川や川辺から、淡水動物が今後どんどん姿を消していくかもしれません。
1月8日、Nature誌で発表された論文「One-quarter of freshwater fauna threatened with extinction」において、魚や甲殻類、トンボ目の昆虫などを含めた淡水動物の24%、約4分の1が絶滅危惧にあることが発表されました。地球に存在する既知の生物種のうち、10%以上にも及ぶという淡水動物。今回の論文で発表された絶滅危惧にある淡水動物には、淡水魚はもちろん、カニやエビ、ザリガニなど、日本の川辺にも生息するような馴染みの深い動物も含まれています。
Catherine Sayerらは、国際自然保護連合(IUCN:International Union for Conservation of Nature)の絶滅危惧種レッドリストのために、多種にわたる淡水生物相の評価結果を発表した。このリストには、23,496種の魚類、十脚類の甲殻類(カニ、ザリガニ、およびエビなど)、およびトンボ類(トンボやイトトンボなど)が含まれている。
また今回の論文では、この事態に影響を与えている要因についても発表。大気汚染やダム・水の抽出、そして土地利用の変化や農業など、人間の暮らしに起因するような要因によって、絶滅危機に瀕している動物が多いようです。
調査対象となった種のなかで、絶滅危惧種の54%は汚染の影響を受けていると考えられ、39%はダムや水の抽出、37%は土地利用の変化や農業に関連する影響、そして28%は外来種や病気による影響を受けていると考えられる。
日本のイワナも絶滅危惧に
2023年に日本で公開されたサイエンスドキュメンタリー映画『ミルクの中のイワナ』では、絶滅危惧に瀕する淡水魚・イワナを取り巻く生態系の変化に着目。固有の種を守るために、人間がどのような手立てを講じることができるのかに向き合った作品として評価され、『カナダ・トロント インディペンデント映画祭 ベストインターナショナルドキュメンタリー』など名だたる海外映画祭にて受賞・入選。またこうした国際的な評価の高さを受け、一般公開前にも関わらず水産庁推薦作品に選出され、話題となりました。
この作品でも、人間による乱獲や養殖・放流、人工ダムの建設など、人間の暮らしによって、淡水魚であるイワナの生態系が少なからず悪影響を受けている可能性が示されていました。
今回のNatureの論文により、状況証拠ではなく、科学的な調査結果としてその影響が明らかになりました(映画の題名である“ミルクの中のイワナ”とは、「状況証拠しかないが、問題が存在することは明白である」という意味の比喩表現)。研究者や漁業家のような、イワナを取り巻く生態系の変化に危機感を感じている関係者だけではなく、釣り愛好家たちの声も取り上げられています。実際この映画自体も、渓流釣りを趣味にしながら、この危機感を実感した映像監督の手によって手がけられています。
人間の暮らしが淡水動物の生態系に悪影響を及ぼしている一方で、淡水動物たちを愛する人々の声が、危機に瀕した状況を変える一手になるかもしれません。
Source: Nature Asia, YouTube