富山県立大の学位記授与式で、対話型AI(人工知能)「ChatGPT」を使った式辞が披露され、SNSで大きな反響を呼んでいる。
斬新なアプローチはどんな考えからひらめいたのか。家族には”ダメ出し”されたという下山勲学長に聞いた。
「今日は、私たちにとって大切な日です」
2023年3月18日にあった富山県立大の学位記授与式。下山学長は式辞で来賓の富山県知事や関係者へあいさつした後、「ところで、これからお話しする文章を注意深く聞いてください」と意味深長に語りかけた。
「今日は、私たちにとって大切な日です。この場を借りて、皆さんがこの日を迎えるまでの長い道のりを振り返り、皆さんがこれまで築いてきた成果を称えたいと思います。皆さんが通った道は時には険しく、時には曲がりくねっていました。しかしその中で皆さんは自分自身を見つめ、努力し挑戦し続けました。その結果、皆さんは今日、栄誉ある日を迎えることができました。心からおめでとうございます」
特段、違和感のない内容だが、実はChatGPTで「卒業式の式辞を作って」と入力して生成した文章だった。
下山学長は続けて、「式辞をAIに手伝ってもらおうと目論んだのですが、生成された文章を妻に見せると『あなたらしくない』『心に引っかからない』『定型的な式辞だね』と言われてしまいました」とユーモアを交えて家族の反応を明かし、
「ではと思い、『卒業式の式辞を心を込めて作って』とAIに入力してみました。さらに加えて『富山県の課題を教えて』『ソートするプログラムを作って』などと入力すると、しっかりとした文章やプログラムが返ってきました。私が今年で最も驚いたことでした」
と、指示文(プロンプト)を工夫することで回答精度が増したとした。