サメを攻撃することで知られるシャチですが、どうやらヨットも攻撃しているみたいです。
70年代に、大切なパートナーを殺されたオスのシャチが、人間に復讐するためにボートを襲いまくる『オルカ』というパニック映画がありましたが、今、モロッコ領海のジブラルタル海峡では同じようなことが発生しているらしいのです。
シャチの群れがヨットを襲う
ロイターによると、今月12日午前9時頃、ヨットに乗っていた2人組がシャチの攻撃を受けたそうです。ヨットは全長49フィート(約15メートル)ありましたが、船体と舵に大きな衝撃を受け、浸水。その後、海に沈んでしまったそうです。
2人は近くにいたタンカーによって救助されました。
15頭のシャチの集団が襲っているらしい
攻撃しているシャチは「グラディス」と名付けられた、若いオスを含む約15頭で構成されたグループだと専門家は考えているそう。彼らは過去4年間でジブラルタル海峡の複数のヨットを沈没させています。
シャチは本来、温厚な動物。専門家たちはグラディスの行動原理がわからず頭を悩ませています。
復讐している可能性
2020年にグラディスの群れを撮影したところ、シャチの体に傷があるのが確認されました。もしかすると、過去に漁船と接触したのかも。そして、その経験から『オルカ』のように復讐している可能性があるらしいのです。
シャチの行動研究所のモニカ・ウィーランド・シールズ所長は、過去のトラウマに基づく防御行動の可能性があり、完全には否定できないと述べています。
「シャチが復讐のような複雑な感情を持てると確信している」とNPRのインタビューで語りました。
「遊んでいるだけ」という意見も
一方でスペインを拠点とするクジラ類の研究グループ「CIRCE Conservación Information and Research」のルノー・デ・ステファニス代表は「遊んでいるだけ」「船にぶつかって遊ぶのが流行っているのでは」と別の意見を持っているみたい。
そのため、「大人になれば食糧確保などのために忙しくなる。遊んでいる暇がなくなればやめるだろう」と話しています。
復讐でも遊びでも、あんなに大きく賢い生き物にヨットを攻撃されるのはかなりの恐怖体験のはず。ロイターによると2020年5月以降、ジブラルタル海峡地域では船舶とシャチの遭遇が700件ほど報告されているらしいので、事故を未然に防ぐためにもシャチの行動研究は続けていく必要がありそうです。