お荷物社員が生まれるメカニズム – 城繁幸

BLOGOS

今週のメルマガ前半部の紹介です。東洋経済オンラインでなかなか刺激的なタイトルの記事が反響を呼んでいます。

【参考リンク】会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件

要旨は、会社でお荷物になっている人材には5つのパターンがあり、その背景には人事部の杜撰な採用の影響も大きいというもの。基本、筆者も同感ですね。

とはいえ、人事部もお荷物になりそうな人材を選んでいるわけではなく、最初は優秀者を選んだはず。

というわけで今回は、なぜお荷物な社員が生まれてしまうのか、そしてお荷物社員にならないためにはどうすべきかをまとめておきましょう。

お荷物な社員が発生してしまうメカニズム

さて、先の調査で挙げられている“お荷物社員”の特徴は5点あります。

・仕事ができない
・そのことに対する自覚がない
・他罰的に考える
・周囲に悪影響を与えている
・自発的に動けない

「仕事ができなくて無自覚」なのは単に能力的な問題なので省きますが、他の3点は日本型組織の風土病と言ってもいいくらいどこの職場でも目にしますね。

3:4:3の法則と言われるものがあります。どんな組織でも成果を上げるのは上位3割で、人並みの4割と下位3割に必ず分離するというやつですね。

だから下位3割を辞めさせても新たな下位3割が生まれるだけなので意味がないという意見も経営者や人事の中には少なくないです。

ちなみに、筆者が理想と考えている人事制度というのは、3:4:3のメンツが流動的で、だれにもチャンスがある制度ですね。

ところが。なぜか日本企業ではそのメンツが固定的で、特に上位と下位のメンツが悲しいほど固定化されている職場が多い印象があります。

これは担当業務の曖昧なメンバーシップ型雇用が深く関係していて、一言でいうと「重要度が高く評価されやすい仕事ほど最初から優秀な人材に回り、そうじゃない仕事はやっぱり最初から優秀ではない人に回される」からです。

業務範囲を明確にしないメンバーシップ型だからこそ、与えられる役割、そして評価は一度決まってしまうとなかなか覆せないんですね。

まあ、これが海外だったら下位なり中位なりに定着してしまっても転職すれば済む話なんでしょうが、そこは終身雇用の日本ですから、不本意ながら毎日出社して与えられる役割をこなす人は少なくありません。

「自分は悪くない。悪いのはそういう役割しか与えない上司だ」と、モチベーションがネガティブになっている人材というのは、こうした日本型組織の構造的な部分に根っこがあるわけです。

さらに言えば、例の「出世競争の終了した中高年社員問題」も関係してきます。多くの企業では40歳あたりで幹部候補選抜が終了し、それ以降は出世の芽の無くなった人間は「言われたことだけ最低限やるエコモード」に進化します。

そう、それはまさに冒頭で挙げられている「自発的に動かない人材」です。

まとめると、終身雇用でメンバーシップ型雇用の日本企業では、入り口でいくら優秀な人材を採っても、環境的に「他罰的な人」「自発的に動かない人」を一定数量産してしまうものなんですね。特に後者は会議などで真っ先に「やらない理由」を口にして足を引っ張ろうとするので、周囲に悪影響を与えるタイプでもあります。

60歳定年の時代にはシャレですんだかもしれませんが、将来的に企業は上記のようなお荷物社員を70歳まで面倒見なければならなくなります。

大手の早期退職導入が広がっているのは、企業がようやく“お荷物社員”問題に正面から取り組み始めた結果でしょう。

タイトルとURLをコピーしました