大阪にある不思議な眼鏡屋さん『隠れ屋 1632』にお邪魔して、オリジナルの眼鏡を作ってもらった。
※2012年2月に掲載された記事の写真画像を大きくして加筆修正のうえ再掲載しました。
そろそろ眼鏡買い替えたいな〜そんなことを考えていると、とある筋から不思議な眼鏡屋さんがあると聞いた。その不思議な眼鏡屋さんの名前は「隠れ屋1632」というらしい。
工房は香川県にあるそうだが、月に数回、大阪の支店にも来られているようだ。筆者の家からも近い。これはチャンス!早速向かう。駅からしばらく歩くと住宅街の中に、黄色い眼鏡が掲げられている民家を発見。看板がなかったら絶対眼鏡屋だとわからない!
玄関は開け放たれているのだが、すぐに引き戸がある。引き戸からは異様なオーラが漏れ出している。
眼鏡暖簾をくぐってお店におそるおそる入ると、早速店主らしき人が出迎えてくれた。
風貌からしてただ者ではない(頭部の当たり判定が凄そう)内原さんは眼鏡のデザインから製造、販売までをひとりでこなしておられる凄い人。店内も内原さんの作家性で満ちあふれている。
隠れ屋 1632の全貌
こちらは商談場所だそうだ。艶やかで遊郭みたいである。
日本眼鏡技術者協会の「眼鏡士登録証」が掲げられているのだが、眼「狂」士になっている。ロックだ。
内原さんの個性豊かな眼鏡をご紹介
米海兵隊特殊部隊が実際に使用しているストリームライト社のタクティカルライト。LEDや赤外線を照射し、暗闇で性能を発揮。内原さんは香川県で唯一のストリームライト社のタクティカルライト代理店だそうだ。
琉球の守り神シーサーを表現した眼鏡。デフォルメされていても、シーサーであることがすぐにわかるのが凄い!
棺には造花が納められており、テンプルに鯨幕の模様があしらわれている。よく見ると右目のリムがお岩さんのようにたれさがっているのも素敵だ。
フレーム全体が木で作られている。想像を絶する時間と技巧が必要に違いない。ウィスキー樽から彫り出したので琥珀色のウィスキーがじんわりしみ込んでいるとのこと。
額の第三の目があしらわれている遊び心のある眼鏡。妖怪のようなおどろおどろしい色使いと今にもうごめきだしそうな躍動感のあるフレームが魅力的だ。
車のメーターをイメージしたモデル。スピードメーター、タコメーター、フユーエルメーターが並んでいる。車好きにはたまらないアシンメトリーなモデル。整備士の人がつけていたらめちゃくちゃ素敵だ。
ブラックライトに反応し発色する特殊な生地で作られた眼鏡。ブラックライトがあるところでビカビカ光る。テンプルの先端、モダンもちょっと光る演出がにくい。
蝶々のシルエットをしたかわいらしい眼鏡。なぞなぞを出してきそうな外見になる。
フレームが全て針金でできている。レンズの固定はどうやってるの?と思った人もいるかもしれない。はい!レンズに小さい穴をいくつもあけて針金で縫って固定しているそうです(すごい技術!)
フレームの両端に飛び出た羽のようなシルエットが特徴的。ウルトラマンの変身アイテムのようだ。
辛いものを食べたときの表情を切り取った眼鏡。左のリムが漫画キャラの目のように歪められており、辛そうなイメージがよく伝わる。添えられた唐辛子ソースが可愛い。
どうやって作ってるのかもうよくわからない。が、異形なのにシンプルでかっこいい。ほしい。
内原さんが香川県でお店をはじめられた時、まわりに住んでいるのがおじいちゃんおばあちゃんばかりで、眼鏡の売れ行きがあまりよくなかったらしい。そこで、スーパーであんぱんを買ってきて陳列棚に並べたところ、よく売れたので、それ以来一日一個限定であんぱんを販売しておられるとのこと。
憧れのスーパーカーランボルギー二をテーマにしたシリーズ。形もかっこいいがこの眼鏡、テンプルがスーパーカーの扉のようにせりあがるのだ。
眼鏡の素材として有名なイタリアのマツケリ社の生地から、眼鏡の一部だけを切り出した、眼鏡が生まれる瞬間を表現したモデル。もう顔にかけられるとかどうでもいいのだ。
独創的で魅力的な内原さんの眼鏡。まだまだご紹介できていないモデルがたくさんある。発想の源は何ですかとお聞きしたところ「縁側で葉巻を吸っていると、眼鏡の神が降りてくる」とのこと。眼鏡の神、公園のハトみたいに内原さんの元に降りてきすぎである。最近は「ライバルがいないこと」に悩まれているらしい。
内原さんの眼鏡が魅力的過ぎて、当初の目的を忘れていた。オリジナルの眼鏡を作ってもらいたいのだ。
オリジナル眼鏡を相談
内原さんのお店は、完全オーダーメイド。自分がほしい眼鏡のイメージを伝えると作ってもらえる。私もいくつかオリジナルの眼鏡を考えてきたのだ!眼鏡神におそるおそる差し出す。
ザビエルしか似合わないわりに、造形が細かいので制作費が凄いことになるとのこと。諦めよう。
金魚すくいのポイ眼鏡。こちらは強度がなさそうなので断念。こんなアイデア群でも、内原さんは真剣に相談に乗ってくださった。優しい!最終的に作ってもらうことになったアイデアがこちらだ。
視力検査でおなじみの遮眼子にレンズを入れて眼鏡にしたいのだ。これがあれば、視力検査で圧倒的な視力をたたき出すことができるはずだ。レンズの色味など色々と相談に乗ってもらった後に……
待つこと2週間……完成した眼鏡がこちらです。
オリジナル眼鏡完成
見えなくするための道具である遮眼子と、見るための道具である眼鏡が見事に融合している。まるで最初から空いていたかのように削られた穴、そこにキュッとはめ込まれたレンズ。いわゆるおふざけアイデアではあるのだが、出来上がりの精度が高くてアート作品にしか見えない。丁寧なお仕事にため息がでる(内原さんは眼鏡の学校を主席で卒業した経歴を持っておられます)今回は、私の右目の視力にぴったりあわせた、黒いレンズを選んではめ込んでもらった。
レンズが目立たなくなるので、普通の遮眼子に見える!(グッドデザイン賞の選考委員の人、見てますか)
これで視力検査において、圧倒的な視力を見せつけることができるようになった。
内原さんに眼鏡の話をお聞きして、眼鏡ってこんなに面白い道具だったのか膝を打ちすぎて膝の骨がボキボキに折れ、入院することになった。
あなたも内原さんの不思議な眼鏡の世界を訪ねてみてはいかがでしょうか、ではない。今すぐ行ってください。
※住所は秘密とのことですので、ご自身で探してみてください。