PCゲームのフレームレートを向上させる方法

かつてPCゲームにおいて最高設定でプレイするために苦労した時代もありました。高価なゲーミングPCやポータブルゲーミングデバイスを購入するのをためらうノートPCユーザーは窮屈さを感じることもあったでしょう。

しかし現在は、最新のCPUやGPUではないゲーミングPCでも、多くの最新タイトルをプレイできるようになりました。それは、NvidiaIntelAMDAIによるアップスケーリング技術が大きな理由といえます。

PCでのゲームというものは基本的には高価なものといえます。たとえば、今現在「ミドルレンジ」クラスとされるGPUでも300ドル(約4万5000円)をはるかに超える価格です。そうした今日の状況でも、DLSSXeSSFSRといった最新のアップスケーリングシステムのおかげで低予算のPCでは厳しいと思われるタイトルにも挑戦できるようになりました。

想定される基準に対して理想的とはいえないハードウェアでも、『Cyberpunk 2077』のような重いタイトルを高設定でプレイしたり、『THE FINALS』のようなマルチプレイゲームを楽しんだり、といったことがある程度実現できます。

低予算ゲーミングPCでは、画面上に多くのプレイヤーがいたりいろいろなことが起きるとPCは制限を受け、60fpsに満たないこともあります。同時に、さまざまなゲームタイトルが上記のようなアップスケーリング技術をサポートしている可能性があります。が、これ自体が混乱を生む場合もあるのです。

Microsoft(マイクロソフト)は、すべての異なるアップスケーリング技術をWindows上で統合するかもしれません。「DirectSR」とよばれる新しいAPIが実装されれば、開発側はゲームで最先端のアップスケーリング技術をサポートするのも容易になるとのことです。

こうした事情もあり、AIによるアップスケーリングなどはより発達することが予想され、それはよいニュースでもあります。AIベースのアップスケーリング技術の“粗さ”のような部分は長年改善されてきました。なので現在では、最高クラスのハードウェアを使用している場合を除いて、サポートされているゲームにDLSSやFSRなどを適用しない理由はないでしょう。

注意点としては、さまざまなGPUメーカーが一部のゲームのスポンサーになっている事情もあり、サポートされるものに違いが生まれたりします。たとえば、NvidiaとIntelの技術はサポートされても、AMDのものはされない、といった具合に。

ゲームを適切なフレームレートでプレイできるかどうかが企業のスポンサー契約によって左右されるのもなかなか厄介なことです。こうした事情も、Windowsの新たなAPIによって解決される可能性もあるかもしれません。

どのゲームタイトルがどのアップスケーリング技術をサポートしているかを確認する必要はありますが、設定はほとんどのゲームメニューのグラフィックに関するオプションで見つけられるはずです。

長々と概要を書いてきましたが、NvidiaのDLSSIntelのXeSSAMDのFSRのそれぞれについて紹介していきます。

NvidiaのDLSS、DLAAとは?

Screenshot: Kyle Barr / Gizmodo US

NvidiaのAIアップスケーリング技術はサポートされているゲームも多く、画質を直接犠牲にすることなくフレームレートを向上させる技術です。

まずはNvidiaのDLSS(ディープ・ラーニング・スーパー・サンプリング)を紹介します。この技術は、AIに学習させた上でゲームの実行時に高解像処理をしていくといったもので、これによって「画質を維持しつつフレームレートを向上させる」のです。

フレームレートをより上げるためにAIによってフレームを生成し、動作を向上させるという「DLSS フレーム生成」もあります。こちらはGeForce RTX 40シリーズ以上のGPUで利用が可能です。DLSSをサポートするゲームタイトルであってもこのオプションが表示されないという場合もあります。

DLSSはすべてのRTXのGPUで利用できるとのことです。が、RTX 20シリーズより以前のものだとこれらのグラフィックス機能に必要なTensorコアが見つかりません。最新のDLSS 3.5のすべての機能を利用したい場合は、RTX 40シリーズのGPUが必要となります。

