出版社らが違法な漫画サイトの対策へと動く ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2022/1/27~2/3】

INTERNET Watch

1. 出版社らが違法な漫画サイトの対策へと動く

 漫画雑誌などから、作品をサーバーへ違法にアップロードし、著作権者らの権利を侵害したとされる事件については多く報じられてきた。「漫画村」はその典型例で、2019年に犯人が逮捕され、2021年には有罪判決が下されたことにより、世の中にこうした行為が犯罪に問われることも周知され、沈静化するかとも思われた。また、これを契機に出版社の売上も好転したとも伝えられていた。しかし、まだまだ違法サイトが撲滅されたとはいえない。

 漫画作品のセリフなどを文字や画像で詳細に説明する、いわゆる「ネタバレサイト」を運営していたとされる法人とその法人代表者が著作権法違反の容疑で福岡地検に送致されたことが報じられている(ITmedia)。また、集英社はKADOKAWA、講談社、小学館とともに、世界的なCDN(コンテンツ配信ネットワーク)事業者であるクラウドフレア社に対して「海賊版コンテンツの公衆送信と複製の差し止めおよび、損害賠償を求める訴訟」を、東京地方裁判所に提起したと報じられている(CNET Japan)。記事によると被害額は「漫画の小売り額として推定した場合、2021年の1年間だけで1兆円を超える」という規模だ。

 クラウドフレア社は「対象サイトへの必要な措置を取ったと回答」したとされているが、「どのサイトに対してどのような措置を取ったのかについての具体的な説明はなく」、今回の提訴に至ったということだ。

ニュースソース

  • 集英社ら出版4社、クラウドフレアを提訴–合計で4億6000万円、海賊版コンテンツの損害賠償で[CNET Japan
  • ネタバレサイトの運営会社を書類送検 漫画のあらすじを無断配信[ITmedia

2. 日本でも音声メディアはブレイクするか?

 オーディオブック、ポッドキャストなどの音声メディアに関する動きが続けて報じられている。

 まず、アマゾンのオーディオブックサービスである「オーディブル」では、12万以上の作品を月額1500円で利用できる「定額聴き放題制」へ移行した(PC Watch)。

 また、オトバンクのオーディオブックサービスである「audiobook.jp」では、法人向けにビジネス書を中心とした1万冊以上を聴き放題で利用できるプランを開始した(Media Innovation)。audiobook.jpはサービス開始後、着実にユーザー数を増やし、2021年6月には登録会員数が200万人を突破したと発表してる。

 ポッドキャスト分野では、Spotifyが総額1億円を拠出して、国内の音声コンテンツクリエイターを支援する「クリエイター・サポート・プログラム」を拡充させると発表している(Impress Watch)。

 米国で音声メディアはこの数年で活況を呈していて、オーディオブックはテキスト型(リフロー型)電子書籍の市場規模に迫る勢いで市場を拡大している。日本では比較可能な市場規模調査があまりないのだが、さまざまな事業者がサービスを拡充し、出版社もコンテンツを用意するようになると、今後の市場拡大の可能性は高いとみられる。

ニュースソース

  • Amazonのオーディブル、月額1,500円で12万作品が聴き放題に[PC Watch
  • オトバンク「audiobook.jp」が法人版提供へ ・・・コロナ禍の社員教育需要に対応[Media Innovation
  • Spotify、音声クリエイター支援で1億円の投資 番組に100万円まで[Impress Watch

3. 10代~30代の過半数が歩きスマホ利用者

 NTTドコモのモバイル社会研究所が発表した「スマホ・ケータイのマナーに関する動向調査」によると、10代~30代の過半数の人が歩行中にスマートフォンを利用しているという(ITmedia)。道を歩きながら利用することは他の歩行者の迷惑になったり、交差点などでは交通事故の危険が増加したりするとも指摘されているが、残念ながらもはやこれは社会的に許容すべきライフスタイルになりつつあるということか。

 また、10代~20代では約9割がLINE通話を利用しているといい、携帯電話網の音声通話よりLINE通話を利用する人が方が多いという(ケータイWatch)。通話料金が安価となることもあるだろうが、むしろLINE上での人とのつながりから通話へのシームレスな操作性がポイントか。

