あの、やたらにサイトに来客をもたらす「Googleディスカバー」とはいったい何をかんがえているのか。
年始企画にむちゃくちゃ記事を読んでもらえたのはなぜか。
2023年1月のデイリーポータルZの試行錯誤を、ウェブマスターの林、はげます会担当の橋田、編集部の古賀の3人でかたりあいました。(編集:古賀及子)
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超お宝資料、Googleディスカバー研究
橋田:
林さんと古賀さんからひとつずつ、先月のデイリーポータルZの運営について報告してもらうのがこの会です。今日のテーマはここちらですね。
- 林「Googleディスカバー研究」
- 古賀「年始企画ふりかえり」
林:
Googleディスカバーというのがありまして、Chromeのホームとかアンドロイドのホームに出るニュースです。
僕はあれに愛憎入り交じる感情を感じていまして。余計なことをしてくれやがって。。あそこにデイリーの記事が出ることがよくあるんですけど、ドドッと人が増えるんです。それについて研究しました。
古賀:
超お宝報告だ。
橋田:
めちゃくちゃにPVが増えますよね。
林:
そうなんでですよ。それでいま、人気記事ランキングがGoogleディスカバーに取り上げられたものばかりになっちゃってる。人気記事ランキングがGoogleの取り上げられるかどうかにかかってて、Googleにコントロールされちゃってる状態なんですよね。
古賀:
確かに……。あの枠に出るか出ないかでPVがまったく違いますね。
林:
本来は我々と編集部とかライターが「これは面白い、載せる価値がある」って判断して載せるべきなのに、Googleディスカバーのチョイスが人気を作ってしまってるんですよね。
古賀:
SNSからの流入とは比べ物にならないくらいディスカバーから来訪がありますからね。
林:
Googleディスカバーに選ばれるかどうかじゃなくて、「あなたは何が面白かったのか」が大事なのに。憎い。
古賀:
ストレートな本音。
林:
俺は俺が載せたいものを、伝えたいことを伝えるためにサイトを始めたのに、いつのまにか入り口に誰かが立って別の選択眼で人にすすめてる。
橋田:
確かに、編集部とはまったく関係のない門番がいるみたいな状況ですね。
林:
憎いので、むしろすり寄ってみることにしました。
古賀:
意外な展開。
林:
どんな記事が取り上げられているのかを調べました。逆にハックしたいなと思って。Googleがどういうのが好みだろって。
橋田:
敵情視察だ。
Googleディスカバーに出やすい名詞は「駅」「県」「山」
林:
ある時期に掲載した記事全部のタイトルの品詞を分解しました。そこから、Googleディスカバーに掲載された記事と、そうでない記事の品詞の比率を比較したんです。これは名詞。
林:
「駅」は、期間内で71回タイトルに登場してます。そのうち、ディスカバーに取り上げられたのは39回。
古賀:
なるほど……。
林:
「駅」「県」「山」「幹線」「ビール」は全体の半分以上がディスカバーに出てる。
橋田:
これまでも編集部でなんとなくGoogleディスカバーの好み、みたいなものは共有してたんですよね。地名は強い、くらいまでは。
古賀:
ね、駅がよかったんだ。「寿司」がだめというのは意外ですね。食べ物も強そうなイメージでした。
林:
そもそもGoogleは普段からユーザが何を検索しているかをベースにして表示させてるんですよね。
古賀:
「寿司」、めちゃくちゃ検索されてそうだけどもな。
橋田:
「駅」は普通に必要があって検索されてるんでしょうね。
林:
うん。「経堂駅」とか「渋谷駅」っていう検索の仕方ですよね、きっと。
古賀:
「駅」とか「県」は積極的興味よりも消極的興味ですよね。
経堂駅に行かなくちゃいけなくてやむを得ず調べる。それが積極的興味とみなされて表示されてるとなるとそれでいいのか!? という感じはしますね。
林:
普段俺が経堂駅って検索していると経堂駅興味あるんだな、経堂と駅に興味があるんだなって思われちゃうわけですよね。
橋田:
林さんはただ帰ってるだけなのに。
古賀:
あれ? 「神社」はだめか~。ファン多いのに。
橋田:
もちろん神社の好きな人、検索している人はすごくいるんでしょうね、でも検索というものの分母が大きいですもんね。おおきな分母に対しては「神社」はやっぱり少ないってことなのかな。
ポジティブな言葉ほどディスカバーに載る
林:
動詞も調べてます。
古賀:
おー!「食べ」「住ん」「歩く」か。
林:
「食べ」って単語はデイリーで1年間で92回も出てきました。そのうち52回はディスカバーに登場している。
古賀:
食いしん坊だな。それから「わから」……?
