首都圏を中心にしたインド変異株(デルタ株)による新型コロナ感染者激増は止まるのか――いち早くその猛威に晒された欧州諸国の経験から、ワクチン完全接種率が5割前後に達しないと歯止めが掛からないようです。国内では8月末まで好転は難しいと見られます。1回目の部分接種率7割で「集団免疫」が期待されましたが、感染力が従来の倍以上あるデルタ株には完全接種でないと立ち向かえません。札幌医大フロンティア医学研サイトで第652回「変異株の猛威、ワクチン先行国も反転上昇」の続編になる「ワクチン完全接種率と人口100万人あたり1週間感染者数」グラフを、欧州と日本について作成しました。
感染者が増えているのに社会的制約を大幅に減らす賭けに出た英国が感染減少に転じて「集団免疫」に至ったのではないかと注目されています。完全接種率5割を超えたオランダ、スペイン、ポルトガルも英国同様に感染を減らしています。フランスとイタリア、ドイツも横ばい傾向になりました。日本の場合、完全接種率はまだ30.5%で、欧州諸国がデルタ株まん延で苦しんだ上り坂の入り口にいます。3割、4割台では感染が増える一方でした。例外的にチェコは4割で感染減少に転じました。
日本の完全接種率5割はいつになるか推測しましょう。現在、週に4%を超える勢いで接種が進んでいます。さらに、これまでの職域接種で5%が上積みされる見通しです。50%になるのは意外に早く8月末なのです。マスメディアは65歳以上の接種完了ばかり気にして、完全接種の動向を見ていません。
まだまだ増える感染者をどうするか、国内では対応する準備が出来ていません。2日付のウオールストリートジャーナル《英のデルタ株流行、ピーク過ぎたか》は英国の医療状況をこう伝えています。
《英国の新規感染者数の7日間平均は30日の時点で2万8271人となり、約1週間前の4万8000人から40%以上減った》《英国の新型コロナの入院患者数は現在約6000人で、1月の感染ピーク時に記録した4万人の数分の一にとどまる》
東京では4日現在、直近7日間平均の新規感染者が3478人なのに、入院患者が3399人もいます。膨大な感染者発生を経験した英国では7日間平均新規感染者の2割くらいの入院しかないのです。組織的に国民をカバーしている英国のナショナルヘルスサービスが手抜きをしているとは思えません。
問題は新型コロナによる致死率です。インフルエンザは0.1%の致死率とされます。新型コロナで高齢者は10%を超える死亡者を出しましたが、第651回「ワクチン接種とインド変異株で若者中心感染」で見たように高齢者感染がほぼ消えています。政府の打ち出した「原則として自宅療養」方針は実質的にインフルエンザ並みに扱うことになり、果たして良いのか。致死率の推定が新しい変異株登場もあって揺れ動いています。