バッファロー「WXR-11000XE12」、Wi-Fi 6E 12ストリームに10Gbps×2のフルスペックで登場した最上位モデルの実力を試す【イニシャルB】

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バッファロー Wi-Fi 6Eルーター「WXR-11000XE12」

 かねてから予告されていたバッファローのWi-Fi 6E対応フラッグシップモデル「WXR-11000XE12」が登場した。Wi-Fi 6E、トライバンド、12ストリーム、WAN/LAN10Gbpsと、現状最高峰のスペックを備えた「フルスペック」モデルだ。その実力を検証してみた。

頂上決戦

 バッファローから新たに登場した「WXR-11000EX12」は、2023年時点でWi-Fiルーターが目指すべきゴールの1つだと言っていいだろう。

 価格もスペックも別次元のネットギア「Orbi 9」を除けば、現状、ハイエンドに位置する製品は、同じ国内メーカーのライバルとなるNECプラットフォームズの「Aterm WX11000T12」と、この製品となる。

 WXR-11000EX12もAterm WX11000T12も、Wi-Fi 6E対応で2.4/5/6GHzのトライバンド、4ストリーム×3の12ストリーム、WAN/LANともに10Gbpsの有線と、スペック的には同等で、いわば、両者の頂上決戦といった状況だ。目立った違いとしてはアンテナ外付けのWXR-11000EX12か、内蔵のAterm WX11000T12か……といったところで、今後の両製品の売れ行きも注目される。

 それにしても、市場ではWi-Fi 7の動向も見えてきているだけに、Wi-Fi 6Eのフラッグシップモデルが今登場することに疑問を持つユーザーも少なくないかもしれない。

 2022年9月に6GHz帯が解放されて以降、しばらくの間、PCやスマートフォンなど、6GHz帯につながる機器が存在しない状況だったが、現状はVAIOやNEC PCのPC、IntelのWi-Fiアダプターなど、Wi-Fi 6E対応を可能にする動きが進んできた。

 バッファローとしては、今こそがユーザーが実際に6GHz帯を試せる環境が整った状況だと判断し、Wi-Fiの最高性能を求めるユーザーに対して、満を持して妥協のないスペックの製品を用意したのだろう。

 おそらくWi-Fi 7対応のWi-Fiルーターが登場したとしても、PCやスマートフォンが対応し、誰もが使える状況が整うまでには、同様に長い期間がかかると予想される。そうした状況を考えると、今、実際に6GHz帯を堪能できる本製品を選ぶメリットは十二分にある。

存在感ある筐体に12ストリーム、10Gbpsの最上級スペック

 それでは、実機を見ていこう。

 デザインは、既存のWi-Fi 6対応ルーター「WXR-6000AX12」を踏襲。ブラックを基調に赤やゴールドのアクセントをあしらった、ハイエンドモデルらしい存在感のあるものとなっている。

正面

側面

背面

 先行して発売されたWi-Fi 6E対応ルーター「WNR-5400XE6」は、ホワイト基調のシンプルなデザインだったが、本製品は、いかにも実用性を重視した機能優先のデザインとなっている。

 最大の特徴は、本体に装着された4本のアンテナだろう。アンテナに関しては、国内メーカーはひそかにしのぎを削って研究開発を進めている分野で、各メーカーともに特徴があるのだが、本製品は4本に見えて、実際には内部に複数の帯域に対応したアンテナを内蔵する独自の構造となっている。

 各アンテナは、上下に2分割された構造になっており、付け根側が6GHz帯用、先端側が2.4/5GHz帯用と内部で分割されている。これにより、全ての帯域で高い電波性能を発揮することが可能だ。外付けのおかげで、設置場所や建物の構造などに応じて、任意の方向に電波が届きやすく調整できるのがメリットとなる。

2分割されたアンテナ

 スペックは、下記の通りだ。

 6GHz帯を利用可能なWi-Fi 6E対応で、2.4GHz/5GHz/6GHz帯を同時に扱えるトライバンド対応となっている点は従来モデルと変わらない。そして本製品では、各周波数帯のストリーム数(MIMOによる多重化できる通信の数)が、2.4GHz帯で4本(1147Mbps)、5GHz帯で4本(4803Mbps)、6GHz帯で4本(4803Mbps)と、合計12ストリームに対応している。

 各帯域で2ストリーム対応(5GHz/6GHzは2402Mbps)のPCやスマートフォンなどを2系統分処理できる帯域を備えているため、たくさんの機器を同時に接続しても、高い性能を維持できるのが特徴だ。