もしこの条件が厳しい、といった場合はDLSSの古いバージョンでもフレームレートは70%以上は向上することは覚えておいてください。一方でNvidiaはDLSSの最新バージョンでは2~3倍以前の向上すると述べています。こちらは使ってみた感覚としてもあながち誇張ではないと感じますね。

DLSSはバージョンアップに際して、さまざまなモードを選択できるようにもなりました。モードは「パフォーマンス」や「バランス」、「品質」といった項目から選べ、プレイヤーはフレームレートを優先するか画質を優先するかといったことを決められるのです。

より優れたPCではおそらく「ウルトラ品質」を選択することになると思いますが、古いPCや性能が高くないPCでは、解像度やそのほかのゲーム内設定を調整しながらフレームレートを優先することになったりもします。

DLSSではバージョンアップとともに、低解像度から最大4Kの高品質解像度を再構築する「超解像度」機能も強化されています。また、一部のゲームではDLAA(ディープ・ラーニング・アンチ・エイリアシング)のオプションが表示されることもあります。

これはAIによるアンチエイリアス技術であり、ゲーム内のギザギザ表示される部分をなめらかにするものです。DLAA自体は数年前から存在していますが、最新バージョンをサポートしているのは『バルダーズ・ゲート 3』や『Marvel’s Spider-Man』などの新しいタイトルのみとなります。

また「レイ再構築」というレイトレーシングの機能強化もあります。いろいろと専門的な用語が入り乱れていますが、ゲームにおけるレイトレーシングとは基本的にはゲーム内のさまざまな光源や光の当たり方などの描画や再現のことを意味します。

多くの光源をモデル化するのはコンピューターにとて負荷が大きいので、大抵の場合は数本の光線のみをモデル化するのです。その際に不足しているすべての光線のノイズは除去されます。

レイ再構築は、従来のノイズ除去プロセスをAIアルゴリズムに置き換えることで、サンプリングされた光線間のピクセル領域をなめらかにするのです。簡単にいえば、レイトレーシングはPCに処理負荷をかけずに画質を強化するといった感じでしょうか。

AIによるアップスケーリング技術をサポートするタイトルは300以上にも増えており、2024年にはさらに多くのタイトルが登場する予定です。Nvidiaはそのほかのアプリケーションへの提供も含め、ほかの2社と比べても積極的な姿勢をみせています。Nvidiaはリリースされる『Horizon Forbidden West』などの新しいタイトルでもDLSSをサポートすると発表しています。

DLSSの気になる点は、特にゲームにおいて多少あるといえるでしょう。DLSSの以前のバージョンでは、ゲーム内に表示されるテキストが動きとともにぼやけたりすることがありました。新しいバージョンとなってからは、この問題はある程度修正されています。

とはいえ、最新バージョンであってもフレーム生成により、高速で動くゲームにおいてはオブジェクトにわずかなちらつきが発生したりぼやけることもあります。こちらも今後さらに性能が向上する可能性はあるでしょう。

IntelのXeSSとは?

Screenshot: Kyle Barr / Gizmodo US

次は、IntelのXeSS(Xeスーパー・サンプリング)です。Intelの独自グラフィックシリーズのXeより名前がつけられています。

さて、XeSSはAIによってより高い解像度でフレームを合成する技術で、Intelはこれによってゲームのパフォーマンスが2倍向上するとしています。

XeSSはNvidiaのDLSSと比べてもより新しい技術であるため、詳細な設定などカスタマイズ性はそれほど高くないといえます。しかし、フレームレートが2倍向上するというのも決して嘘ではありません。1080p解像度で実行しているゲームを4Kのように表示しながら、フレームレートは高いままにできるというわけです。また、XeSSにもAIによるアンチエイリアス技術が組み込まれています。

DLSSは、NvidiaのGeForce RTX GPUで利用可能ですが、こちらはIntel ArcIntel Xeのグラフィックをサポートするチップ全体で利用ができます。また、AMDのRadeon RX 60007000シリーズのグラフィック、Nvidia GTX 10シリーズ以降でも利用可能となっています。これは、XeSSはShader Model 6.4との互換性があるので、サポートされているグラフィックプロセッサーでは利用可能ということのようです。

XeSSについては、サポートされているゲームタイトルの数について言及しなければならないでしょう。Intelは昨年ライブラリを大幅に拡大させましたが、それでもDLSS対応のものに比べると少し見劣りしますね。昨年の8月にIntelは、70以上のタイトルがIntelのAIアップスケーリング技術をサポートしていると述べていました。このタイトル数は今後さらに増えていくことでしょう。

AMDのFSRとは?

