地球規模の気候変動によって暑すぎる日が26日増加。 さて日本は?

異常に暑い日が年間で1カ月近く増えてるとか、熱中症患者が増えるはずです。

地球が観測史上最も暑かった2023年。そしてそれを上回りそうな暑さの2024年。最終氷期が明けてから12万5000年、世界は最も暑い1年間の真っただ中にいます。

そんな中、昨年5月から今年5月の間に、温暖化しなかったバージョンの地球と比較して、温暖化しまくっている現在の地球では。26日も猛暑日が増えてしまったという分析結果が発表されました。

温暖化で増える危険な猛暑日

非営利研究組織Climate Central(クライメート・セントラル)、赤十字・赤新月気候センター、国際科学グループWorld Weather Attributionが発表した今回の報告書で、科学者は人為的気候変動の影響のおかげで、世界の平均的な人々は26日間も余分にとんでもなく暑い日を過ごすことになったと結論づけ、温暖化が世界中で極端な気象の頻度を増やし激化させていると指摘しています。

今回の研究で、科学者はまず1991年から2020年までの世界168カ国における平均気温データを分析し、上位10%以内の気温を算出しました。

Extreme heat days with climate change influence
Image: Climate Central
2023年5月15日から2024年5月15日の間に、1991年から2020年の上位10%以上の気温(温暖化なしの猛暑日)と比較して、温暖化によって2倍以上発生しやすくなっていた猛暑日(温暖化ありの猛暑日)の合計日数

その後、2023年5月15日から2024年5月15日までの気温と照らし合わせて、「上位10%以内の気温」のしきい値に達した各地の気温のうち、温暖化によって2倍以上起こりやすくなっていた日数(「温暖化ありの猛暑日」)と、しきい値に達したものの温暖化の影響を受けなかった日数(「温暖化なしの猛暑日」)を割り出しました。

そして、「温暖化ありの猛暑日」から「温暖化なしの猛暑日」を差し引いたところ、世界平均で温暖化によって猛暑日が26日増えていたそうです。世界平均で1カ月近くも余分に極端な暑さに耐えたことになります。

26日というのはあくまでも世界平均。南米のスリナムでは、温暖化ありの猛暑日が182日ありました。以下、エクアドルの180日、ガイアナの174日、エルサルバドルの163日、パナマの149日が上位5カ国。すべて中南米ですね。

温暖化なしの猛暑日(1991年から2020年までの上位10%の暑さ)は、スリナムが24日、エクアドルが10日、ガイアナが33日、エルサルバドルが15日、パナマが12日でした。つまり、これらの国では、温暖化によって約5カ月も極端に暑い日が増えたと。季節なんてあったもんじゃなさそうです。

温暖化ありの猛暑日が100日以上だったのは42カ国。温暖化の影響で猛暑日が100日以上増えた国は、27を数えました。

また、同期間に世界人口の約78%にあたる63億人が、少なくとも31日間の温暖化ありの猛暑日を経験したそうです。温暖化の影響を受けない場所は、もう世界のどこにもないんですね…。

アメリカでは大きな地域差

報告書のデータでは、アメリカだけ50州とプエルトリコ自治連邦区の数値をそれぞれ確認できます。カリブ海に位置するプエルトリコは、温暖化の影響で猛暑日が109日も増加しています。次いで多かったのがフロリダで54日、3位がハワイの52日でした。

プエルトリコとハワイに加え、南部の州が上位に集中しています。世界平均の26日を超えたのはプエルトリコと6州(フロリダ、ハワイ、アリゾナ、ニューメキシコ、オレゴン、ワシントン)でした。

一方、アメリカで温暖化による猛暑日の増加が最も少なかったのは、中西部ミズーリ州の2日でした。次いでカンザスの3日、オクラホマの4日が続いています。中西部や北部の州など、テキサス州以北は、温暖化の影響をあまり受けていないようです。テキサスは猛暑日が24日増えたのに、州境の北にあるオクラホマは4日の増加。温暖化は州境を認識しているんですかね…。

日本は平均以上

さて、日本はどうだったのか気になりますね。日本における昨年5月から今年5月までの「温暖化ありの猛暑日」は63日で、168カ国中89位。「温暖化なしの猛暑日」は34日なので、差し引きすると、余分な猛暑日が29日増えたことになります。ほぼほぼ1カ月増。

東アジアでは中国が19日増韓国は14日増なので、日本は温暖化の影響をより受けやすいといえそうです。

報告書が用いたデータでは日本の都道府県別の数値を確認できませんが、日本国内でも、アメリカと同じような地域差はあると考えられます。

Climate Centralが提供しているClimate Shift Index Global Mapは、世界各地の直近にあたる特定の日や数日間の気温が、温暖化によって何倍起こりやすくなっているかを地図で可視化しています。居住地や最寄りの都市を入力して実行すると、温暖化の影響や平年との偏差、地域差などを確認できます。

Climate Shift Index Tokyo 2024-07-22
Image: Climate Shift Index Global Map / Climate Central

試しに今年いちばんの暑さを記録した7月22日の東京の日平均気温を確認したところ、平年よりも4.6度高く、温暖化によって5倍起こりやすくなっています。温暖化の影響をどちゃクソ受けてる…。

極端な暑さの影響は深刻

報告書は、極端な暑さによって2022年にヨーロッパで6万人以上の死者が出たり、熱中症などで人々の健康に直接影響を与えたりするだけでなく、山火事の激化大気汚染の悪化電力網や交通機関のまひ水質汚染とそれに由来する健康被害、水不足干ばつによる食料危機生態系への影響など、ありとあらゆる問題を深刻化させると指摘します。

すべての人々がこれらの影響を平等に受けるわけではありません。高齢者や子ども、妊娠中の女性や基礎疾患を持つ人、非白人や低所得層、ホームレス、屋外労働者、服役者などが極端な暑さの深刻な影響を偏って受けます。

報告書は最もはっきりした知見として、今日の極端な暑さを引き起こす熱波は、化石燃料の燃焼によってより発生しやすく、より激しく、より長く継続するようになったと述べています。さらに、ここ数年の命に危険がおよぶ猛暑の多くは、人為的気候変動の影響がなければ起こり得なかったとしています。

場当たり的に暑さリスクの軽減策を実施するのは必須として、長期的にはやっぱり野心的な気候変動対策が急務です。

Source: Climate Central

Reference: Copernicus, Climate Shift Index Global Map, Ballester et al., 2023 (Nature Medicine)

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