2019年末に発生して瞬く間に世界的な流行となった新型コロナウイルスの起源が、中国・湖北省の武漢市にある華南海鮮卸売市場が起源であるという研究結果を、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが発表しました。研究チームによると、新型コロナウイルスの少なくとも2つの株が、生きている動物の宿主から市場で働いているか買い物をしている人間に感染したとみられるそうです。
The Huanan Seafood Wholesale Market in Wuhan was the early epicenter of the COVID-19 pandemic
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abp8715
Coronavirus Jumped to Humans at Least Twice at Market in Wuhan, China
https://ucsdnews.ucsd.edu/pressrelease/coronavirus-jumped-to-humans-at-least-twice-at-market-in-wuhan-china
WHO(世界保健機関)が2020年3月に新型コロナウイルスのパンデミックを認定して以来、世界中で5億6000万件以上の新型コロナウイルス感染事例が確認されており、630万人以上が死亡しているとされています。カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部のジョエル・ヴェルトハイム准教授は「パンデミックがどのように始まるかを理解することで初めて将来的にパンデミックを防ぐことができるので、新型コロナウイルスの起源がどこにあるのかを可能な限り知ることが重要です」と語っています。
新型コロナウイルスが華南海鮮市場起源であるというところで専門家の意見はほぼ一致していましたが、研究チームはウイルスが人間以外の宿主から人間にどうやって感染したかについても特定するべきだとしています。
2020年に市場で採取されたサンプルや感染者のデータや位置を基に研究チームが分析した結果、初期の新型コロナウイルスはRNA配列の違いで2つの系統に区別されるとのこと。そのうちの1つの系統Bは市場で働いていた人や買い物をしていた人から、もう1つの系統Aは市場付近で感染した人から見つかったもので、系統Aが中国国内に広がったとみられています。
これまでは系統Aから系統B、あるいは系統Bから系統Aに進化した段階で動物から人間に感染するようになったと考えられていました。しかし、初めて人獣共通感染症となった新型コロナウイルスは2019年11月下旬に系統Bで発生した可能性がありますが、系統Aは最初の感染発生から数週間以内に発生した可能性があるとのこと。さらに研究チームがゲノムの進化速度を解読した結果、系統Aと系統Bは同時に華南海鮮市場で感染拡大していた可能性が高いと判明しました。
ヴェルトハイム准教授は「2つの株が同時に華南海鮮市場から発生したことが、新型コロナウイルスがパンデミック初期からゲノム多様性を見せていたことを説明できます。同時に、新型コロナウイルスが華南海鮮市場から数km離れたウイルス研究所から流出したという説も否定されます」と述べています。
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