Screenshot: Kyle Barr / Gizmodo US

最後はAMDのFidelityFX Super ResolutionFSR)です。こちらは2019年から開発が進められていたため、PCゲーマーの方もよく目にすると思います。

DLSSを除けば、FSRは利用可能なもののなかで最も一般的なアップスケーリング技術といえ、近年いくつかアップデートがされています。そのなかで最大ともいえるのがFSR 3へのバージョンアップです。

FSR 3には、通常のフレームの間を生成したフレームによって補間し、フレームレートを向上させる「Fluid Motion Frames」も追加されています。これはDLSSのフレーム生成のようなものですね。

また、新たに「Native AA(ネイティブ・アンチ・エイリアシング)」モードも追加されました。こちらは、高度のアンチエイリアス技術によりアップスケーリングせずに画質を向上させます。

AMDは、FSR 3とAI生成フレームによって、一部のゲームでフレームレートが約3倍になると述べています。が、Native AAを使用すると2倍までしか向上できない可能性もあります。

最新バージョンのFSRをサポートしているゲームでは、この超解像技術を調整するためのオプションが表示されることもあります。オプションには、Fluid Motion FramesやNative AA、あるいはゲーム内テクスチャ品質なども含まれます。こうしたオプションを追加するほど、パフォーマンスの向上具合は減っていくことになります。

AMDは昨年、FSR 3がすべてのDirecX11/12ゲームをサポートすると発表しました。これについてはレベルはさまざまですが、現在200を超えるタイトルがFSR 3をサポート、あるいはサポート予定となっています。現状でFSR 2をサポートしているものもありますが、FSR 3をサポートするものも増えているのです。

いくつかのゲームでは、AMDのスケーリング技術を複数の領域に渡ってサポートしているものもあります。FSRのメインともいえるAIアップスケーリング技術は、性能を低下を最小限に抑え、フレームレートを向上させるのに最も適したものといえるでしょう。

どのAIアップスケーリングシステムを使用すべきか

さて、ご紹介してきたなかでどれを使用すればよいのでしょうか。

まず言えるのは、持っているハードウェアとゲームがサポートしているものを使う、ということですね。これらのアップスケーリング技術は、特に古いPCや性能が高くないPCでフレームレートを向上させることが目的の場合、いずれにしてもある程度うまく機能するはずです。十分な画質を保つためには、加えていくつかのオプションを調整する必要もあると思います。

しかし、PCやゲームによっては、複数サポートしているゲームもあり、その場合は少し複雑になる可能性もあります。3つのなかでXeSSが一番新しいこともあり、利用可能なオプションは少ないといえます。

DLSSとFSRはどうでしょう。現時点ではサポートしているタイトル全般の画質やパフォーマンスの最適化についてはDLSSがわずかに優れているといえます。ですが、DLSSをサポートには開発者がNvidiaの支援を必要としますし、DLSSは特定のGPUでは機能に制限がかかります。こうした状況はPCゲーマーにとってやや閉鎖的なシステムともいえますね。

また、どのアップスケーリング技術をどのようにタイトルに実装するかは開発者次第、というところもあります。なので、ゲーム次第でアップスケーリングシステムの優劣が多少変わるという可能性もあります。

なので、まずは利用できるアップスケーリング技術を試してみましょう。そして好みの設定になるようにオプションを調整してみて確かめるのが一番です。

アップスケーリング技術はどれも常に更新され、進化も速くなっています。今年の後半にはそれぞれさらに改善されているかもしれません。覚えておいていただきたいのは、現在のPCやシステムが最高クラスではないからといって、一部の最新ゲームを高設定で楽しめないというわけではない、ということです。