メタバース プロデューサーに聞いた、来年に向けてのメタバースファッションウィークの課題

DIGIDAY

メタバースファッションウィークの後、Glossyではディセントラランドのメタバースプロデューサー、ジョヴァンナ・カシミーロ氏に、何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか、そしてブランドはメタバースをどのように有効活用したかについて話を聞いた。

アクセス面やクロスチャネル戦略、ゲーミフィケーションが課題

ファッションは開放的かつ創造的であり、大いに感覚的な分野であるため、もはや服を手に取って感じることができなくなったとき何が起こるのか。これは、暗号ソーシャルプラットフォームのディセントラランドがメタバースファッションウィークで探求した問いであり、メタバースにおけるファッションウィーク体験で最初の探求のひとつでもあった。

初開催となった同イベントには、エトロ(Etro)、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)、イミテーション・オブ・クライスト(Imitation of Christ)、オウロボロス(Auroboros)といった数々のブランドが集結した。2020年に始まった別のイベントであるクリプトファッションウィーク(Crypto Fashion Week)も同時期に第2回目を開催しており、デザインのクリエイティビティと高解像度の体験へとさらに注力したものとなった。

ディセントラランドのメタバースファッションウィークは解像度を下げ、ゲストがショーを体験したり、ディセントラランドの暗号通貨MANAを使ってデジタルウェアラブルを購入したりするためのソーシャルコンポーネントを加えている。このアイデアは、オフホワイト(Off-White)などのブランドが取り入れ始めたメタバースという新たな収益チャネルを通じて、ブランドが提供するアイテムの拡大を支援するというものだ。

このイベントは多くのブランドにメタバースのプラットフォームを実際に提供したが、定評のあるファッションイベントに対抗するという意味では、まだまだ先は長いということも証明された。

ユーザーアクセスに関する複雑さ、デジタル空間とフィジカルスペースの間のクロスチャネル戦略の欠如、そして不十分なゲーミフィケーションが、最大の失望要因となった。ディセントラランドのメタバースプロデューサーであるジョヴァンナ・カシミーロ氏は、あらゆるテクノロジーがそうであるように、初めての試みは繰り返すうちに改善されていくということを強く指摘した。来年はより洗練され、さらにファッションを中心としたイベントにすると彼女は約束している。

新たなゲーム消費者を取り込む点では成功

数字で見ると、ディセントラランドはメタバースファッションウィークが開催された5日間で10万8000人のユニークな参加者数を記録した。5日間で16万6000点の無料ウェアラブルが鋳造され、さまざまなデザイナーやブランドによって7000点が販売された。期間中には合計で約7万7000ドル(約95億2145万円)相当のウェアラブルが販売されている。

今回のイベントは初開催となるため、こうした数字はトミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)のように新たなゲーム消費者を取り込もうとしているブランドにとっては期待できるものだ。「新規ユーザーの30%を獲得した。従来のファッション業界の多くの人々が初めてメタバースに来る機会となった点を考慮すれば、これは大きな数字だ」とカシミーロ氏は述べた。 「私たちは主に従来のファッションとラグジュアリー業界に与える影響を考慮している。そこに足跡を残すことができた」。

ブランドに好評だったキャットウォーク

カシミーロ氏によると、このイベントはブランドに好評だったという。多くのブランドにとって、何週間も、あるいは何カ月もかけて開発した店舗やキャットウォークがバーチャル空間で実現するのを目にするのは初めてのことだった。「いくつかのブランドからは将来的にはアバターをもっとカスタマイズしてほしいという批判(とリクエスト)もあった。それについては間違いなくもっと時間をかけて試していく」と彼女は話す。「だが、サイバースペースにおいて私たちはこれらのブランドのよいリテンションを得られるだろうと思っている」。

ドルチェ&ガッバーナは猫のようなアバターをキャットウォークで公開することができ、ほかのブランドも幅広い服の選択肢を提供したが、これは今後関係するすべてのブランドにとって優先事項となるだろう。「キャットウォークはチームにとって大きな挑戦のひとつだった。なぜならブランドの期待とシンクロしたアニメーションの要素やキャラクターが、ほぼ連続して登場するからだ。私たちのチームはキャットウォークに新たな基準をもたらした」とカシミーロ氏は述べた。

今後はゲーム性を高め、プレイヤーに報酬を与えたい

イベントが開催される週になるまで全日程が公開されなかったため、次回はよりスムースなオペレーションが必要だろう。カシミーロ氏によると、ディセントラランドは今年の7月下旬から8月上旬にかけて参加ブランドの募集を行う予定だ。その時点からチームはプロデュースを開始し、よりカスタマイズされた体験をブランドに提供しつつ、多くのセレブリティやプレスの独占取材など、さらなるパブリシティの促進を目指す予定だ。

また、カシミーロ氏は、ブランドがこのプラットフォーム向けに限定コレクションを制作したことがコミュニティから好評を博した点を指摘し、今後はさらなるゲーミフィケーション体験へと結びつけていくつもりだとしている。すべてのブランドがメタバース向けの特定のコレクションを制作しているわけではなく、たとえばドルチェ&ガッバーナもそれは行っていない。

「いくつかの企業やラグジュアリーブランドは、依然としてすでにコレクションの中にあるものから抽出してみたいと考えている。さらにショップにはクエストも、探索的な要素もなかった。どちらかといえば、その空間における展示ディスプレイのようだった。もっとゲーム性を高めること。その空間にいるプレイヤーに報酬を与えること。それこそが明らかに私たちがやるべきことのひとつだ」。

今後はアクセスを改善し、VRやARの導入を目指す

今年の主要な課題のひとつに、多くのプレス関係者ゲストが指摘したようにアクセスの問題がある。同時に多数のゲストがスペースに入ると、黒い画面が表示されたり、ゲーム内の別のディストリクトに移動させられたりすることがあった。今後このプラットフォームでは、この問題を軽減するためにいくつかのソリューションを提供する予定だ。たとえば、多くの人ができるだけ高いグラフィックスで体験できるようにするために、MacBook用とWindows用のデスクトップクライアントを用意するつもりでいる。

さらに重要なのは、このプラットフォームはVRウェアラブルやARからもアクセスできるようになることだ。「今年の年末か来年の初めには、ヘッドセット用のVR機能を設置する可能性が非常に高く、それによって人々は違った形で体験を目にすることができるだろう」とカシミーロ氏は述べた。「来年はフィジカルとデジタルの接点をさらに増やしたい。ビデオプロジェクションやリアルタイムビデオマッピングのような拡張現実(AR)は、それを簡単に実現することができる」。

現時点から来年3月に開催される次のメタバースファッションウィークまで、ディセントラランドはブランドが参加できるイベントを複数主催する予定である。そうしたイベントは、プライド月間、アートウィーク、そして昨年パリス・ヒルトン氏が参加した音楽に特化したメタバースフェスティバルなどを中心に展開する。カシミーロ氏は、パリのファッションウィークとフィジタルイベントのコラボレーションを行うことも計画している。「ファッションコミュニティとは、引き続きさまざまな角度で関わっていくつもりだ。これらのイベントでコレクションを紹介するために、さまざまなコミュニティやファッション業界のキーパーソンを巻き込んでいきたいと思っている」。

[原文:‘Gamify more, reward players’: Metaverse Fashion Week’s producer on the lessons learned]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)

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