さまざまながんのリスク。男性の1/3がHPVを保持しているという最新研究結果

女性だけじゃない。陰茎がんの約60%はHPVウイルスが原因。

最新の研究結果によると、世界中の多くの男性がヒトパピローマウイルス(HPV)を保有していることが明らかになりました。

現在、約3人に1人の男性が最低1種類の性器HPVを保有していて、5人に1人の男性が男性・女性の両方に特定のがんのリスクが高いHPVを保有しているとのこと。

こういった悪い種類のHPVの多くは、ワクチンで予防が可能です。

HPVってどんなウイルス?

HPVは世界で最も一般的な性感染症ウイルスとされていて、ほとんどの人が一生のどこかで感染するものです。

ほとんどのHPV感染症には症状がなく、通常は数年以内に自然排出されます。

しかし、現在200種類以上のHPVが存在し、一部の種類は性器イボなどの症状を引き起こす可能性があります。

HPVからのイボは危険なものではなく、一般的にはしばらくすると消失しますが、見た目が悪く痛みを伴うこともあります。

HPVには急性疾患を引き起こすことはなくても、さまざまながんのリスクを高めるものもあります(感染後、体内に長期間残るのが原因とされています)。

男女共にがんの原因となるHPV

HPVは女性の子宮頸がんのおもな原因として知られていて、子宮頸がんのほとんどはHPVによるものと考えられています。

しかし、高リスクHPV株は、男性の陰茎がん、男女の両方における肛門、喉、口腔がんとも強く関連しています。

高リスクHPVを持つほとんどの人は、こういったがんを発症することはないのですが、それでもほとんどはHPVが原因なのです。例えば陰茎がんの約60%は、そして喉がんの70%が高リスクHPVと関連しています。

男性のHPVにスポットを当てた研究

子宮頸がんとHPVの関連性には以前より焦点が当てられ、女性のHPVについては多くの研究が行なわれてきました。

しかし、先月「The Lancet Global Health」誌で発表された新しい研究では、男性のHPVはあまり注目されていないと指摘しています。この研究の著者には、世界保健機関(WHO)の科学者やアメリカとスペインの公衆衛生機関の研究者が含まれており、この問題についてエビデンスの見直しが決定されています。

今回の研究では、過去30年間に35カ国で行なわれた15歳以上の男性を対象とした65の研究を分析されています。研究チームは、総合的に見て男性の世界的なHPV有病率が31%であると推定しています。

高リスクなHPVのタイプの有病率は21%でした。HPV感染のリスクは、20代後半から30代前半の若い男性で最も高いとのこと。また、HPVの有病率は、ヨーロッパとアメリカに住む男性については同じくらいでしたが、東アジアと東南アジアの有病率はほぼ半分とかなり低いこともわかっています。

研究チームは「我々の研究結果は、15歳以上の男性におけるHPVの普及が高いことを示し、性的に活発な男性は年齢に関係なく、HPVの性器感染の保菌者であることがわかっています」と述べています。

ワクチンで防げるがん発症

大人になる過程でHPVに感染することは避けられないことかもしれませんが、現在では最悪の事態を免れるための効果的な子ども向けワクチンがあります。

HPVワクチンは、がんや性器イボに最も関連する種類を含む最大9種類のHPVを予防できます。さらに、ワクチン接種が若い女性の子宮頸がんのリスクをすでに劇的に減少させているエビデンスもあります。

多くの専門家は、HPVワクチンが多く推奨され受け入れられた場合、現在の私たちの世代で子宮頸がんを根絶できる可能性があると考えているそうです。

多くの国では、若い男子や10代の若者にもHPVワクチン接種を推奨しています。そして今回の研究結果を考慮すると、ワクチン接種はどんな人にも役立つ可能性が高いと研究チームは指摘しています。

アメリカでは11歳から12歳の子どもを対象にHPVワクチンの2回の接種が推奨されていますが、早くて9歳からでも接種できます。一部の国では、1回のみの接種で持続的な効果があるかを検証しています。

研究チームは「この推定値は男性も包括的なHPV予防戦略に組み込む重要性を強調し、男性のHPV関連の罹患率と死亡率を減少させ、最終的に子宮頸がんおよび他のHPV関連疾患の撲滅を達成するために不可欠であることを示しています」と述べています。

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