直下で作物を育てたソーラーパネルは寿命が延びる

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by UC Davis College of Engineering

ソーラーパネルを利用した太陽光発電を行うためには、周囲の木々を伐採し、なるべく多くの光をソーラーパネルに集めなければなりません。しかし、そうした行為が環境に負荷を与えることが懸念されているのも事実。このようなデメリットを改善する可能性のある「ソーラーパネルの下で作物を育てる」という代替案が考案されています。調査を行った研究者は、「環境だけでなく、ソーラーパネルにとってもメリットがある」と報告しました。

The potential for agrivoltaics to enhance solar farm cooling – ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.apenergy.2022.120478

Growing crops under solar panels increases the life of the solar panel
https://www.fastcompany.com/90861486/agrivoltaics-crops-under-solar-panels-good-for-panels

ソーラーパネルを設置すると、その土地のすべてをソーラーパネルに奪われてしまうことにつながり、土地活用や環境負荷の面でデメリットになることがあります。ソーラーパネル開発や農業システムに携わる人々は、太陽光発電と農業を並立させる「アグリボルタイクス」という手法を考案しており、エネルギーと農作物の生産を同時に行うという試みを続けています。

by UC Davis College of Engineering

コーネル大学で機械工学を教えるマックス・チャン教授らは、アグリボルタイクスがもたらすさまざまなメリットを検証し、特にソーラーパネル周辺の温度データに注目しました。チャン氏らが大豆作物の4メートル上に設置されたソーラーパネルの表面温度を調べたところ、何もない土の50cm上に設置されたソーラーパネルと比較して、最大10度も温度が低下していることが判明したとのこと。

気温が下がる理由はいくつか考えられるとのことで、一つは作物や土壌から水が空気中に蒸発する「蒸発散」が発生するというものでした。チャン氏らによると、ソーラーパネルの下で育てられた作物から水が蒸発することで、周囲の温度が下がることがあるそうです。

また、作物は土に比べて光の反射率が高いので、ただの土が熱をためこんで地表に放出するのに対し、作物は日射量を熱に変換しにくいという理由も関係しています。加えて、ソーラーパネルが高い位置にあったおかげで空気が通りやすくなったということも、要因として考えられるとのこと。

チャン氏らによると、温度が高くなるとソーラーパネルの寿命や効率が低下するため、アグリボルタイクスは農業と太陽光発電の両方にメリットがあると考えられるそうです

by AgriSolar Clearinghouse

一方で、ソーラーパネルが日光を遮ってしまうため、作物の収穫量が減少するというデメリットも存在します。こうした問題を解消するため、ソーラーパネルを半透明にして集光力を高めるという先行研究も行われています。

着色した半透明のソーラーパネルで「太陽光発電をしながら作物を栽培する」農業の効率が向上する可能性 – GIGAZINE


チャン氏は「これまでのソーラーパネルは、与えられた土地の面積でエネルギー生産量だけを最大化する目的で作られていました。しかし、この産業が大規模になるにつれて、エネルギー生産だけでなく、より生態系や環境にやさしくする方法に移行しつつあります。気候変動の影響に対抗するために再生可能エネルギーをできる限り導入することが急務ですが、同時に、食料のために農地を保全することも重要です」と述べました。

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