まだまだ暑い日が続いている。皆さん、胃腸の疲れは大丈夫ですか?
僕は胃腸が弱いので、最近すっかり弱っている。夏の終わりに胃腸を壊して秋に風邪を引く。これが毎年の恒例となってしまった。もっと胃腸が丈夫だったらどんなにいいことか。そんな事を考えているうち、ふと腸の長さについて気になった。
聞くところによると10メートル近くあるという。そんなものがこのお腹の中にあるなんて信じられない。都市伝説なのかもしれない。
※2008年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
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腸と私
どうやら僕は生まれつき胃腸が弱いらしく、生後十ヶ月で「腸重積」という病気にかかっている。母親の話によると「腸重積」は腸がからまる病気で、発見があと10時間遅れていたら僕は助からなかったのだとか。今でもちょうど盲腸のあたりに当時の手術跡が大きく残っていて、病気の重さを物語っている。両親とお医者さんのおかげでここまで生きてこれた訳だ。
と思ったのだが、さきほど「腸重積」でネット検索をかけたら、「発症から24時間以内のケアでほとんど治ります」と書いてあった。そんなに重い病気ではないのか? 確かに「放っておくと壊死を起こします」とも書いてあるが、要は放っておかれたという事なのかもしれない。38才にして生まれた母への不信感。
「腸重積」の他にも社会に出た年に「十二指腸潰瘍」にもなった。きっと社会に出たストレスが原因なのだろう。朝方、急に差し込みがきて救急車を呼んだ。救急車の中で熱を測られたのだが、今、熱は関係ないだろうと思った記憶がある。
以上が腸と僕の思い出だ。
本題に入る。
腸の長さは9.2メートル
もしかしたら都市伝説かもしれない腸の長さについてネットで調べてみた。リサーチの結果、やはり10メートル近くある事が分かった。正確には日本人の腸は約9.2メートルで(欧米人は2メートル短い)、小腸が7.5メートル、大腸が1.7メートルなのだそうだ。都市伝説でも何でもない。
9.2メートルにもおよぶ腸の長さを実感するため、東急ハンズに向かった。
同じ長さのホースを手に入れるためである。
ハンズの水道用品売り場で腸にもっとも近いホースを探す。
腸の直径は、小腸が3センチで大腸が5センチだ。
するとまず、小腸にうってつけのホースが見つかった。洗濯機などに使う「排水ホース」だ。ちょうど直径が3センチ。1メートル430円で10センチ単位で売ってくれる。
これで小腸部分はメドが立った。あとは大腸部分であるが、直径5センチのホースが中々見つからない。店員さん曰く、そんな太いホースは滅多にないとのこと。仕方ないので小腸部分と同じ排水ホースを大腸部分として使用する事にした。
店員さんがホースの長さを測りながら、
「何に使うんですか?」
と聞いてきた。7.5メートルと1.7メートルという長さでオーダーしたので、「腸か?」と気付いたのかもしれない。「腸です」とは言えず、「工作的なことに」と答えておいた。
一応、小腸と大腸の色を変えた。小腸が半透明のグリーンで大腸は白、2色で合計9.2メートルの排水ホースである。これを本来の目的に使うとしたら、洗濯機と排水溝が相当離れている家という事になるが、僕は「腸の長さを実感する」ために購入したのだ。
それにしても、排水ホース9.2メートルは結構なボリュームである。ずっしりとした重みもある。
ホースを体に巻き付けて街に出た。
街中で腸のサイズを確認するのだ。
腸は渋谷公園通りを渡れるか?
街に出て腸の長さを実感する。
まずは、渋谷の公園通りである。腸は公園通りを渡る事が出来るのか?
パルコ前のスクランブル交差点で検証する。
パルコの対岸でスタッフに小腸の端を抑えてもらい、僕が大腸側を持って横断歩道を渡っていく。小腸と大腸、合わせて9.2メートルの腸が、パルコ前のスクランブル交差点を横断する。
途中、腸がからまった事で幼少の頃の「腸重積」が頭をかすめた。
腸はからまりやすいのだ。だから僕は「腸重積」にかかり、しばらく放っておかれた影響で死にかけたのである。
実寸の腸を手にして初めて、「腸がからまりやすい」ということを知った。
9.2メートルの腸は横断歩道を渡りきり、ちょうど大腸部分があまった。
つまり、渋谷の公園通りは人間の小腸と同じ長さの道幅なのだ。
今後、公園通りを歩く時は「この道幅、小腸の長さなんだぜ」と自慢していただければと思います。
線路を何本越えられるか?
