これぞ、ビジュ爆発。
ブラックホールと聞くと、重力が非常に強く、光さえも脱出できないほどあらゆるものを吸い込んでしまうというイメージがありますが、一方で、光速に近い速度で移動する粒子をジェット噴射するという物理現象もわかっています。
吸い込むだけでなく噴射することもある
NASAの天文観測衛星のひとつ「チャンドラX線観測衛星」が最近、撮影したX線画像とその調査結果が、天文学と天体物理学を扱う学術雑誌、アストロフィジカルジャーナルに掲載されました。
まるでSF映画のワンシーンのようなこの画像は、1200万光年離れたブラックホールから噴出する巨大な物質のジェットが、宇宙空間の何かに衝突しているところをとらえたものです。C4と名付けられたこの未知の障害物は、大量のX線を放射していますが、天文学者たちもそれが何なのか正確には分かっていないと言います。
この現象はジェットと呼ばれ、恒星の噴出を促し、恒星を爆発させます。また驚くほど大きくなることもあり、2024年9月には、ある天文学者のグループが、天の川銀河の140倍という超巨大ブラックホールジェットを特定しました。
1光年=9兆4600億km
今回撮影されたC4にはV字型の腕のようなものがあり、これはブラックホールから噴き出すジェットが物体に衝突することによって生じます。
C4から放射されるこのV字の腕は、ブラックホールの反対側にある巨大なジェットと比べるとかなり小さく見えますが、それぞれの長さは700光年もあるのです。
ちなみに、チャンドラX線天文台のリリースに記載されているブラックホールのジェットの長さは30,000光年で、太陽に最も近い恒星は4光年離れています。宇宙がいかに巨大かということを思い出させてくれますね。
ブラックホールジェットが何かに衝突するのは今回が初めてではなく、以前にも天文学者たちは「ケンタウルス座A」と呼ばれる銀河で、ジェットが星やガス雲などの物体に衝突するのを観測しています。しかし、今回のものはこれまで撮影された中で最も深度のX線画像でした。また、C4のV字型は不規則で、これはジェットが衝突する物体の種類や、物体との接触の仕方に関係している可能性があると考えられています。
天体物理現象の中でも、派手で絵的にも映えるブラックホールジェット。C4が何なのかすぐにはわからないかもしれませんが、研究者たちが調査中なのでご安心ください。