ニュースソース

  • 10~30代の過半数が歩きスマホ利用者 ドコモの調査より[ITmedia
  • 10~20代ではLINE通話利用率は9割近くに――モバイル社会研究所調査[ケータイWatch

4. ヤフー、新経営執行体制を発表

 ヤフーは「Yahoo! JAPANは、4月6日から欧州経済領域(EEA)とイギリスから利用できなくなる」と発表をしている(Impress Watch)。その理由として、「今後の法令遵守対応コストなどの観点から、継続的なサービス利用環境を提供していくことが困難と判断した」ということだ(Yahoo!メール、Yahoo!カード、ebookjapanは今後も利用が可能)。

 ヤフーはインターネット黎明期から続く日本を代表するコンテンツとサービスであることは誰しも認めるところだ。このように、日本語のサービスとはいえ、国外に向けたサービス提供を縮小するという発表は他にあまり例を見ないように思うが、プライバシー保護の考え方など、国際間でのコンセンサスの相違などもから、訴訟リスクを考慮してこうした判断となったか。

 なお、ヤフーは4月1日から新経営執行体制へ移行することを発表し、代表取締役社長CEOとして現取締役専務執行役員COOの小澤隆生氏が就任するとしている(Impress Watch)。また、現CEOの川邊健太郎氏は持株会社のZホールディングス社長を継続するとしている。

ニュースソース

  • Yahoo! JAPAN、欧州から利用不可に。「法令遵守コストなどから継続困難」[Impress Watch
  • ヤフー社長交代。EC事業牽引の小澤隆生氏が就任[Impress Watch

5. 仮想空間をめぐる各社の取り組みがユニーク

 この1週間で報じられている各社の仮想空間に対する取り組みの動きをまとめておく。各社ごとにユニークなアイデアが盛り込まれている。

 まず、三越伊勢丹が2021年3月から運営する仮想都市空間「REV WORLDS(レヴ・ワールズ)」について紹介されている(CNET Japan)。これは「(スマートフォンの)アプリを起動すると3D CGによる仮想都市に降り立ち、アバターを操って街の中を歩き回れる。仮想空間内には『仮想伊勢丹新宿店』などの店舗が存在し、店内で陳列されているさまざまな商品をチェックしたり、そこからECサイトへジャンプして実際に買い物したりできる」というもの。

 次に、コインチェックはイーサリアムのブロックチェーン技術を基盤としたゲームプラットフォーム「The Sandbox」で、「メタバース空間上の土地(LAND)に2035年の近未来都市『Oasis TOKYO』を制作するプロジェクト」を開始したと発表している(CNET Japan)。

 また、ロックガレッジは茨城西南広域消防本部と、ドローンとAI、スマートグラスを融合させた捜索活動支援システム「3rd-EYE」(サードアイ)による訓練形式の人命救助実証試験を実施したことを発表している(TechCrunch日本版)。

 最後に、NTTドコモは愛・地球博記念公園と臨海副都心エリアで「車室内での『新しい移動体験』の実装をめざし、5G・XR・AI技術を活用したエンターテインメントコンテンツやオンラインツアーが楽しめる実証実験」を行う(ニュースリリース)。XRの分野としては、「e-Palette」内において、「バーチャルアイドルによる未来感あふれるXRライブ」を実施し、3D音響や座席の振動などで、より臨場感のある車室空間における移動体験を実現するとしている。

ニュースソース

  • アパレル業界も「メタバース」へ–三越伊勢丹の仮想空間から見えてくるファッションの未来[CNET Japan
  • コインチェック、The Sandboxとメタバース上で都市開発を開始へ[CNET Japan
  • ドローン・AI・スマートグラスを融合させた捜索活動支援システム3rd-EYE、茨城西南広域消防本部と連携し実証実験[TechCrunch日本版
  • 「新しい移動体験」をめざした 5G・XR・AI 技術を活用したコンテンツ配信の実証実験を開始[ニュースリリース

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