安倍前首相の「反日」思考に呆れ – 阪口直人

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 2週間後に開幕が迫った東京オリンピックは無観客で行われることになった。第五波の感染拡大が止まらない現状ではやむを得ない判断だと思う。しかし、これほど大きな決断が開会式の2週間前とはあまりにも遅すぎる。

 迷走を続けた末の直前の変更は、大会のホスト国としての信頼、威信を大きく損ねることになった。『新型コロナに打ち克った証』どころではなく、オリンピックのムードも盛り上がらない。国民の注目は大リーグでホームラン争いを独走する大谷翔平投手ひとりに圧倒されている気さえする。

 先が見えないコロナ禍において100%正しい決断などはなく、何らかのリスクを負った判断は避けがたいことだったと思う。私自身もすでに代表に内定している多くの選手のことを考えると、2年延期よりも1年延期が妥当と昨年は考えていた。

 ただ、感染拡大を防げず、諸外国に比べるとワクチン接種が著しく遅れた状況を考えると、今年の早い段階でもう1年延期し、より良い形でオリンピックを実施する判断ができなかったのか。秋までに行われる衆議院選挙に向けて、政権のスキャンダルを忘れさせ、政権浮揚の材料に利用したい思惑が決断を鈍らせたのではなかったかと思う。

 オリンピックの晴れ舞台が無観客というのでは、人生を賭けて競技に取り組んできた選手があまりにも気の毒だ。また、これまでのマイナス分を補う需要を見込んだ各業界や、交流を楽しみにしてきたボランティアの方々もさぞ落胆しているだろう。

 この間のオリンピックを巡る政治家の発言の中でもっとも腹立たしく感じたのは、感染拡大や医療事情を心配してオリンピックに対する政府の方針に異議を唱える人々を『反日』と考える安倍晋三前首相の価値観、感性だ。

「極めて政治的な意図を感じざるを得ませんね。彼らは、日本でオリンピックが成功することに不快感を持っているのではないか。共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています。朝日新聞なども明確に反対を表明しました」雑誌Hanadaでの櫻井よしこ氏との対談で安倍氏はこのように述べたとされる。

 対談の中で櫻井氏が野党による五輪の政治利用を問題にしたのに対し、安倍氏は対象を「反日的ではないかと批判されている人たち」に広げ、彼らは五輪の成功に不快感を持っていると決めつけたうえで、その代表例として共産党や朝日新聞の名をあげているのだ。

 総理大臣を務めた人間としての見識を疑わざるを得ない。

 安倍政権時代、ブログなどで政権を批判したら、大量に送りつけられるコメントでよく反日、売国というレッテルを貼って頂いた。自民党ネットサポーターズのネトウヨ諸氏が言うならまだしも、前首相本人がそのような思考回路であること、何とも情けなく思う。

 結果的には都議選前に大きく報じられた安倍氏のコメントが自民党の惨敗、そして無観客の流れを作っていく要因の一つになった。安倍氏もさぞ忸怩たる気分だろうが、このような人物が日本のトップに君臨していた事実、その状況を許していた我々野党の力のなさにも今さらながら無念の思いだ。次の衆議院選では、この流れを変えなくてはと改めて思う。