 有線LANも充実している。10Gbps対応のポートがWAN側とLAN側にそれぞれ1つずつ用意され、10Gbpsのインターネット接続サービスを利用しつつ、さらに10Gbpsで自宅内のNASやゲーミングPCを接続できる。

WAN/LANともに10Gbps対応

WXR-11000XE12
実勢価格 4万9980円
CPU クアッドコア 2.6GHz
メモリ
Wi-Fiチップ(5GHz)
対応規格 IEEE 802.11b/g/a/n/ac/ax
バンド数 3
160MHz対応
最大速度(2.4GHz) 1147Mbps
最大速度(5GHz) 4803Mbps
最大速度(6GHz) 4803Mbps
チャネル(2.4GHz) 1-13ch
チャネル(5GHz) W52/W53/W56
チャネル(6GHz) 191-283ch(1-93ch)
ストリーム数(2.4GHz) 4
ストリーム数(5GHz) 4
ストリーム数(6GHz) 4
アンテナ 外付け4本(8本)
WPA3
メッシュ Wi-Fi EasyMesh
IPv6(DS-Lite)
IPv6(MAP-E)
WAN 10Gbps×1
LAN 10Gbps×1+1Gbps×3
LAN(LAG)
USB USB 3.2 Gen1×1
セキュリティ ネット脅威ブロッカー2
USBディスク共有
VPNサーバー
動作モード RT/AP/BR
ファーム自動更新
LEDコントロール
本体サイズ(mm) 300×195×75

Wi-Fi EasyMeshで6GHz帯をバックホールに利用可能

 本製品はメッシュ技術にも対応しており、Wi-Fi Allianceが策定したWi-Fi EasyMeshによって簡単にメッシュを構成できる。

 現状は正式にEasyMeshに対応した製品が限られることや、メーカー間での細かな仕様の違いがあることにより、事実上はバッファロー製品のみでの相互接続となるが、アクセスポイント同士を有線ケーブルでつないで電源を入れるだけで、自動的にメッシュの構成が可能になっている。広い家の中など、中継機やメッシュを使いたい環境に適しているだろう。

 しかも、本製品ではEasyMeshによるメッシュ構成時に、6GHz帯をバックホールとして選択可能になっている。

 バックホールというのは、メッシュの親機と子機(バッファローでは親機を「コントローラー」、子機を「エージェント」と呼んでいる)の間を結ぶ大元の中継路のことだ。多くの通信が流れ込む幹線道路のようなもので、ここに、空いていてほかのユーザーからの干渉を受けにくい6GHz帯を利用できることで、高速で安定したメッシュ環境を構築できる。

EasyMesh構成時に、自動的にバックホールが6GHz帯で構成される

 かなり贅沢な構成となるが、本製品を2台利用すれば、4803Mbpsの6GHz帯をフルにバックホールに活用することもできる。

 EasyMeshによって手軽にメッシュを構成できるだけでなく、6GHz帯をバックホールに利用した高速なメッシュ環境が使えるのも本製品の魅力だろう。

窓際で際立つ6GHz帯の性能

 気になるパフォーマンスだが、6GHz帯の特性がうまく出た結果となった。以下は木造3階建ての筆者宅にて、1階にWXR-11000XE12を設置し、各階でiPerf3による速度を計測した結果となる。

iPerf3テスト結果
1F 2F 3F入り口 3F窓際
5GHz帯 上り 1290Mbps 900Mbps 422Mbps 283Mbps
下り 1590Mbps 1120Mbps 620Mbps 398Mbps
6GHz帯 上り 1450Mbps 1070Mbps 426Mbps 415Mbps
下り 1580Mbps 1230Mbps 505Mbps 472Mbps

※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro

 10Gbpsの有線のおかげで、1階の近距離では1Gbpsオーバーをしっかりと実現できているのはもちろんだが、床を1枚隔てた2階でも1Gbpsオーバーを実現できている。なかなか優秀な性能だ。

 興味深いのは3階の結果だ。3階は、入口(家の中心の階段付近)と窓際(もっとも遠い場所)で計測しているのだが、3階入り口の場合は5GHz帯の方が性能が高く、3階窓際は反対に6GHz帯の方が性能が高い結果になった。

