西日本の豪雨 菅首相は会見せよ – 安倍宏行

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安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・西日本の豪雨が猛威を振るっている。来週以降東北方面も大雨に。

・菅首相はこの一大事に、なぜ「国民の命を全力で守る」という覚悟を発出しないのか?

・新型コロナ感染爆発も続く中、国民に寄り添う政治を。

西日本の豪雨が猛威を振るっている。11日から断続的に降っている雨は来週も続くとみられており、既に起きている土砂災害や河川の氾濫・浸水被害の範囲が拡大し、被害は3年前、2018年7月の「西日本豪雨」の時の雨量を超えた地域も出始めている。

佐賀県・長崎県・福岡県・広島県に「大雨特別警報」がすでに出ているほか、警戒レベル5の「緊急安全確保」も多くの県で発出されている。

今後も低気圧が15日夜にかけて西日本と東日本を通過、前線が活発化して線状降水帯が発生しやすくなり、西日本からさらに東北にかけて、激しい大雨が続くと予想されている。事態は来週にかけて全国で最悪の事態が起きる可能性が高いのだ。

日本は今、新型コロナの感染爆発が起きている真っ最中だ。そうした中で起きたこの自然大災害の対策に、政府は全力を挙げて取組むべきだろう。なぜこの一大事に、菅首相は緊急記者会見で国民に呼びかけないのか。

今、首相官邸のHPを見ても、「新型コロナウイルス感染症対策情報」がトップで、大雨については何も触れていない。

菅首相は「安心・安全」と二言目には言うが、今がまさに国民の安全確保に動く時だろう。それと同時に「安心」は、国のリーダーが国民に呼びかけることで初めて生まれるものだ。

「皆さんの命を全力で守る」という覚悟を今、発出しないでいつ発出するのか?

「菅話法」とやらが、ネット上で大喜利状態になっているのを笑ってみていられるうちはいい。しかし、今、何百万人もの人が命の危険にさらされているのだ。

避難したら、そこでコロナのクラスターが起きるかもしれない。大災害時には医療チームも全ての避難所に張り付くことなど到底かなわないだろう。既に病床は逼迫状態だ。仮に大雨から逃れることが出来ても次はコロナとの恐怖に直面する。

今こそ官邸に「緊張感をもって」もらいたいのは、私だけではないだろう。菅首相には国民に寄り添ってもらいたい。心からそう願う。

10日後には、パラリンピックが開催予定だが、本当に開催出来るのか不安が拭えない。

今回のオリンピックは「復興五輪」だったはずだ。しかし、そうした発信は海外から来た選手やオリンピック関係者には届かなかった。開会式や閉会式にもそうしたメッセージ性は全く感じられなかった。

メインプレスセンター(東京都江東区)に東日本大震災の被災地の現状を紹介する「復興ブース」があったなんて、誰が知っていたのだろうか?メダリストに贈られる「ビクトリーブーケ」が被災地の花で作られていたことを知っていた人はどれだけいただろうか?

極めつけは、聖火や大会車両の燃料、そして選手村の照明や空調に使われている燃料電池に、福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R))」で作られた水素が使われていることだろう。

この世界最大級の水素工場は、まさしく復興のシンボルとして原発事故で大きな被害を受けた福島県に作られたものであり、そこで製造されたクリーンエネルギーである水素がオリンピックのインフラに活用されたことは大いに海外にアピールすべきものだったはずだ。

しかし、それを報じた海外メディアはおろか、日本のメディアもほとんどなかったのではないか。福島の人々はさぞかし残念だっただろう。菅首相が、そして小池都知事が、もしくは橋本聖子2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長が、丸川珠代五輪相が、一言でも触れてくれていたら、随分違ったのではないか?散歩好きのバッハ会長を燃料電池車に乗せ、オリンピック村の設備を見学させてもよかったではないか。

私が問題だといいたいのは、口先だけで国民に寄り添わない、今の政治の姿勢である。空虚な言葉の羅列だけで、国民の信頼が得られるわけがない。緊急事態宣言下の自粛が守られないのは、そういうことなのだ。それを言うことを聞かない国民が悪い、と一体、誰が責められようか。

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▲動画 「東京2020大会後のまちづくり(関連事業編)」

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