中国注視 国際社会のロシア対応 – 鈴木馨祐

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 昨日、ウクライナがロシア軍に侵攻されました。

 今回のロシアによるウクライナへの全面侵攻は、ウクライナの主権と領土の一体性を著しく侵害する国際法に違反する行為であり、また無辜の市民の生命や尊厳を侵す行為であって、断じて許容できるものではなく、日本の国民を代表する立法府の一員として、また外務副大臣や財務副大臣を務め日本外交に携わってきた一政治家として、強く非難をいたします。また、この侵攻自体、そしてこの侵攻がもたらす我が国の地政学的リスクの高まりについても、わが国自身の安全保障にとり極めて深刻な事態であり、幅広い分析が必要です。

 そもそも、第二次世界大戦後最初の武力による現状変更は1945年の我が国に対するソ連による樺太、千島、北方領土への侵攻です。日ソ不可侵条約を一方的に破棄し終戦の一週間前に日本への侵略を開始し、多くの人命が失われました。日本はいまだに北方領土を不法にロシアに占拠され続けている被害国でもあります。我が国の立場として、今回の事態は国際法を無視した最も新しい武力による現状変更の取り組みであり、強く関与すべきと考えています。

 ウクライナについては、1994年12月にソ連崩壊時にウクライナ(ベラルーシ、カザフスタンと共に)に存在していた核兵器をロシアに移管し核不拡散条約の加盟国となったことに伴い、ロシア、アメリカ、イギリスとの間でブダペスト覚書を締結しています。そこには、当事国が、ウクライナの独立と主権と既存の国境を尊重すること、ウクライナに対し自衛の場合を除き武力の行使を行わないこと、ウクライナが侵略された場合国連安保理の行動を要請することで国際合意しています。

 今回のウクライナ侵攻については当然のことながらロシアはこの国際合意に明確に違反しているわけですが、同時に国連安保理の常任理事国であり強大な軍事力を持つ国が侵略を行った場合、アメリカを含む国際社会が対抗することの難しさを浮き彫りにしています。特にウクライナはNATOにまだ加盟していないため、NATOや日米同盟のような安全保障条約締結国と比べて脆弱なところがあり、ロシアがその隙を突いた面がある可能性がありますが、そもそも論として、実際に侵略された場合に米国が軍事的に本当に守ってくれるか、という根源的な問いかけを、中国やロシアのような軍事大国の脅威にさらされている国々に惹起させる出来事でもあります。今回の国際社会の対応次第では、安全保障上のリスクにさらされる国々が独自の核武装や軍拡に転ずるきっかけともなりかねない状況です。

 日本が置かれている地政学的環境。中国が今年秋以降にも台湾を侵攻する可能性があり台湾海峡も非常に危機的な状況にあると指摘されている東アジアに位置する我が国として、中国の台湾侵攻が行われれば、まさに日本としての存立危機になりかねないことを考えても、今回のロシアによるウクライナ侵攻は国際社会の対応という意味でも、極めて深刻な事態です。

 これまでの思考や行動様式から判断して「同じ穴の狢」と言って良いロシアと中国、プーチン大統領と習近平主席。中国が今回のロシアの行動を支持していることも、将来的な台湾等への侵攻への布石とも考えられます。アメリカや国際社会が今回のロシアの侵攻に対してどのように反応するのか。具体的には経済制裁だけでなく軍事的な動きを含めたより強硬な対応を出来るのか否かを中国は必死に注視し分析していると考えられます。

 クリミアで他国が介入できなかったことが香港での中国政府の動きの呼び水となったように、ウクライナ侵攻への国際社会の関与が今後の中国などの動きを大きく左右しかねないとの認識を、日本や台湾、アメリカは持たねばなりません。日本政府としても、アメリカ政府との間で、ウクライナ侵攻に関し将来の中国の台湾侵攻リスクをも見据えた戦略的な対応を検討するよう密接な協議を行う必要があります。

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