米AMDは8月29日(現地時間)に、米国テキサス州オースティン近郊の会場において記者会見を開催し、同社が開発を表明してきた次世代CPUアーキテクチャ「Zen 4」コアを採用した新しいデスクトップPC向けCPU「Ryzen 7000シリーズ・デスクトップ・プロセッサー」(以下Ryzen 7000シリーズ)を正式に発表した。
Ryzen 7000シリーズは、9月27日よりグローバルに販売が開始される計画になっているが、それに合わせて新しいSocket AM5に対応したマザーボードの販売計画も明らかになった。ゲーマー向けのチップセットになる「X670 EXTREME」および「X670」を搭載した製品がCPUと同時となる9月(つまり9月27日以降)に販売開始され、ビジネスやメインストリーム向けとなる「B650 EXTREME」と「B650」は10月を予定していることを明らかにした。
また、AMDは新しいソケットSocket AM5で、DDR5メモリに対応するが、AMD独自のオーバークロックメモリモジュールの「AMD EXPO Technology」を導入する。これは、Intelプラットフォーム向けとしてIntelが定義したXMPのAMD版というべき仕様だが、Socket AM5マザーボードではEXPOだけでなく、XMPもサポートするとAMDでは説明している。
X670系が9月から、B650系が10月から発売開始
AMDはRyzen 7000シリーズで完全に新しいCPUソケットとなる「Socket AM5」を投入する。このSocket AM5では、LGA(Land Grid Array)になり、マザーボード側にピンが用意される形になり、従来のSocket AM4などでCPUクーラーを外そうとしてCPUごと抜けてしまうトラブルなどを避けられる。ピン数は1,718ピンで、供給できる電力は230Wまでとなっており、従来のSocket AM4ではサポートしていなかったDDR5メモリやPCI Express 5.0に対応できることが大きな特徴となっている。
AMD 執行役員 兼 クライアント・チャネル事業部 事業部長 デビッド・マカフィー氏は「Socket AM4は2017年9月に導入され、これまで5つのCPUアーキテクチャ、4つのプロセスノードを1つのソケットでカバーしてきた。Socket AM5も2025年、さらにはそれ以上先のプラットフォームにまで対応する計画だ」と述べ、Socket AM4が5年に渡って複数の世代で利用さて来たように、Socket AM5も長く使えるプラットフォームになると強調した。
また、既に発表されている通り、Socket AM4のCPUクーラーを使い回すことも可能なことが特徴で、何らかの工夫(現時点では詳細は明らかになっていない)でSocket AM5にも同じCPUクーラーを使うことが可能になっている。
ただし、Ryzen 7000シリーズの上位SKUはTDPが170Wに引き上げられており、それらを利用して本来の性能を発揮させたい場合には170Wに対応したSocket AM5用CPUクーラーが必要になると考えられる。
このSocket AM5に対応したチップセットとしては、X670 EXTREME、X670、B650の3つがあることがCOMPUTEX TAIPEI時点での発表で明らかにされていたが、今回それに加えてB650 EXTREMEがあり、合計4つであることが明らかにされた。
B650 EXTREMEとB650の違いはX670でのEXTREMEありなしと同じで、PCI Express 5.0の対応デバイスになる。つまり、B650 EXTREMEはディスクリートGPU用のx16とストレージの両方に対応するが、B650はストレージ対応のみだ。
AMDはこのPCI Express 5.0の普及に向けてSSDのデバイスメーカーと協業しており、11月にはよりPCI Express 5.0に対応したSSDがより広範囲に提供されるようになる見通しだと説明した。
AMD版XMPとなる「AMD EXPO Technology」が導入され、5社から発売される予定
もう1つの目玉機能は新しいオーバークロックメモリモジュールの導入だ。既にIntelはXMPという独自のオーバークロック用メモリモジュールを導入しており、同社のプラットフォームでサポートされている。AMDのマザーボードでもXMPもメモリモジュールをサポートしているものが多いが、今回AMDは「AMD版XMP」というべき「AMD EXPO Technology」(以下EXPO)というオーバークロックメモリモジュールの規格を導入することを明らかにした。
AMDによればEXPOは、オーバークロックメモリプロファイルを備えており、マザーボード側がそれを読み取って自動でオーバークロックしたりすることが可能になる。1080pのゲームで11%の性能向上が認められ、DDR5のレイテンシは63nmまで削減されるという。仕様はメモリモジュールメーカーに対してロイヤリティフリーで公開され、メモリモジュールメーカーは追加コストなくEXPO対応のメモリモジュールを製造できる。
EXPOに対応したメモリモジュールはADATA、Corsair、GeIL、G.Skill、Kingstonなどのメモリモジュールメーカーから提供される予定で、最大でDDR5-6400までのメモリモジュールが提供される計画だ。
なお、AMDのマカフィー氏によれば「我々のプラットフォームでは、EXPOだけでなくXMPにも対応している」と述べ、引き続きXMPのメモリモジュールもAMD側のマザーボードでも利用することができる見通しだと説明した。
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