想定外なことが起こるのは想定内、それが温暖化。
2023年に続いて今年も世界平均気温が観測史上最高になるのが確実視されていますが、みなさまにおかれましていかがお過ごしでしょうか?
予想を超える速さで記録破りの熱波を繰り返すホットスポット
今回、アメリカとオーストラリアの研究者たちが、気候モデルの予想を大幅に上回る激しい熱波が繰り返し発生している地域を世界地図で可視化しました。
この記事のトップ画像になっている地図については、11月26日にPNAS(米国科学アカデミー紀要)に掲載された研究結果で詳細が説明されていますが、南極大陸を除くすべての大陸に、科学者にも説明できないホットスポットが点在するのを示唆しています。
Columbia Climate Schoolの声明によると、ホットスポットに関連する熱波は、何万人もの命を奪い、干ばつや森林火災を深刻化させて環境を破壊しているといいます。
この研究の主執筆者であり、Columbia Climate SchoolのLamont-Doherty Earth Observatoryで非常勤科学者として勤務、オーストラリアの国際応用システム分析研究所にも所属するKai Kornhuber氏は、声明で次のように述べています。
この研究は、私たちが完全には理解していない物理的な相互作用によって生じる極端な傾向に関するものです。ホットスポットとされる地域は、一時的に温室のような状態になってしまうのです。
想定外の熱波のほとんどが過去5年に集中
コロンビア大学を中心とする研究チームが過去65年間に発生した予想外の熱波に絞って調査したところ、そのような熱波のほとんどが過去5年間に集中していたそうです。この研究方法によって、気温上昇が急加速し、観測史上最高記録を繰り返し大幅に更新している地域が特定されました。
例を挙げると、2021年にはアメリカの太平洋北西部とカナダ南西部で9日間続いた熱波によって、一部の地域で過去最高気温を30度も更新しました。怖すぎます。
想定外熱波の地域格差
アメリカから世界に目を移すと、中国中部、日本、韓国、アラビア半島、オーストラリア東部、アフリカの一部、カナダのノースウェスト準州や北極圏の島々、グリーンランド北部、南米の南端、シベリアの一部などにホットスポットが点在しています。
特に、北西ヨーロッパでは、熱波が最も偏って継続的に発生しています。ヨーロッパはエアコンが普及していない地域も多くて、暑さに対して脆弱(ぜいじゃく)なんですよね。今もこれからも心配です。
研究チームは論文で
近年にみられる地域規模の極端な暑さが、想定外レベルでこれまでの記録を大きく上回ったことから、気候モデルが世界平均気温の変化と、地域的な気候リスクの関係をどの程度適切に予測できるのかについて、疑問が生じています。
と記述しています。言い換えるなら、気候モデルによる世界平均気温の上昇予測は、特定の地域における異常な暑さの急増を反映していない可能性があるということです。
奇妙なのは、予想をはるかに超える極端な熱波の増加が、世界中で起こっているわけではない点です。アメリカの中北部やカナダ中南部、南アフリカ、さらにはシベリアの大部分、アフリカ北部、オーストラリア北部などの地域では、気温の上昇がみられるものの、そのピークは気候モデルの予測よりも低くなっています。
原因は、まだわからん
科学者たちには、この違いの原因がなんなのか、まだわかっていません。Kornhuber氏が過去に主導した研究では、北半球の高緯度を走るジェット気流の変化が、ヨーロッパやロシアにおけるホットスポットに関係していると仮説を立てましたが、今回の研究結果をみると、その理論だけではすべての極端な気象現象を説明できないとのこと。
また、 コロンビア大学の大学院生で、今回の研究の共著者でもあるSamuel Bartusek氏が2021年に行なった別の研究では、2021年にアメリカの太平洋北西部とカナダ南西部で発生した熱波の要因として、ジェット気流の乱れ、乾ききって蒸発する水分を失った植生、さらに太平洋の海面から陸地に熱が運ばれたことが挙げられています。
Kornhuber氏は結論として、声明で次のように話しています。
過去に例がないこれらの熱波は、非常に深刻な健康被害につながり、農業や植生、インフラにも壊滅的な影響を与える可能性があります。私たち人間はこのような熱波に適応できるように作られていませんし、今後も熱波に追いつく速さで適応するのは無理かもしれません。
日本もホットスポット
今回の研究では、日本もホットスポットのひとつに数えられています。上の地図で日本の部分を拡大すると、関東以西はほぼすべての地域で気候モデルの予想を超える勢いの極端な熱波が増加しています。特に九州西部や沖縄、中国地方あたりがヤバそうな感じです。
実際、日本では2023年から今年にかけて、温暖化によって2倍以上発生しやすくなっていた高気温の日が63日ありました。2カ月以上。また、熱中症による死者は急増中で、救急搬送される人も増加傾向にあります。
国際的な気候変動政策の流れをつくるはずのCOP29は、ほとんど進展がみられないまま閉幕しました。暑さの影響を最も受けるのは、立場の弱い人々です。そういった人たちへの影響を緩和するために、世界各国は熱波の激化に置き去りにされない速さと熱量で温暖化対策を進める必要があります。