林:
分解しちゃったけど、これは「わからない」ですね。
10%以下は「聞く」。ゼロは、「教え」「探し」「探す」「読ん」。勉強っぽい単語はGoogleディスカバーには出にくいみたいです。「食べる」とか「買える」とかが強い。
古賀:
消費ですね。
林:
形容詞は「おいしい」「楽しい」「かわいい」。
橋田:
「詳し」がだめですね……。
林:
「暗い」「低い」「詳しい」「辛い」「悲しい」はゼロ。ネガティブな言葉がタイトルに含まれているものはディスカバーは選ばない。暗いものを検索している人はいないのかもしれないですけど。
古賀:
Google検索のサジェストは暗い言葉が並ぶ印象がありましたが、ディスカバーは明るいんだな。
林:
「おいしい」「楽しい」、ドリカムみたいな単語がディスカバーは選びがち。デイリーはそういう記事を意図的に載せてはいるんだけど……。
古賀:
我々が「うれしい」「たのしい」「大好き」なのは逆張り的な「でも、うれしい」「でも、たのしい」「でも、大好き」なんですよね。
林:
そうそう、一回転して、「やっぱり、でも、あえてうれしい」。
古賀:
いろいろあったけど、この世をエンジョイしていこうという。
林:
ストレートに「エンジョイこの世!」だとタオル振り回す音楽になっちゃうから。
控えめな地域は載らない
林:
みんな気になる固有名詞は、「新宿」、「沖縄」、「長崎」、「横浜」、「つくば」、あと「東海道」。これ新幹線だと思うんですけど。
古賀:
東海道新幹線はみんな乗るからなあ。
古賀:
秋葉原が少ないですね。
林:
秋葉原、東京はダメなんですよ。なんでですかね。あとはインド、ドイツ、新潟も、Googleディスカバーには出ない。
古賀:
ほりべさん(ベルリン在住)とつりばんど岡村さん(新潟在住)が……!
林:
たとえば新潟とか、あと愛知とか北海道でも旭川とかの人って、「何かいいところありますか」って聞くと、「いやいや、別にないよ」って答えるじゃないですか。
橋田:
控えめな地域性。
古賀:
群馬・埼玉スピリッツですよね。
橋田:
そうか……横浜は逆に「横浜いいよ~!」って言うもんね(※橋田さんは横浜市民)。ぐいぐい行く地域は検索するしディスカバーにも取り上げられるんだ。
古賀:
長崎も取り上げられてる、港町の明るさですかね。
Googleディスカバーに載るタイトル「横浜ですごく食べ山」
林:
最後にまとめで、Googleディスカバーに出る鉄板のタイトルを紹介します。「山のある県の駅に東海道新幹線で行く」「ビールと新宿とつくばがおいしくわからない」
古賀:
詩かな。
林:
「横浜ですごく食べ山」
古賀:
劇団名にしたい。「劇団 横浜ですごく食べ山」
林:
すごく食べ山って鎖鎌の先に肉つけて振り回してるみたいな、そういう感じですかね。
古賀:
荒くれた記事だな。
林:
ディスカバーどころじゃなく読まれなさそうですね。
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