太陽フレアで発生した大規模オーロラ、陰謀論のネタにされる

やっぱり出てきた陰謀論。

週末に世界中で見られた壮麗なオーロラ。こういうレアな自然現象が起こると必ず出てくるのが陰謀論。ネット上では、アラスカ大学の電離層の研究プログラムが原因だと主張している人が多いようです。

オーロラが出現する仕組み

まず、オーロラってどうやって起こるの?ってところから。オーロラは太陽から放出された電気を持った粒子が地球の大気の粒子と衝突することで発生します。今回のオーロラの原因となった太陽の表面で起きる大規模爆発「太陽フレア」は、11年周期の太陽活動サイクルの極大期に近づいている太陽の表面活動。

実際、国立海洋大気局によると、先週の太陽フレアは2003年以来最も激しいもので、土曜日の夜にはG5(極端)の状態に達したそうです。

一般的にオーロラは地球の極付近、つまり地球の磁力線に沿って発生します。しかし、今回の太陽フレアがかつてなく激しかったため、アメリカではシアトルからフロリダまで、さらにカナダ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オーストラリアの一部でも観測されています。

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事前に太陽フレアについては警告されていた

先週開催されたアメリカ海洋大気庁の記者会見で、宇宙天気予報センターの科学者と予報官らは、変圧器からGPSナビゲーションシステムまでさまざまなものに影響を与える可能性のある今回の太陽フレアに備えるよう、重要インフラの担当者に事前に警告をしていたとコメントしています。

また、予報官らは太陽フレアの特異な性質や、オーロラが通常よりも南の領域で出現する可能性があることなど、起こりうる現象についての詳細を説明していました。

科学的に予報まであったことは陰謀論を掲げる人たちには通用せず、オーロラの原因はアラスカ大学の電離層研究プログラム「高周波活性オーロラ調査プログラム(HAARP)」によるものだとネットでは論じられています。ちょうど5月2日にアラスカ大学がHAARPの実験を5月8日から10日にかけておこなうと発表していたので、陰謀論者にとってはピンとくるオーロラの解釈となったようです。

アラスカ大学が陰謀論に声明発表

これに対して大学側は陰謀論の盛り上がりに対して回答せざるを得なくなってしまいました。HAAARPディレクターのジェシカ・マシューズ氏は「メディアや一般の方々から多くの質問を受けています。HAAARPの科学実験は、世界中で見られた太陽フレアやオーロラとは全く関係ありません」と声明を出しています。

これまでもSNS上でHAARPについては、長時間に空に残っている飛行機雲は実は飛行機から散布された有害物質だとする「ケムトレイル」を起こしていると言われたり、竜巻が起こる度に根拠のない「気象兵器」として挙げられてきています。

HAARP陰謀論は主にアメリカでのことですが、アメリカ以外のSNSユーザーも、最近起こったブラジルで壊滅的な洪水の原因がHAARPにあると唱えている人も多いのです。また、「ケムトレイルとHAARPがまた活動を開始し、自宅の庭の棚に濃い緑色の粉をふり撒いた」と起こっているイギリス在住のXユーザーもいました。

HAARPのせいにすると理解できるから?

電離圏があるのは地表から約80〜644kmの高度な位置です。対する地球の気象現象が起きるのはもっともっと下の部分。それでも陰謀論者たちはHAARPが高度な上層大気から地上の気象現象まですべてコントロールしていると思っているようです。

2023年の米国心理学会の研究によると、陰謀論者は「環境を理解したいという欲求や、優越感を望む気持ち、さらにパラノイアや利己主義などの特定の性格特性に駆られている」そうなのです。理解したい気持ちは理解できますけどね。

HAAARPでは電離圏を理解するための機器が使われていますが、陰謀論者の最大の関心はその電離圏研究装置にあるようです。

アラスカ大学によると、この装置は「科学的研究の一環で一時的に電離圏の限られた領域を刺激させるために使用できる」としています。確かに、電離圏の研究の際に小さなオーロラを作り出すことができのですが、自然に現れるようなオーロラを作り出す力はありません。もし本当にオーロラのような荘厳な光のショーを人工的に作り出せるのであれば、もうすでに誰かが商業化していてもおかしくないですよね。

陰謀論は置いておいて、SNS上に投稿されていた世界中のオーロラ写真綺麗でしたよね…!