ファッションブランドにとって、ブランド品の再販はもはや当然のものとなりつつある。したがって顧客が価格帯の異なるブランドから古着を購入することは、かつてないほど容易になっている。だが、2023年のショップトーク(Shoptalk)でブランドと再販業者が議論した話題は、あまりシームレスとはいえない分野である再販プロセスをどのように改善するかというものだった。
5年前とくらべて圧倒的に増加したリセール
50以上のブランドのために再販プログラムをローンチしている会社、リキュレート(Recurate)の共同創業者でCEOのアダム・シーゲル氏は、「一般的に、再販の購入にくらべて販売側の体験に関するイノベーションは比較的少ない」と述べている。「サードパーティの再販では、委託販売は長いプロセスになることがある。また、ピアツーピアの販売では、商品の情報をすべて入力するのに手間取るため、データの質が悪い」。
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これに対し、新世代のブランド再販プログラムは、販売プロセスをより迅速にしようとしているとシーゲル氏は言う。ブランドには、誰が何を購入したかを把握し、販売された製品に関する直接的なデータを所有できるという利点がある。シーゲル氏はリキュレートのクライアントの一社であるZARA(ザラ)を例に挙げた。ZARAでは、顧客が販売したい製品のバーコードをスキャンするだけで済むようにしている。そうすることで、その製品が何であるかだけでなく、最初に販売された時期も自動的にブランドに伝わるようになっている。
ベインキャピタルベンチャーズ(Bain Capital Ventures)のパートナーであるスコット・フレンド氏は、引き続き再販の成長の大きな要因となるのは、ブランドが製品の動きをよりうまく把握できるようになることだと述べている。
「5年前とくらべて再販が圧倒的に増えている」とフレンド氏は言う。「再販の背後に大きな追い風が吹いている。理由としては、消費者の趣味や嗜好もあるが、技術的なこともある。物を追跡するために、アイテムの摂理がこれまで以上に簡単になった。ビジネスモデルも実証済みだし、単にESG関連だけではない。また、フルプライスでの販売も促進されている」。
データ活用で再販のマーチャンダイジングを最適化
そのデータのもうひとつの使い道は、ブランドが需要があるとわかっている種類の商品を取り込むことだ。再販の長年の課題は、消費者がどのような商品を持ち込んで販売するかに在庫が左右されるため、どの製品が入手できるのかを正確に管理できないことである。
ブランドリセール会社アーカイブ(Archive)の共同創業者でCEOのエミリー・ギッティンズ氏は、多くのブランドパートナーは、誰が何を購入したかというデータを活用して、特定の製品を再販のエコシステムに取り込んでいると話す。たとえばアーカイブは先週、ウラ・ジョンソン(Ulla Johnson)の再販プログラムをローンチし、同時に同ブランド向けの特別機能であるハーツデザイア(Heart’s Desire)を実現した。ウラ・ジョンソンの顧客は、新品ではもう販売されていない特定の製品をリクエストすることができる。すると同ブランドでは、そのアイテムを購入した顧客にメールで売りたいかどうかを尋ね、すぐに需要があることを知らせるのだ。
「ブランドにとって再販での大きなメリットのひとつは、過去に何が購入されたかを把握していることだ」とギッティンズ氏は言う。「ブランドの再販のマーチャンダイジング(を最適化すること)は、現在、私たちが取り組んでいる主要なことのひとつだ。(ブランドは)セレクションをキュレートする方法を見つけない限り、どんな製品があるか正確にはわからない」。
あえて再販に参入しないブランドも
昨年は、あらゆるブランドが再販プログラムをローンチするか、あるいはその計画を明らかにしているように思えた。クリスチャン・シリアーノ氏は3月初めにGlossyに対し、自身のブランドでこの機会にどう取り組むか考えていると語っている。
9月の試算では、世界のアパレル再販市場は1800億ドル(約23.6兆円)以上とされている。だが、その成長にもかかわらず、ショップトークでは、自社の将来に再販があるとは考えられないとGlossyに語ったエグゼクティブが数名いた。
ヴェリショップ(Verishop)のCEOであるイムラン・カーン氏は、「絶対とは言わないが、再販はいまかなり飽和状態だ」と述べた。「プレーヤーがあまりにも多すぎて、現時点では世界がほかの参入を必要としているかどうかわからない。再販を望んでいるZ世代のオーディエンスは、現在すでに非常によいサービスを受けているため、あえて我々がここで再販に参入する必要はない」。
[原文:Buying resale is easier than ever, but brands see challenges on the selling side]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)