2021年7月16日、ゲーム配信サービス「Steam」を展開するValveが、Steamの全機能を搭載した携帯型ゲーム機「Steam Deck」を発表しました。そんなSteam DeckのOS「SteamOS」が、なぜ当初のValveDebianベースからArch Linuxに変更されたのか、IT系メディアのArs Technicaが解説しています。
Valve’s upcoming Steam Deck will be based on Arch Linux—not Debian | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2021/08/valves-upcoming-steam-deck-will-be-based-on-arch-linux-not-debian/
SteamOSはValveによりカスタマイズされたLinuxディストリビューションです。SteamOS 2.0まではDebianベースでしたが、SteamOS3.0からArch Linuxベースに変更されました。Ars Technicaによると、特定のLinuxディストリビューションを実行する機能に関しては、DebianとArch Linuxはほぼ正反対の役割を持っているとのこと。特にDebianは、定期的なリリースサイクルと最小限の開発作業でシンプルかつ安定したデスクトップ環境を提供することを目的に、保守的で安定性重視のアプローチを取っているそうです。
対してArch Linuxには安定したリリースサイクルはなく、GUIが全く提供されず、断続的に更新が行われるローリングリリースを使用すると安定したディストリビューションよりも頻繁にバグが発生するとのこと。Ars Technicaは「一般的なデスクトップPCとして機能させたいだけのユーザーにとって、Arch Linuxはひどいものです」と評していますが、Steam Deckの求めるものには適しているとのこと。
ValveはDebianからArch Linuxに乗り換えた理由として、「Steam Deckで最高のゲーム体験を提供するために、カスタマイズ性が高いArch Linuxの方が適していると思います。Arch Linuxのローリングアップデートは、SteamOSの開発をより迅速に行えるようになるでしょう」と述べていました。
ValveはSteam Deckで全てのゲームを30fps以上でプレイできることを目標にしているとのことですが、これには多くのカスタマイズが必要です。SteamのゲームはインディーズゲームからAAA級のタイトルまで、数千のネイティブLinuxのゲームが含まれていますが、合計すると全体の20~25%にすぎません。
Arch Linuxでローリングリリースを採用するということは、より頻繁に不具合が発生するということでもあります。しかし、Ars Technicaによると、Arch Linuxでは不具合の発生とその修正がエコシステムの一部として織り込まれているとのことです。
ただし、ValveはWindows向けのゲームをLinux上でもプレイできるようにするために互換性レイヤーソフトウェア「Proton」を開発しています。これにより、Steamのゲームのうち、約70%が許容範囲内でプレイ可能になったとのこと。
SteamのゲームをLinuxでもプレイ可能にする互換レイヤー「Proton」のこれまでの功績とは? – GIGAZINE
Ars Technicaは「Valveの掲げる『全てのゲームを30fps以上でプレイできること』を提供するには、最新のソフトウェアの調整や継続的なリリースを行う必要があります。これがArch Linuxの強みです」と締めくくっています。
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