不要になったペットボトルを使ってロケットが作れる。うまく作ると150メートルくらい飛ばす事が出来るらしい。シュパッと飛ばしてストレス解消!
ペットボトルロケットを自作し、バーベキューを楽しむ人たちで賑わう週末の多摩川に打ち上げに行って来た。
※2003年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。
前の記事:もしもコピーロボットがあったなら(デジタルリマスター)
> 個人サイト すみましん
ペットボトルロケットを作る
ペットボトルロケットは立派な趣味として成り立っていて、日本ペットボトルクラフト協会という団体もある。協会のホームページにはペットボトルロケットの作り方や競技大会情報も載っていてかなり本格的。
ペットボトルロケット製作キットの販売もしているので電話で問い合わせてみた。
「今度の週末にロケットを飛ばしたいんですが」
「そうですか、でしたら明日着でキットをお送りしますよ」
「初心者でもすぐ作れるものですか?」
「この前の講習会で小学校高学年の子供たちに教えたんですが、一番遅い子でも2時間で作りました」
小学校高学年の子供って意外と器用だし、こういう事に対して集中力もある。一緒に作り始めたらきっと僕の方が遅い。
それでも作らなくては飛ばせない。製作キットを2つお願いして電話を切った。
製作キット1式 3,000円
機体セット/発射台/発射口/リモコンキット/給水ホース/競技規則/制作マニュアル
キットが届くまでにスーパー4軒、コンビニ4軒を巡り不要となったペットボトルを譲ってもらうことに。ペットボトルロケット1つ作るのに空のペットボトル(1.5リットル)が5本必要との事。ロケット2台作りたいので、最低10本は必要だ。
回収していると、ペットボトルには色々な形状がある事を知る。四角いものから丸いもの、波打っているものから平らなもの。どのペットボトルがロケットに向いているのか、見当もつかないので片っ端からもらって来て、気付くと40本くらいたまっていた。
翌日、製作キットが届く。
ロケットに向いているのは丸型の炭酸飲料用のもの、と制作マニュアルに書いてあり回収したペットボトルを見直すとほとんどが角型だった。角型はお茶系で、炭酸飲料用の丸型はわずか12本、ロケット2台分ギリギリだ。
あれだけ集めて使えるのが12本……。空しさを押し殺し、ロケット製作に入る。
ペットボトルロケットは大きく3つの部分から出来ている。
ダミータンク、エンジンタンク、スカート。それぞれのパート毎に不要な部分を切り離し組み合わせる。スカート部分につける4本のハネを作るのが難しく時間がかかった。
1台作るのにかかった時間がおよそ2時間。やっぱり小学校高学年レベルだった。
そして苦労の末、2台のロケットが完成した。
・スシボンバー号(和式)
4本のハネにバランをあしらった逸品。福助と大トロのシールが雅の心を伝えている。
・ミスアメリカ/フルスロットル号(アメリカンスタイル)
上空でダミータンクとエンジンタンクが分離し、パラシュートで落下してくる仕組みになっている。
バーベキューな人たちを尻目に発射準備
ペットボトルロケットの打ち上げには広くて障害物のない場所が必要だ。
「打ち上げる方向に150メートル以上、幅60メートル以上、高さ30メートルの所までに送電線などの障害物がない、校庭、広い公園、グラウンドなど広い場所を確保してください。」(日本ペットボトルクラフト協会HPより)
出来のいいロケットだと150メートルは飛ぶ。バックスクリーン直撃のホームランくらいの軌道を描く訳だ。
打ち上げのスペースを確保するため、多摩川の河川敷にやって来た。
時折雨がちらつく空模様だというのに、バーベキューセットを持った人たちで賑わっている。雨を避ける様に、小田急線の高架下に陣地を張り肉を焼く。
住「雨なのに、バーベキューなんて……」
林「バーベキューとかでまめにお皿洗ったりする女の人、僕は苦手ですね」
住「何でですか?甲斐甲斐しくていいじゃないですか」
林「うーん、そもそも休日にバーベキューって発想自体ないですから」
住「ああ、それは確かにそうです」
住「肉が食べたいんなら、焼肉屋行けばいいのに」
林「本当ですよ、あの人たちなんて、ひとり一脚ずつ椅子用意してるし」
住「今すぐここで生活出来るくらいの装備ですね」
林「せっかくの週末に、わざわざ、ねえ……」
2人ともこれからペットボトルロケットを発射しようとしている事は棚に上げてバーベキューを批判している。
発射準備の前に、土手に座ってマクドナルドを食べていると、肉の焼ける匂いが風にのってやって来る。
林「なんだか続々とやって来ますね」
住「人が増えると危ないですかね」
林「肉に夢中になっているうちにやっちゃいましょう」
住「そうですね、今から1時間くらいが勝負ですね」
ロケットのエンジンタンクに400cc程度の水を注ぎ、発射台に設置する。
林「あっ、あそこ、バレーボール始めましたよ」
住「雨がやんで来たからみんなこっち側に出て来ましたね」
林「……」
住「あっ、駄目ですよ!!」
林さんがロケットの向きをバレーボールを楽しむ若者方面に向けた。
林「あっ、す、すみません。つい……」
バーベキューやバレーボールを楽しむ人たちに背を向けて、いよいよロケットを打ち上げる時がやって来た。
いよいよ発射
まずは空中で分離しないノーマルタイプの「スシボンバー号」を打ち上げることに。
自転車の空気入れでエンジンタンクに空気を入れる。
40回ホンピングするようマニュアルに書いてあり、これが結構な重労働。30回を越えたあたりからハンドルがキツくなり体重を乗せて空気を入れていく。
空気が入ったら、後はワイヤーで操作するリモコングリップのレバーを握る。するとストッパーがはずれロケットが勢い良く飛んでいく、はず。
僕の作ったロケットはちゃんと飛んでくれるのか?
