オープンソースを促進することを目的とする組織「Open Source Initiative」が、アメリカの連邦地方裁判所で「『オープンソースライセンスの下でライセンスされていないソフトウェア』がオープンソースであると主張することは虚偽の宣伝に当たる」という判決が下ったことを明らかにしました。
Case No. 5:18-cv-07182-EJD ORDER GRANTING PLAINTIFFS’MOTION FOR PARTIAL SUMMARY JUDGMENT; DENYING DEFENDANTS’ CROSS-MOTION FOR SUMMARY JUDGMENT
(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.cand.335295/gov.uscourts.cand.335295.118.0.pdf
Court affirms it’s false advertising to claim software is Open Source when it’s not | Open Source Initiative | Guaranteeing the ‘our’ in source…
https://opensource.org/court-affirms-its-false-advertising-to-claim-software-is-open-source-when-its-not
Court says non-open ‘open source’ code is false advertising • The Register
https://www.theregister.com/2022/03/17/court_open_source/
Open Source Initiativeによれば、今回の判決は、オープンソースのグラフデータベース「Neo4j Enterprise Edition」のフォークでGraph Foundationが開発するOpen Native Graph Database(ONgDB)が、「100%フリーでオープンソースなバージョン」と主張しないように命じたもの。また、同様にNeo4jのフォークを開発していたPureThinkやiGovも同様に、オープンソースを名乗らないように命じられました。
Neo4jはもともとGNU Affero General Public Licenseのバージョン3(AGPLv3)のライセンスでリリースされていましたが、あるバージョンからCommons Clause(共有条項)で追加制限を加えた独自のライセンスを採用していました。この新しいNeo4j EEライセンスは、ソフトウェアの非課金ユーザーがコードを再販したり、一部のサポートサービスを提供することを禁じており、Open Source Initiativeが定義するオープンソースには該当しません。
しかし、Graph Foundationは、Neo4jの「フリー&オープンソース版」としてONgDBをリリースしていました。そこで、2018年と2019年に、Neo4jとスウェーデンの子会社は、各企業に対して商標権と著作権の侵害を理由に賠償金の請求を訴えました。そして、Graph Foundationは2021年2月にNeo4jならびに子会社と和解し、ONgDBバージョン3.4、3.5、3.6のサポートを打ち切り、AGPLv3ライセンスのみだったNeo4j EEバージョン3.4.0.rc02のフォークとしてOngDBのバージョン1.0をリリースしました。
ところが、PureThinkとiGovは控訴したため、アメリカの第9巡回区控訴裁判所は、「ONgDBがNeo4j EEのフリー&オープンソース版であるという記述は虚偽広告である」という下級審の判決を支持しました。
判決では、「被告(Neo4j)はONgDBをAPGLバージョン3の下でライセンスされたNeo4j をEEの無料版と偽っていたため、この価格差(無料と有料)が顧客の購買意思決定に影響を与える可能性があったことは間違いない。したがって、裁判所は、顧客が『Neo4j EEの無料かつオープンソースの代替品』を入手できることを示唆した被告の発言は重要であったと判断する」と述べられています。
オープンソースの提唱者の1人であるブルース・ペレンズ氏は、The Registerへの電子メールで、「これは興味深いことで、裁判所は、『オープンソース』という用語が商標として登録されていないにもかかわらず、誤用されると詐欺になる可能性のある技術的主張として認めたのです」とコメントしています。
Open Source Initiativeは「このケースには、もう一つ興味深い点があります。AGPLには、受け手が共有条項のような『さらなる制限』を排除することを明確に許可する条項があるにもかかわらず、裁判所は被告がそれを行うことを否定したのです」と述べました。
ペレンズ氏は「AGPLに共有条項の削除を認める文言があったとしても、ライセンスは万能ではありません。ライセンスは、その条件を守らない者が著作権侵害者であるとみなすために限って有効なのです。そして、著作権者自身は、自分が所有する作品の侵害者になることはできず、他人の作品の侵害者になるだけなのです」と語りました。
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