道路の次は線路。腸は線路を何本越える事が出来るのか?
腸を持って線路を渡れば検証出来るが、線路に入ってはいけない。
そこで、ガード下にやって来た。
線路の下で腸の長さを検証するのだ。
頭上には山手線の内回り、外回り、埼京線の上下線が走っている。 手前が山手線で奥が埼京線。出来れば埼京線まで到達させたい。
検証の結果、腸は山手線の線路2本を越え、もう少しで埼京線というところまで届いた。残念ながら埼京線に到達する事は出来なかったが、山手線を越える事は出来た。
人間の腸は山手線を越える事が出来る。
次に、腸の長さを生かす方法を考えます。
腸を使って流しソーメン
9.2メートルの長さを生かす方法として、まず頭に浮かんだのが「流しソーメン」である。腸だから何か食べ物を流したいと思ったのだ。
コンビニでソーメンを購入して、宮下公園にやって来た。
宮下公園は高い所にあるので階段の落差を利用する事が出来る。
ところがソーメンが腸の中にくっついてしまい中々ソーメンが落ちてこない。
ホースを、あ、腸をブルブル左右に揺らしてソーメンを動かしてもダメだ。上で小腸の先を持つスタッフが上から麺つゆを流す。麺つゆによって滑りを良くさせる作戦である。
麺つゆとブルブル攻撃によって、ソーメンが徐々に大腸に近づいて来た。 がんばれソーメン、あともう少しだ。
7、8分はブルブルやっていただろうか?
ようやくソーメンが大腸を通って出て来た。
流しソーメンってこんなだっただろうか?
と疑問を感じつつも、小腸から大腸を抜けて外に出たソーメンを食べてみる。
ちょっと器からはみだしてしまったので砂のついた麺もあったが、概ねソーメンはおいしかった。夏の味である。
外でブルブルやっていたので汗だくになってしまった。
喉もかわいた。
そうだ、腸を使ってビールを飲もう。
腸を通って生ビールが出て来る
喉が渇いたのでおいしい生ビールを飲みたい。
缶ビールじゃなくて生ビールである。
ビールサーバーから腸をつたって生ビールが出て来る、なんてどうだろう?
素敵だ。
こういう事を頼めるお店は青山の「京菜」しかない。マスターの金澤さんはこういう試みが大好きなのだ。腸から出て来る生ビール。もしかしたら京菜の名物になるかもしれない。
18時のオープン前を狙って、アポ無しで向かった。
金澤さんは日本経済新聞を読んでいた。お客様との会話が弾むよう、あらゆる方面の知識を取り入れているのだ。
経済について学んでいる最中ではあるが、ちょっとお時間をいただき「腸から出て来る生ビール」の説明をした。
「面白い、やりましょう」
気付くと金沢さんは小腸の端を持ってお店の奥、ビールサーバーのあるカウンターに向かっていた。
驚く事に、腸の長さと京菜の店の奥行きがほぼ同じなのだ。京菜のカウンターから出口側の客席までの長さは腸の長さなのである。
まさに、腸から出て来る生ビールのためにあるお店と言っても過言ではない。
先ほどの流しソーメンと違って、今回は小腸側と大腸側に落差がない。ただ黙って見ていてもビールが大腸側まで到達しない。
そこで、京菜のフロアマネージャー遠矢さんの登場である。
遠矢さんが腸の中腹を持ち、腸に落差を作る事でビールを大腸まで運ぶのだ。
金澤さんから遠矢さんに託されたビールのバトン。2人の連携プレイによって、生ビールが大腸までやって来た。
あとは僕が大腸から出て来るビールをうまくグラスに注げば完成である。
大腸を持つ左手にビールの感触が伝わってきた。
よしきた。
右手で大腸の先を持ち、慎重にグラスに注ぐ……、
金澤さんが流したビールの量が多過ぎたようだった。グラスに収まりきらない生ビールがどくどくと床にこぼれてしまった。
そして、こぼれたビールの中に何かが浮いている。
さっきのソーメンだ。
とにかく腸は長かった
9.2メートルの腸を持って1日中ウロウロしていたのだが、とにかく腸は長くて扱いづらい。すぐにからまるし、重いし。
こんな大変なものがお腹の中に入ってるなんて、人間の体って本当に不思議ですね。