「18歳以下の子供に10万円を給付する」
耳障りのいい政治家の言葉だが、この10万円の財源は借金であり、借金を返すのは皮肉にも子供世代だ。18歳以下の子供のいる年収960万円以下の世帯に年内に現金5万円、残り5万円を来春までにクーポンで支給する方針だが、昨年の国民一律10万円給付も大半が貯蓄にまわされた。
先日話した地銀頭取も、国民の貯蓄が7%も増えたのは、はじめての経験で異様だと言っていた。今回、貯蓄を防ぐ反省があるならば、クーポンのみにすべきだし、クーポン支給を「来春」としたのは、来夏の参院選対策にもみえる。
この18歳以下10万円をはじめ、今回の経済対策30兆円の費用対効果に注目すべきだ。会計検査院の指摘だと前回の予算が22兆円まだ未執行だ。それなのに、次の予算が必要という議論は、1円でも大切に使おうという姿勢を全く感じられない。国の借金を大きく増やすときには、それをどう返済するかもセットで議論すべきだ。
東日本大震災の時は「復興税」を導入した。今回も「コロナ税」の議論があってしかるべきだが、「国民ウケの悪い」増税の話はいっさいしない。そうなると返済計画のない借金だけが増える。民間企業の経営ではありえないことだ。国の金庫番である財務省の事務次官が、財政破綻すると決死の警告をしていることをもう一度認識すべきだ。
一方で、コロナで深刻な影響を受けた生活困窮者は救うべきだ。しかし「本当に必要とする人」を政府は把握できていない。そのためにもマイナンバーカードで資産や収入を把握できる法律をきちんと整備すべきだ。
こうした中でも新型コロナの「第6波」の懸念はぬぐえない。ニッポン放送の番組で ドイツ・ブッホム大永代教授で心臓外科の権威である南和友医師と電話で対談した。「第6波」について問うと、南さんは欧州の感染再拡大の現状や変異株に触れ、「必ず第6波は来る。第5波どころでない」と警鐘を鳴らした。ワクチンについても「中和抗体の量も下がってくるので、自己免疫を保つことも重要」とアドバイスされた。
何よりも課題は、「私立病院が80%を占める中で、国が主導してコロナ専用病院をつくるべき」と語っていた。これまでの受け入れ病床確保に対する補助金についても、一部でコロナバブルがおきており、費用対効果の検証を説いていた。日本の医療界にしがらみのない南医師は、なかでも大学病院への補助金が巨額でかつ費用対効果を生んでいないと指摘していた。
外食は「午後9時以降」や「宴会」の文化が戻りきらない。しかし、ワタミでは「ワクチン2回接種でドリンク一杯無料」のキャンペーンが今月に入り大好評で累計2万5000杯を超えた。年内10万杯を目標にする。一杯無料にすること以上に費用対効果がある。とにかく、政治家に言いたいのはこの「費用対効果」の5文字だ。
【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より