シャチ、強すぎるあまり海の生態系を崩しはじめる

とにかく強すぎる、シャチ。

南アフリカ沖のシャチを研究している研究チームは最近、そのうちの1頭のシャチがたった2分で、しかも単独でホオジロザメを捕食する様子をとらえたそうです。

南アフリカの強者

2017年以来、南アフリカのモッセル湾沖に生息するホホジロザメに恐怖を与えている「ポート」と「スターボード」と名付けられました(名前はかわいいんだけど!)2頭のシャチがいます。

捕食者の頂点にいるとされるシャチは、巨大なホホジロザメの体の中でも特に栄養価の高い肝臓のおいしさに味を占めているようで、肝臓だけ食べられたサメの死体が何頭も浜に打ち上げられています。

当初、ホホジロザメが何に襲われて、食べられているのか分からずでしたが、2022年10月にシャチがホホジロザメを捕食している映像が撮影され、南アフリカの海岸で半分食べられたホホジロザメを襲っていたのはシャチだったことが確認されています。

単独の狩りをし始めている

ホホジロザメも最大で2300キロと大きい体ですが、シャチは最大で9980キロまで成長し、さらには群れてホホジロザメを狩るため、ホホジロザメは惨敗という状況でした。しかし今回発見されたのは、単独での狩りだったということで、その調査結果はAfrican Journal of Marine Scienceにまとめられています。

ローズ大学の海洋生物学者で研究の主著者Alison Towner氏はリリースで以下のように述べています。

南アフリカでは以前と同様に、シャチはホオジロザメの脂肪が豊富な肝臓をえぐり取り食べるという強い傾向を示しています。これは特殊な摂食行動です。この目撃は、少なくとも1頭のシャチが単独で狩りをしている証拠を示し、この地域で知られていた集団での狩りの行動に変化が出ています。

Photo: Christiaan Stopforth, Drone Fanatics SA

やっぱりあいつだった!

単独で、しかも最速でホホジロザメを捕らえた強者は、あの「スターボード」でした。スターボードに捕まえられた不運なサメは体長2.5メートルだったそう。チームはスターボードがサメの肝臓を口にくわえているのを目撃したとのことです。

シャークスタディーセンターとシエナ大学の研究者で著者のPrimo Micarelli氏は、以下のようにコメントしています。

南アフリカを20年以上毎年訪れてきて、シャチが地元のホホジロザメの個体群に与える深刻な影響を観察してきました。スターボードがサメの肝臓を私たちの船の前を運んでいるのを目撃したことは忘れられません」と述べています。

シャチに対する畏敬の念もありますが、それよりもはやり沿岸の海洋生態系のバランスについて心配しています。

サメに付けられた追跡タグや目撃データによると、シャチの存在のせいで、ホジロザメは沿岸の特定の地域を訪れなくなったとされています。つまり、お腹を空かせたシャチが生態系の食物連鎖に影響を与えているということです。

生態系が崩れる心配

昨年末、オーストラリアの海岸にも肝臓のないホホジロザメが打ち上げられ、南アフリカ以外のシャチもおいしいところだけ食べる狩りの方法を学んでいることが判明しています。

他にもシャチは、地球最大の大きさとされるシロナガスクジラでさえも捕食し、人間が乗る船も攻撃するという行動をしているのです。

シャチが陸地で狩りをするよう進化したらと思うとゾッとしちゃいますね。海の中では南アフリカの沿岸生態系のピラミッドを乱し始めているといっても過言ではないかもしれません。