[embedded content]
初めての打ち上げ
右方向にそれていき、それほど距離は出なかったが、それでもちゃんと飛んだ。
打球でいったらセカンドフライくらいか。
住「やったやったー」
林「凄ーい、飛びましたね」
2人とも童心に帰っていく。
住「じゃあ、今度は林さん飛ばします?」
林「いいですか?」
林さんがグリップを握り、発射準備オーライ。
すっかりバーベキューの人々の事を忘れ、ペットボトルロケットを楽しんでいる。
[embedded content]
林さんの打ち上げ
水の量と空気の量によって飛ぶ距離が変わってくるらしい。
林さんの打ち上げは僕の時よりも遠くに飛んでいて、センター前のクリーンヒットくらいは距離が出ている。
ケンタとユウタ
続いて空中で分離するパラシュートタイプ「ミスアメリカ/フルスロットル号」を打ち上げるが、中々うまく分離してくれない。
住「分離してくれませんねー」
林「うーん、難しいかなあ」
何回かトライしてみるが、やはりうまくいかない。
バーベキューグループから子供が2人やって来てロケットに興味を示す。
「おじちゃーん、僕たちにもやらせて」
ベッカムのユニフォームを着ている背番号7番がケンタくん9才で、赤いポロシャツを着ているのがケンタくんの従兄弟のユウタくん6才。ケンタくんはサッカーチームの副キャプテンで、ユウタくんは特に運動をしていない。
住「学校とかでやった事ないの?ペットボトルロケット?」
ケンタ「うちは私立だから、そういうのやんない」
僕も林さんも少しカチンっときたが、子供相手にムキになっても仕方ない。
グッとこらえ大人の対応を心掛ける。
2人の安全を見守りながらロケット発射を体験させてあげることにした。
[embedded content]
ケンタ、ユウタ、2人で発射。
住「やっぱりパラシュート開かないなあ」
林「うーん」
ケンタ「上のロケットと下のロケットがくっついている所を緩めればいいじゃん」
住「そんな事したらうまく飛ばないだろ」
ケンタ「一度やってみようよ」
ケンタの言う通りに結合部分をゆるめたらパラシュートが開いた。
住「凄いな、ケンタ」
ケンタ「まあね」
それからしばらくの間、ペットボトルロケットはケンタとユウタに独占されてしまう。
[embedded content]
ケンタ、ユウタ、2人の独壇場。
住「この子たちの親は何してるんですかね」
林「差し入れ持って来るとか、そういうのないですね」
住「本当ですよ、肉とかビールとか」
林「遊んでくれてありがとう、みたいな」
住「ちょっと、この子の親に向けて手紙書きますよ」
林「えっ?」
住「手紙書いて、ロケットの中に入れて飛ばしちゃいましょう」
ケンタの父へ
ケンタ君と楽しいひとときを過ごしております。ありがとうございます。
肉やビールの差し入れ等、お気遣いなさらないで下さい。
そろそろ雨が降ってきそうなので、僕たちは帰ります。
かしこ
[embedded content]
ケンタ、自分のお父さんへの手紙とはつゆ知らず、一生懸命空気を入れる。
雨宿り、カップラーメン、目玉焼き
再び雨が強くなる。
ロケット用具一式を片付け、川べりにある売店で雨宿りすることに。
店内は時が止まったかの様な緩やかな空気が流れていた。
ロケット打ち上げの疲れがドッと出る。
ケンタとユウタは親元にもどり、楽しそうに肉を食べている。
お店の中から見上げるロマンスカーが別世界の様に感じる。
林「子供の頃、公園とかでおかしな遊びしているおかしな大人っていたじゃないですか」
住「いましたねえ、そういう大人」
林「今日の僕たちが多分それですね」
住「うーん。でも、酔っぱらってなかっただけマシですかね」
林「そうですね」
翌日、林さんからメールが届いた。
昨日はおつかれさまでした。
見知らぬ子供と触れ合って、川べりの小屋で目玉焼きを食べる。
ほんとうにあった1日だったのか自信がありません。
確かに。
でも、僕の家には泥だらけになったロケットが2つあるし、きっと本当にあった1日なのだ。
ケンタとユウタが大きくなった時に、この夏の出来事を思い出してくれたらいいと思う。おかしな大人とロケットを飛ばしたな、と。