シンプルボディになったAurora R16。性能はちゃんとAlienwareだった

DELLが昨年発表したゲーミングデスクトップPCAlienware Aurora R16」。

これまでの宇宙から帰ってきたような特徴的なデザインから、シンプルなミニタワーへと変貌を遂げました。こうしたデザインや性能を含め、米GizmodoのKyle Barr記者がAlienware Aurora R16のレビューをしています。

以下Barr記者のレビューをどうぞ!


Alienware Aurora R16とは

Alienware Aurora R16(以下Aurora R16)は、シンプルでデザインも良い堅牢なミニタワーのデスクトップPCといえます。一方で、将来的にパーツのアップグレードをしたい場合は制限があります。

Aurora R16のデザインは、機能的なゲーミングPCを実現するための正しい方向への一歩といえるでしょう。パフォーマンスについては、ゲーミングPCとして望まれるものを十分に発揮していますが、独自のマザーボードを使用しているため、あとからパーツ交換してスペックを上げるには普通よりもコストがかかります。

好きなところ

・素敵な見た目のデザイン

・冷却システム

・ハイエンドPCとして期待されるパフォーマンスを発揮

好きじゃないところ

・マザーボードの独自仕様によりパーツのアップグレードがあまりできなそう

前モデルからデザインが大きく変化

Image: Dell

昨年、Aurora R16が発表されて以来、直接このPCを見るのを楽しみにしていました。Alienwareといえば、かなり独特なデザインとハイエンドスペックが特徴といえます。

いわゆる「Legend 2」デザインまでは、宇宙船の装置の一部のような、円錐型のフロントパネルを備えたものでした。たしかにユニークでおもしろい見た目ではありましたが、一方で少し扱いにくかったり、ミドルレンジのタワーとしては少し大きすぎるといった部分もありました。

今回のAurora R16はその次の世代である「Legend 3」のデザインが採用されています。パッと見てもわかるように、それまでの特徴的なデザインと比べて落ち着いたものになっていて、シンプルさやミニマルさにはエレガントな印象も感じます。

Alienwareによれば、この新しいデザインは過去のAurora R15より40%小型化されているといいます。私は、ケース内部にかなりの大きさを占めるNvidia GeForce RTX 4080 Superのグラフィックボードを備えたバージョンを使っていますが、それでも水冷システムやケース内の大気が循環するのに十分なスペースがありますね。

しかし、このデザインの再設計によって「誰でも作れそうなものを作ってしまったら、既製のPCの意味は何なのだろうか?」という疑問がよぎったりもします。たしかに放熱グリスを塗ったりなんだりかんだりの手間は省けますがね。

シンプルながらエレガントな魅力

これまでとのデザイン変更により、マットブラックのフロントパネルやシンプルに光るLEDライトを見て「退屈だ」と思う方もいるかもしれません。さらに、DELLは今年初めに、ゲーミングノートPCの「Alienware M16」をリニューアルし、冷却のためにヒンジの後ろに飛び出す形で設けられた「サーマルシェルフ」を廃止しました。持ち運びや使いやすさをより重視する方向へと向かっているといえます。

DELLは米Gizmodoの取材に対し、「DELLの美的感覚そのものを再考するような大規模な試みではない」と語りましたが、個人的には新しいデザインのほうが好みだったりします。

新しいAurora R16では、前面の通気孔と背面のファンの両方にあるLEDが柔らかに輝きます。このライトが目立ち、かつデスクにぴったりと収まる程度の大きさで設計されています。ゲーム気分を味わうために過度に派手になっているものよりこちらのほうが魅力的に感じられるのです。

ケースの見た目が変わっても強力な冷却システムは健在

Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

ケースの設計

さて、AlienwareのPCは、最小構成は手頃な価格から始まりますが、スペックを上げると途端に価格が上がっていきます。Aurora R16は、Intel Core i7-13700FとNvidia GeForce RTX 4060が搭載されたものがベースとなります。

米Gizmodoでは、プロセッサにCore i9-14900KF、メモリに32GB DDR5、GPUにGeForce RTX 4080 Super 16GBという構成の実機を手に入れました。合計するとメーカー希望小売価格は3,200ドルになります(ストレージ等の変更なしで日本版では税込48万7580円)。

これらはすべて、Intel Z690チップセットをサポートするAlienwareブランドの独自マザーボードに搭載されています。また、先にも少し触れましたが、グラフィックボードがケースの幅や奥行きにちょうどピッタリはまるようになっていることには注意してください。

Aurora R16の内部スペースは約35.9Lです。全体のサイズは小さくなったものの、この容量はR15と同じなのです。

冷却システム

独自のマザーボードに加えて、独自のPSU(電源ユニット)もあります。また、CPUのハウジングに取り付けられた240mmの水冷システムも搭載されています。

前面のLEDライト部分はPCの吸気口としても機能し、フロントパネル自体も空洞になっています。内部のファンが回ると笛のような微妙な音がしますが、それほど不快には感じなかったのは驚きましたね。

GPUが内部のスペースの大部分を占めているため、空気は背面または上部から流れ出し、グラフィックボードのファンによって吹き出された空気の一部は側面の通気孔から出てきます。

高負荷の状態でもPCが異常に熱くなるといったこともありませんでした。側面の通気孔もあまり熱を感じませんでしたね。

各部分を計測してみると、リアファンでは最大で約38℃でした。上部の通気孔はPCの熱の大部分が逃げていく場所です。というのもCPUの水冷システムがPC上部のファンに直接取り付けられているためです。

『Cyberpunk 2077』を約30分間プレイし続けた後の最高温度は43.8℃程度でした。これは十分許容範囲内です。が、やはりAurora R16の上に物を置いたりするのはやめたほうがいいでしょう。

