿勢から来るものではない。

「どのカテゴリーでも、まだ『D2Cの春』は来ていないと考えている。いまのうちにディフェンス力を高めたブランドが、次に来るモメンタムを掴むことができる」と野口氏。「一部のベンチャーキャピタルからは、『D2Cブランドのスケーラビリティはそこまでない』という声も聞かれるが、私の見解は異なる」と続ける。

「これからのブランドビジネスは、D2C的なコミュニケーションや組織体制が必要不可欠になるだろう」。

これに対し真野氏も「D2Cは、今後もまだまだ伸びる可能性があると思う」と、野口氏の見解に賛同しつつ以下のように締めくくる。「これからも、バルクオムさんをはじめとしたさまざまなD2C企業に向けて、今後も支援を続けていきたい」。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 堤賢悟

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