釣り師「太公望」が大量に売られている。
おじいさんがずらり。中国の観賞魚店に行ったときにみつけたものだ。
なんでもこれは太公望なのだそうだ。釣りをする老人として聞いたことがある人もいるかもしれない。
名前は姓を姜、氏を呂、名を尚、字を子牙というそうで、中国の検索サイト「百度」で検索すると「姜子牙」と呼ばれている。
古代中国、紀元前11世紀ごろの周という国の軍師で、後に斉という国を建国した…のだそうだ。
そんな歴史の重大な人物であり、釣りが趣味の太公望は、現在アクアリウムショップでしばしば見かけるインテリアになっていた。
太公望は水槽にいれるもの
僕がふらっと入ったアクアリウムショップではたくさんのインテリアパーツが売られていたが、人型の模型は太公望がメインだった。
ネットショップで調べてみても、太公望ばかりである。他には六角亭やら亀やらがあるが、やはり太公望が多い。
水槽の中に入れられたプチ太公望から見れば、水中ガラストンネルの中にいるように360度泳ぐ魚に囲まれているはずだ。
釣り師的には本望なのだろうか。
それにしても売られている太公望たちは、単なる量産品ではなくそれぞれに個性があり、いとおしい。
僕が買った太公望は白髪を伸ばし、お年を召しているにも関わらず、片膝を上げる健康的なポーズ。
右手で力強く竿を持ち、膝の上に左手をグーにして置く。目には力がこめられている。その辺のおじいさんとは一線を画す。
ネットショップで売られている太公望を見ても実に力強い。これが国をつくる男である。
太公望へのイメージが変わった。
日本昔話にも出てくるような川でのんびり岩魚を釣る老人のイメージを持っていたが、なかなかどうして。ゲーム化もされた世界の巨大魚を釣る故・松方弘樹さんのような力強さだ。
ここで、ネットショップで売られているいろいろな太公望を紹介しよう。
太公望を光らせるインフラは橋と亭
人物では太公望がメジャーだが、建物では八角亭(八角形のあずま屋)や橋が主に売られている。ハイキングの途中にありがちな八角亭や橋だが、そのバリエーションは多い。
アクアリウムショップで売られているものの、水槽のデコレーションだけでなく、組み合わせて家において箱庭的に飾ることもあるという。
奥が深そうだ。
買ったが釣り竿が折れ消える
ところで僕が中国で買って日本に持ち帰った太公望は、釣り竿が折れて先にあった魚ごとなくなっていた。
折れた釣り竿は木製で、記憶では釣り糸は普通の糸でその先に魚があったのだが、すべて消えてしまった。
やってしまった。
釣り竿は糊づけされているわけではなく、ピンセットで引っ張ると抜けて、小さな棒を入れられる穴ができた。
まず思い浮かんだのはつまようじ。つまようじは刺さった。つまようじ入れとして使えそうだ。
ならば次は旗でもつけたらどうだろうと考えた。
そうだ。お弁当の旗など、様々なごはんに挿すピックならいけるんじゃないか。
そこでピックをいろいろ買ってつけてみた。
不覚にも太公望が可愛かった。可愛くなってしまった。
天下を取らんばかりの力強く眼力の強い太公望が、ポップなピックでいっきにやさしいおじいさんに変わってしまった。
髪型を変えずとも、かわいいキャラグッズをあわせることでイメージチェンジができる。
太公望はそう教えてくれた。