赤ちゃんマウスの脳や網膜を調べる研究により、マウスは目が開く前から外界を視認する訓練をしている可能性があることが分かりました。この結果から研究者らは、「哺乳類が生まれてすぐ物を見たり目で追ったりできるのは、生まれる前から視覚が準備されているからではないか」と述べています。
Retinal waves prime visual motion detection by simulating future optic flow | Science
https://science.sciencemag.org/content/373/6553/eabd0830
Eyes wide shut: How newborn mammals dream the world they’re entering | YaleNews
https://news.yale.edu/2021/07/22/eyes-wide-shut-how-newborn-mammals-dream-world-theyre-entering
Mice Could Be ‘Dreaming’ About Moving in The World Even Before They Open Their Eyes
https://www.sciencealert.com/mammals-could-be-dreaming-about-the-world-even-before-they-open-their-eyes
生まれたばかりの哺乳類が、目を開けてすぐに周囲を視覚的に認識できる理由を調べるため、イェール大学のマイケル・クレア氏率いる研究チームは、生まれたばかりでまだ目が開いていないマウスの脳をスキャンする実験を行いました。
その結果、マウスが目を開けて前進している時と驚くほど似た網膜活動を示す脳波が確認されたとのこと。以下の動画を再生すると、研究チームが捉えた脳波を映像化したものを見ることができます。
Retinal Waves in Neonatal Mice – YouTube
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この動画は、マウスの頭上からスキャンしたものなので、上から下に流れるような脳波の動きは、マウスから見ると前から後ろに景色が進む動作、つまり前進と関連性が深いとのこと。
クレア氏は、「この夢を見ているのに似た活動は、赤ちゃんマウスの目が開いた後に経験することの予行演習となり、身の回りの環境に潜む脅威に即座に対応できるようにするため、進化という観点から見ると理にかなっています」と話しました。
今回観察された「目が開いた時の練習」の重要性を調べるため、研究チームはマウスの網膜にあるスターバースト・アマクリン細胞を調べました。スターバースト・アマクリン細胞とは、マウスの網膜にある細胞で、物体の動きを検知し、方向感覚に影響を与える役割を持っています。
研究チームが、毒素を用いて生後間もないマウスのスターバースト・アマクリン細胞の働きを阻害したところ、前進する時に見られるような脳波パターンが見られなくなってしまったとのこと。また、研究チームがマウスの網膜神経節細胞にガバジンと呼ばれる機能阻害剤を投与しても、同様の結果となりました。
両方の実験で、スターバースト・アマクリン細胞や網膜神経節細胞の働きが妨げられたマウスとは、目が開くようになってからも、動きを感知する能力や方向転換する能力が低下していたとのことです。
クレア氏は、今回の研究結果について「マウスの網膜に関する脳の回路は、生まれた時点で自己組織化されており、初期のトレーニングはすでに始められていました。これはつまり、目を開ける前から何を見るのか夢見ているようなものです」とコメントしています。
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