以前のAuroraでは工具が不要な設計でしたが、Aurora R16ではプラスネジを1つ外し、タブを引いてサイドパネルを外すという作業が必要になります。これは大きな問題ではありませんが、PC内部を見るためにドライバーが必須になることはたしかです。

大きなグラフィックボードをサポートする取り付けブラケットがスペースを占有していて、新しくパーツを追加する余地は基本的にはないといえるでしょう。とはいえ、見た目も含め良くできたマシンだと思います。普通のタワーPCに見えますが、品質には妥協を感じません。

内部の完成度は高いけど、カスタマイズ性は低い

Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

Aurora R16のケーブルはすべてマザーボードの裏側に伸びているため、すべての内部パーツを完全に視認することができます。

RAMやSSD、WiFiチップの周囲にはヒートシールドはありません。ですので、これらのコンポーネントが内部で異常に熱くなっていないか確認しました。異常は感じられませんでしたが、そのほかの既成ゲーミングPCなどと比較すると少し奇妙な感じもするので、注意は必要かもしれませんね。

とはいえ全体的に熱の問題はないようだったので最終的には気にしないことにしました。

高負荷の状態でも全体的に動作も静かです。特に、自分のほうに吹いてくる風もほとんどないため、すぐ横に配置していても気が散ったりもしませんでしたね。

また、LEDが明るすぎて気になるといったこともありません。ちなみに、Alienware Command Centerアプリを使えば、いくつかのRGBプリセットでLEDの色やパターンの変更もできますよ。作業中に気が散らないように、私は単色でブロックのパターンにしていました。同アプリでは、ゲームタイトルごとにライティング設定を作成するなどのカスタマイズも可能です。

購入後のアップグレードはハードルが高い

やはり最大の問題はマザーボードの独自仕様でしょう。RAMスロットは2つしかないため、後々メモリをアップグレードするには増設ではなく交換する必要があります。Alienwareによれば、この2スロットの仕様によりシステムの速度が向上しているとのことです。

個人的には、もう少し遅かったとしてもカスタマイズの余地のあるほうがうれしいです。GPUとストレージはアップグレードできそうですが、それ以外にカスタマイズできることはあまりありません。

Alienwareがケーブル管理を改善するためにマザーボードを独自構築したいというのも理解できますが、PCゲーマーにマシンのアップグレートの喜びを味わせないのはなぜだろう、と思います。現時点で最高品質でも、2年後、3年後にその状態が続くとは限りませんからね。

パフォーマンスも上々

Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

ゲームでのパフォーマンステスト

今回のレビューでは、240HzのQHDモニターと最大160Hzの4Kモニターを使用していくつかゲームをテストプレイしました。これでヘビーなタイトルでどのようなフレームレートが期待できるかがわかるはずです。

まずは、『Cyberpunk 2077』でテストした結果です。最も重い「レイトレーシング:ウルトラ」でDLSSをオフの設定の場合、240Hzモニターでは平均60fpsになります。DLSSをオンにするとフレームレートを2倍の120fpsまで上げられますが、画面上にNPCが多数いる場合は80fps程度まで落ちたりします。画質を4Kまで上げるとフレームレートが落ち始めるので、ゲーム内ベンチマークで平均80fpsまで上げるにはDLSSをオンにしたほうが良いでしょう。

バルダーズ・ゲート 3』では、屋内では140fpsを突破できます。アクト3の市街地で、さらに多くのNPCが走り回っている場合を除いて、100fpsを下回ることはなかったです。

ほかのゲームでも非常に高いパフォーマンスで、『Halo Infinite』と『The Finals』では250fpsを軽く超えていました。それでも、4Kでのゲームの場合、最高設定ではパフォーマンスが低下するため、60fpsを超えるパフォーマンスを実現するには、さまざまなスケーリングオプションを検討する必要があります。

そのほかのベンチマークテスト

3Dベンチマークソフトの「3DMark」でテストしましたが、”Time Spy”と”Speed Way”のテストでどちらも期待通りの結果となりました。QHDモニターでは期待以上のパフォーマンス、4Kモニターでも同等の性能を示しました。

これらのテストをみても、4K弱くらいの解像度でのゲームが最適だといえます。RTX 4080 Superはほとんどのタイトルで4Kを処理することはできますが、重いタイトルの一部ではフレームを維持するのに、Nvidiaのスーパースカラ処理よる高速化が必要でしょう。

Core i9-14900KFのCPUベンチマークはかなりの高パフォーマンスでした。ゲーミングノートPC向けのCore i9-14900HXを搭載した「Razer Blade 16」のレビューもしましたが、Aurora R16はGeekbenchのスコアで勝っていました。また、Core i9-14900KFはHandbrakeを利用したビデオエンコーディングのテストでも高いスコアを出しています。

ゲームをプレイしているときでも、そのほかの作業をしているときでも、これがハイエンドPCであることを改めて感じましたね。

デザインも性能も洗練されたAurora R16

Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

さて、Alienwareは高価なPCブランドです。これについては間違いないでしょう。

最低限のスペックで1,150ドル(約17万3300円)という価格に見合うかどうかはわかりません。加えてアップグレードの余地が少ないことも考えると、最低限のスペックをおすすめすることはできません

では、Aurora R16のハイスペックバージョンはどうでしょうか。より高くなりますが、それに伴い少なくともパフォーマンスについて失望することはないといえます。

残るは見た目ですかね。私にとっては以前のAlienwareよりも快適になり、デザインも良いと思っています。これが宇宙からの探査機などではなく、PCであることを毎度説明するよりも、シンプルなエレガントさをデスクの上に置いて楽しみたいと思うのです。