バイデン氏は中国政策を見直すのか?

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サミットの終盤にふと気になる発言を耳にしたのですが、お気づきになった方はいましたか?バイデン氏の「中国との対話という意味では、非常に近いうちに雪解けがあるだろう」(ロイター)という発言です。雪解けという言葉が唐突感で出てきた背景が何なのか、G7でそういわせる何かがあったのか、気になるのです。

アメリカは中国を敵対視し、日本も共同歩調を取ります。アメリカの対中政策に中国外務省は厳しい言葉で罵り、対抗心をむき出しにします。一方、欧州と中国の温度はかなり違います。この20年程度の歴史を見ても中国をビジネスの相手と見ています。その違いは同じユーラシア大陸に乗っかった「同床」であり、時として「異夢」になったり、歩調を合わせたりする関係でしょうか。

最近ではドイツが22年11月にショルツ首相以下、訪問団が訪れていますし、フランス、マクロン大統領は4月に訪問団と共に中国で厚遇を受け、エアバス160機を中国から受注しています。対ロシアはもちろんですし、ウクライナも先日、習氏と電話協議をし、和平調停に向けて中国の特別代表がゼレンスキー氏他と会合を持っています。

一方のカナダは中国との関係悪化が進んでおり、ある意味、アメリカよりたちが悪い状況にあります。なぜなら中国はアメリカや日本は影響力があるため、そう邪険にできないのですが、カナダは地政学的に気を遣わねばならない相手ではない、という姿勢が習近平氏からはアリアリと見て取れるのです。

G7で会談されたであろう対中国の問題は欧州4カ国と北米2プラス日本という支配構成なので単純には欧州の声の方が大きくなります。そこで私が考えたのは、対ロシア政策に於いて中国と西側諸国がより敵対関係に陥るより中国と一定の対話を維持するオプションもあるのではないか、と議論されたと想像しているのです。

今のロシアは形勢不利で行き詰まりを感じないわけにはいきません。国内がバラバラになり、プーチン氏の求心力はなくなりつつあります。かつてはプーチン氏は怖い権力者でしたが、今ではプリゴジン氏など明白な反対の声すら抑えられなくなっています。ならばロシアに今、味方するのは正直不利だとみている国家は多いでしょう。

では中国です。私は中国人ビジネスは逞しいと思うのです。政治的にはロシアの蛮行には支持を示さず、和平、調停案を提示する一方、ロシアの急速な物資不足に対し猛烈な物品の輸出を行っているのです。中国の対ロシア向け輸出は3月が前年同月比136%増、4月は153%増と爆増しているのを見てもお分かりいただけると思います。

このブログをお読みの方には中国に厳しい声の方が多いのですが、私は感情を入れず、自分なりに客観的、冷静に見ようと努めて中立的に意見を述べているつもりです。「あいつは中国びいき」だとか「最近、感化されていないか」といった趣旨のコメントも散見できますが、このスタンスは何十年も変わっていません。

私が以前から見ている中国は二重構造の国家であるという点です。共産党支配の国家という色があまりにも強烈なのですが、一方で、中国人はビジネスに長けているという点が過小評価されている気がするのです。政治家の言うことは時と場合によりブレます。が、国民性はそう変わらないものです。中国は残念ながら国民性と政治が一致していないため、政治が国民性を制御した形になっています。が、二重構造のベクトルが一致して、その力を発揮する時は非常に強くなるだろうという点は私が長年思ってきていることです。

バイデン氏の「雪解け」が何を意味しているのか、ロイターはトップ会談ではないか、と指摘しています。日経は駐米中国大使が着任することではないか、と報じています。私はロイターの考えに同調しますが日経の論じる意味ももちろんあります。つまりコミュニケーションです。

アメリカと中国が水掛け論争をしている場合ではない、発展的交渉をすべきではないか、とG7メンバーのみならず、インドやブラジル、インドネシアなどの国家元首あたりから広島で意見が出たとすればバイデン氏は自らが中国のしかるべき人との対話をせざるを得ないのでしょう。

バイデン氏にとって対中国政策は次期大統領選では重要な課題となるでしょう。アメリカ国内では対中国強硬派が多いとされる中で、中国との上手な関係を模索するか、より強固な敵対関係を維持するか、であります。もちろん、これは中国の出方、姿勢次第でもあり、アメリカの世論次第でもあります。台湾政策はその一例であります。個人的には中国は台湾を今しばらく刺激をせず、24年1月の台湾総統選の結果次第にするのではないか、とみています。

2022年11月14日習近平国家主席とバイデン大統領 中国共产党新闻网より

その間にロシアの行方が混迷を深めるならばロシアと長い国境がある中国にとって経済的にも政治的にも極めて大きなチャンスがあるわけで今、無理して台湾に注力することはない、と習近平氏が政策変更する可能性もあるでしょう。

ボトムラインは中国が悪さをしなければアメリカは本当に緩やかな雪解け政策をするかもしれません。万が一、そうなっても、日本は「はい、そうですか」とは言いにくいのです。その理由は上記にヒントがあります。そう、中国人ビジネスは逞しいのです。よって日本は中国と経済的にライバル関係故に米中のような政治的割り切り感がでない、だから日本の保守系には中国に距離感を置く人が多いのだ、ということではないかと思います。それをいえば日韓関係もそうなのかもしれません。

この辺りが逆に日本を惑わす気もしないでもありません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月24日の記事より転載させていただきました。

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