 おそらく3階窓際は、窓際という外部からの干渉を受けやすい場所のおかげで、近隣で利用されている同じ5GHz帯の干渉を受けている可能性がある。一方で、6GHz帯は、そもそも近隣に6GHz帯を利用するアクセスポイントが存在しないおかげで、遠くても干渉を避けた高速な通信ができていると考えられる。

 現状、Wi-Fi 6Eを利用するメリットは、まさにここにある。周囲に増えてきた5GHz帯のアクセスポイントとの干渉を避け、高速な通信経路を事実上自分だけで独占できるのは痛快だ。

複数の端末との通信でトライバンドの威力を堪能する

 Wi-Fi 6E対応機のメリットは、2.4/5/6GHzの3つの帯域を同時に扱えるトライバンド対応という点だ。同社のこれまでのフラッグシップモデルだった、Wi-Fi 6対応の「WXR-6000AX12P」との最大の違いは、ここにあると言ってもいい。

 そこで、5GHz帯と6GHz帯を使い分けたときの性能もチェックしてみた。下図のような状況で、片方のPCで5GHz帯を使って上りと下りで通信している最中に、もう1台のPCで5/6GHz帯を使った通信を行い、iPerf3によるテストを実施した。

テストの状況

テスト1(5GHz+5GHz) テスト2(5GHz+6GHz)
上り 583Mbps 1460Mbps
下り 686Mbps 1630Mbps

※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro

 テスト1の場合、2台のPCで同じ5GHz帯を共用するため、帯域は単純に半分になってしまう。デュアルバンド対応のWi-Fiルーターを家族で共有している場合は、このように速度が同時接続の台数で分割される計算になる。

 一方、5GHz帯と6GHz帯を分けて使用した場合、5GHz帯の利用状況は6GHz帯に影響しないため(厳密には内部の処理や有線で分割されるが、本製品は性能に余裕があるため影響ない)、6GHz帯を使ってフルスピードで通信できる。

 このように、トライバンド対応機を利用することで、速度が要求されない端末は5GHz帯に詰め込み、ゲーミングPCなど絶対に邪魔されたたくないPCは6GHz帯を占有するといったように、用途や端末ごとに帯域を使い分けることができるわけだ。

これは贅沢! 2台のWXR-11000EX12でメッシュを構成する

 最後に、もうひとつテストしてみた。下図のように、WXR-11000EX12を2台使用し、EasyMeshを構成した上で、PCを10Gbpsの有線で接続してiPerf3を実行した。

テスト構成図

  このテストは10Gbps NICを搭載したデスクトップPCを持ち運ぶ必要があるため、かなり手間がかかってしまう。申し訳ないが、1階と3階の2カ所のみでの計測とした。

 結果は、同一フロアで2.89Gbps(下り)と、3Gbpsが視野に入る速度が実現できた。実に2.5Gbpsの有線LANよりも速い結果だ。

 同様に3階での結果も有線LAN(1Gbps)越えで、下りが1.29Gbpsとなった。間が無線でつながっているとは思えない速度だと言える。

 パフォーマンス的には、どのテスト結果を見ても申し分ない。

1F 3F入り口
WXR-11000EX12 上り 2780Mbps 934Mbps
下り 2890Mbps 1290Mbps

※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro

上記テストの1階でクライアント側からインターネット上のスピードテストを実行した結果(auひかり回線使用)。間が無線とは思えない速度が出ている

普通にいい選択

 以上、新しくバッファローから登場したWi-Fi 6E対応のフラッグシップモデル「WXR-11000XE12」を実際に検証した。

 スペック的には、現状のコンシューマー向け製品の最高峰を実現する製品で、性能的にも6GHz帯のメリットを享受しながら、高速な通信を実現できる隙のない製品だ。

 今回はあまり触れなかったが、設定も相変わらず簡単で、既存のルーターからSSIDやパスワードなどの設定を引き継ぐ引っ越し機能があるのも心強い。また、ファームウェアアップデートでの後日対応になるが、高度なセキュリティ機能「ネット脅威ブロッカー2」を利用できるメリットもある。

 全体的に不足する機能のない「普通にいい製品」となっているので、Wi-Fi 6Eや6GHzという点に特にこだわらず、高性能で使いやすい製品という観点で選んでも損はないだろう。

 欠点を挙げるとすれば、価格とサイズだろうか。価格は、コストを考えれば十分に頑張っていると言えるレベルだが、それでも通信機器に4万円オーバーは、なかなか投資しにくい。もちろん、性能に妥協したら意味がないが、やはり、もう少し安く、小さいと、実際に買う側としてはありがたい印象だ。

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