導入すすむ「1on1」が難しいワケ – ミナベトモミ

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近年、上司と部下が1対1で対話する「1on1」がムーブメントとなり、大企業などで取り入れられることが増えています。定期的に30~60分間おこない、「上司⇄部下」のように双方向で話をするのが特徴ですが、企業によっては1on1を目的なきまま「とりあえず導入」して形骸化するケースもあります。この記事は、上司や部下などの立場を問わず、1on1に課題を感じている人のためのものです。

筆者が共同代表を務める株式会社MIMIGURIでは、大企業・メガベンチャーの組織問題の解決を多く手掛けています。コンサルティングを手がけるなか調査をしてみると、問題の根本には「対話不足」が発生していることも多く、そうした状況下では1on1の組織的見直し・ミドルマネージャーの対話力強化が有効な手立てとなります。

 

忘れがちな1on1の本来の目的とは

1on1は本来、「部下の発達機会を、上司から提供する場」であり、最も部下の育成効率が高まる施策だとされています。

人の発達(成長)は「知る→変容」の2ステップでおこなわれます。いわゆる人材研修・読書・座学等は「知る」ことはできますが、それが個人の中で腹落ちし「認知・行動・態度の変容」することが発達には必要です。こうした変容を促すのが、1on1に求められる役割です。つまり、ただ話すことが目的ではありません。

よい1on1においては、終了後に部下が「そうだったのか!」となり、満足度も高くなります。ゆえに上司は部下が新たな気づきを得られるよう、1on1プログラムを熟慮し臨むことが求められます。

抑えておきたい、1on1の基本型

まず、1on1の基本形について解説します。「もう知ってるよ」という人もいるかと思いますが、1on1のような頻繁におこなわれるプログラムはつい実施することが目的になりがちです。今回は仮に60分の1on1を実施するとした場合の流れを5つの項目に分けて説明するので、ぜひ確認してみてください。

1. チェックイン
2. 何について話すか決める
3. 傾聴(部下が話したいことを話す)
4. 発話(上司が話したいことを話す)
5. 次回までの宿題を決める

Step1. チェックイン
チェックインはアイスブレイクの一種です。もちろん雑談でも良いのですが、慣れないマネージャーが本題とは関係のない雑談をした場合、そこから自然に本筋に持ってくのは難しいため、私はチェックインをお勧めしています。チェックインは1on1という場に臨む上で「今の感情やモチベーション」を自分主語で話すことで、場づくりのきっかけにする方法です。チェックインには色々なやり方がありますが、感情を絵文字で表現するなどすれば、抵抗感なく導入できるかもしれません。

Step2. 何について話すか決める
本来なら1on1の前にマネージャーがお題を決めるケースが好ましいのですが「実は部下が話したいこと」をおざなりにしてしまう場合があります。「今いちばん話したいことはありますか?」「●●か○○の話だと、どちらが良いですか?」等の問いかけにより、「今日はこれについて話す」というような「場の目的」についてお互い合意し、協力する姿勢に寄せることが大切です。

Step3. 傾聴(部下が話したいことを話す)
場の目的に応じ、上司はまず聞く姿勢を示すことが大切です。上司からすれば部下の意見は、一見間違っているように見えるかもしれません。しかし重要なのは「どちらの意見が正しいか」を決めることでなく、部下自身が答えにたどりつく力を身につけることです。傾聴をしながら部下からの発話を促していきましょう。

Step4. 発話(上司が話したいことを話す)
傾聴後は、壁打ち的に打ち返しをすることとなります。発話内容を大きく分類すると、
・モヤモヤや悩みを打ちあけてくれた
・課題提議をしてくれた
・具体的な提案をしてくれた

…などがあります。いずれも基本姿勢として「共感」を示しながら、コーチング的に問いかけながら部下自身で考えてもらいつつ、時おり新たな目線をインプットするのが好ましいとされます。

Step5. 次回までの宿題を決める
これらを通じ、最終的には、
・モヤモヤの言語化をさらに深める(orしっかり対話する場を別に設定する)
・課題について具体的な方法を考える
・ネクストアクションを考え、次回結果報告するようにする

…など、次回1on1までの宿題を決めることとなります。