NTTは8月6日、2021年度第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比4.6%増の2兆8926億円、営業利益は前年同期比2.3%減の4863億円と、増収減益の決算となった。
同日に実施された決算説明会に登壇した同社代表取締役社長の澤田純氏によると、主力子会社のNTTドコモ(以下ドコモ)が新料金プランなどによる料金引き下げの影響を大きく受けた一方で、端末販売が回復したほかスマートライフ領域の売上が拡大し増収につながったとのこと。
決算説明会に登壇するNTT代表取締役社長の澤田純氏(NTT提供)
一方で、ドコモが5Gの基地局整備積極化に加え、スマートライフ領域の拡大に向けた施策を強化したこと、そしてNTTコミュニケーションズに前年度一時的な特需があった反動などがあり、減益になったと説明する。
なお、NTTは今四半期より、他の子会社と同様メディア向けの決算説明会ではドコモの決算に関する説明を実施していない。ただし、ドコモの2021年度第1四半期決算についてはドコモ自身が公表しており、その内容を見ると営業収益は前年同期比5.6%増の1兆1596億円、営業利益は前年同期比12.9%減の2444億円と、やはり増収減益の決算となっているようだ。
ドコモの2021年度第1四半期決算も公表。端末販売の回復などで増収となった一方、スマートライフ領域への投資などで減益の決算となった
そのドコモについて注目されるのは「ahamo(アハモ)」「5Gギガホ プレミア」など新料金プランに関する動向だが、澤田氏によると新料金プランの投入によって「純増数やMNPも期待通りの改善が進められており、特に若い世代の契約が好調」だという。特にahamoについては「直近で180万契約を超えてきているし、さらに伸びていくことが見込まれる」と、好調ぶりをアピールした。
携帯大手3社のオンライン専用プランではahamoの契約数が最も多いこととなるが(KDDIの「povo」は約100万契約、ソフトバンクの「LINEMO」は50万契約未満と発表)、その要因について澤田氏は「今までドコモは安い料金のセカンドブランドに該当する体系を持っていないかったというのもあろうが、やはり注目を集めたからではないか」と、タイミングとニーズが合致した結果と見ている。
新料金プランの契約は好調に伸びており、特にahamoは180万契約を突破するなど大手3社のオンライン専用プランの中では最も多くのユーザーを獲得している
ahamo効果で今四半期は純増数がプラスになったほか、「ほぼ(転入・転出が)変わらない状況で推移している」と話しており、顧客流出が止まったことが経営上プラスの影響をもたらしているという。
一方、新料金プランによる料金引き下げの影響により、ドコモでは年間2500億円の減収を見込んでいるとのこと。ただ、2500億円のうち「1900億円は違うもので埋めている」と澤田氏は説明、最終的な減収は年間で600億円程度になるとの見通しを示した。
新料金プランによる料金引き下げの影響は年間で2500億円におよぶ。ただしスマートライフ領域など他事業の売上増などもあり、実際の影響は600億円程度になるという
今後、ドコモには料金引き下げの影響を抑えるため売上を増やしていくことが求められるが、澤田氏はその策として「スマートライフ(領域)と海外」だと話している。前者に関してはアプリやサービスだけでなく、VRやARなどの新しい機能を持ったデバイスの活用を広げることに期待するとしており、海外事業に関しては「どの分野でどう広げるかを良く練って拡張して欲しい」と、澤田氏はドコモ自身による取り組みへの期待を述べた。
また減少が続く通信料収入を増やす施策については、「願望で言うと明日からでも変わって欲しいが、施策をどう加えて、というのにはかなり時間がかかる」と澤田氏は説明。中期経営戦略の見直しによって具体策を検討を進めたいとしているが、総務省の「公正競争確保の在り方に関する検討会議」の報告書が出るまでその方策を打ち出せない事情もあり、「今の時点で年末に、年度内(に回復)という思いはない」と回答するにとどまった。
一方で、他社がオンライン専用プランにより低価格のプランを導入するなどの動きも見られ、オンライン専用プランを巡る競争が今後一層激しくなることが予想される。今後のahamoの施策について澤田氏は「不断に努力しないといけない」と、今後の市場動向を見ながら、内容や付加価値を変える議論をしていくべきだと答えたほか、まだ具体策が打ち出されていない、小容量・低価格を求める顧客に向けたサービスも「どこかの時期で揃えていかないといけないと思う」と話した。
5G契約数は535万、東京五輪無観客の影響は
もう1つの注目要素である5Gの動向に関しては、5G専用に割り当てられた新周波数帯で整備した基地局が累計で1万を突破し、「他社と比べ2〜4倍の進捗で、業界の中でもかなり積極的に広げている」と澤田氏は説明。5Gの契約者数も535万に達するなど、好調な伸びを示しているという。
足元では半導体不足の影響が懸念されている状況だが、5G基地局などの装置類に関しては、工事に遅れが出ないよう在庫していることや、マルチベンダー体制を取っていることから複数の製品を組み合わせて使用することで、進捗に影響が出ない体制を整えていると澤田氏は説明。しかし、端末については「一部に影響しており、要望が受け付けられない状況にある製品もある」と話し、影響が徐々に出つつあるようだ。
そうしたことから澤田氏は、「中長期的にこういう影響を受けないようにするため、光半導体という新しい技術では自らコントローラブルなバリューチェーンにしたい」とも回答。同社が進めるIOWN構想の実現に向け、引き続き意欲を示している。
なお、NTTは東京五輪のスポンサーとなっており、競技会場でさまざまな新技術を活用した新しいスポーツ観戦体験などをアピールする予定だったが、コロナ禍の影響で多くの会場で無観客開催となり、一般客へのアピールができない状況となっている。この点について澤田氏は「確かに無観客なので技術を広めるには残念」とする一方で、安心・安全のため無観客開催となったことは評価しているとのこと。
NTTグループは東京五輪のいくつかの競技で、5Gなどの新技術を活用した観戦体験を提供していたが、大半の会場が無観客開催となりアピールの場を失ってしまった
また、新技術を活用した観戦体験についても、メディアに多く取り上げられたことで一定の効果があったとしているほか、東京五輪後のイベントでそうした技術の活用に向けた引き合いがあることも明らかにしており、今後もさまざまなパートナーと先進技術を活用した取り組みを進めていきたいとした。