人・ペットをはじめとするあらゆる「命」に寄り添い、未来へつなぐデジタルライフモール誕生秘話

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現在世の中には多くのSNSが存在する。しかし中高年にはとっつきにくかったり、使いにくかったりするサービスも多いだろう。

「xLife」は人生100年時代のWebパートナーを掲げて制作されたWebサービスだ。関わったのは中高年の開発者たち。シニアベンチャーだからこそ、自分たちに使いやすいように、またこれ1つで全てが足りるように考えて作られている。

このサービスを開発したのはエックスライフの代表取締役を務める佐藤孝幸氏だ。佐藤氏がxLifeを開発しようと思ったのは東日本大震災がきっかけだ。「亡くなった方は今日自分が死んでしまうなど考えもしなかったでしょう。そしてかわいいペットが死んでしまうこともある。人やペット、あらゆる動植物の“生きた証”をデジタル化して記録することがスタートでした」と語る佐藤氏。佐藤氏は宮城県出身だ。そうしたこともあり、東日本大震災への思いは並々ならぬものがある。

目が覚めていつものような一日が始まると思っていた2011年3月11日。14時46分18.1秒、に起きた大地震はそんな日常を一変してしまいました。この日で自分の命が終わる、大切な家族や仲間たちとの永遠の別れになるとは、2万人を超えた死者・行方不明者は誰一人、思いもよらなかったことだろう。死んでしまうなら、どうしてもやるべき事、伝えねばならない言葉があったはず。遺された人たちにも、故人の思いがトラウマのごとく心に刻まれる。

そしてそれは人間の命ばかりではない。家族同様のペット、大切に飼育・肥育してきた牛・豚・鶏などのライブストック、そして海・空・陸を含めた景色も姿を変え、地域の人々がよりどころにしてきた木々や植物、海・川の恵みなど、身のまわりのあらゆる命が消滅してしまったのだ。

人・ペットはもとより、あらゆる命あるものたちの「生きた証」をデジタル化して未来につなげることはできないだろうか?! 「xLife(エクスライフ)」のコンセプトは、被災地の出身者として東日本大震災の痛ましさに直面した佐藤氏の思いが源泉となっている。

東日本大震災

■シニアベンチャーの誕生
東日本大震災の年、佐藤氏は古希(70歳)を迎え、東芝を経て創業したWebシステム開発とクラウドサービス/AIを柱とする会社の業績も順調に推移していたため、経営の一線を退き、社会貢献を念頭に置いた次なるチャレンジを模索していた。このような時期に起こった震災は、被災地出身である佐藤に大きな衝撃を与えた。その中で苦悩し、たどり着いた結論は、それぞれの「命の証」を未来へとつないでいくことの大切さだった。

「我が国は災害大国であり、超高齢化社会・地域格差にも直面している。その解決には、自助・共助、自然との共生、そして死亡後を含めた個人の尊厳などについて真摯に向き合い、1人ひとりが自らの人生のQOL(Quality of life)を考え、追求していくための仕組みが必要になる。そこをカバーするためのサービスをオールインワンで提供したい」(佐藤氏)。

そんな思いを胸に、佐藤氏は仲間たちに声をかけた。そこに呼応したのが、現在役員を務めている佐藤氏と同世代のエキスパートたちだった。CADやクラウドサービス開発の竹原司氏、40年余デザイン一筋の伊藤和氏、営業コンサルタントとして豊富な人脈を有する坂本 真一郎氏。シニアベンチャーの誕生だ。

その後、20代~50代のメンバーが6名、本業を兼務しながら参加し、「どのような“生きた証”をどのようにデジタル化していくべきか」について、5W1Hを基本に試行錯誤しながら、50回以上の企画会議を開催。その中で、消えない繋がりを維持する「ラストメッセージ」、自分視点で人生をデータとして記録・保管する「ライフログ」、そして上記の記録をサイバー空間で後世に繋ぐための「デジタル墓標」というアイディアが生まれ、これらを優先して開発していくという基本方針が定まった。雰囲気としては、思い込みが強いシニア世代の暴走を、次の世代のメンバーたちが現代感覚で軌道修正といった構図で、開発が進められていったという。

「xLife」は、戦後のウサギ小屋と呼ばれたマイホームから、高度経済成長、バブル経済、リーマンショック、巨大ITプラットフォーマ台頭などを経験し、戦ってきた多士済々のシニアたちが自らの経験に基づき、最後の仕上げとして取り組む「社会貢献」のためのモデルといっても過言ではない。同時にSNSやアプリへの付和雷同的な依存、生成AIをはじめとする最先端技術の登場を踏まえて、「QOL(人生の質)」が混とんとする現代と未来に送るアンチテーゼでもあるのだ。

■xLifeという名前の由来
人・ペットをはじめ、あらゆる命の「生きた証」をデジタル化するという、この壮大なプロジェクトに、佐藤氏たちは「xLife」と名付けた。「x」というと、「交差」という意味を内包しているTransformationが代表的だが、他にもExchange、Expandを象徴するなど、さまざまにところで用いられている。その中にあって、佐藤氏たちの「x」には、「xLife」というツールを活用してもらうことで、利用する人それぞれに「自らの“x”を見出してほしい」という思いが込められている。

それは、SDGsのアプローチに通じるところがある。周知の通り、地球上の「誰1人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓った開発目標であるSDGsは、17のゴール・169のターゲットから構成されているが、実は表に出ていない「18番目のゴール」こそが大切だといわれている。それは、「1人ひとりが考えていくこと」に他ならない。「xLife」もまた、「個(1人ひとり)」に根差していくことを志向する、ライフDX、ライフモール、パーソナルDXであり、個々の人生を変換・拡張するためのツールなのだ。

そのため、「xLife」は誰もが日常的に自分視点で使い続ける人生の基幹となりうるサービスを網羅する、オールインワンツールを志向している。すでに現時点で30種類(一部開発中)に及ぶ機能・サービスを、まるで専門店(アプリ)の集まりのように集約。1アカウントでサービスとデータのすべてを連携させている。これは裏返せば、「100人いれば100通りの使い方ができる」ということでもあるのだ。

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■xLifeが提供する代表的な機能・サービス
「xLife」の開発に当たって最初に手掛けたのが、家族・親友といった大切な人に、「ラストメッセージ」を届けるサービスだ。日航機事故で墜落までに必死に手帳に書き留めた家族へのメッセージがヒントとなっており、それぞれに認めておいた文章(写真添付可)を事前登録しておくことで、逝去時に複数の相手を任意で選んで、メッセージを自動で届ける仕組みだ。

「xLife」では、人間には「MyCARD」、ペットをはじめとする動植物には「PetCARD」発行し、そのつながりを維持・担保している。「MyCARD」はスマホデジタル名刺としても使うことができるため、家族・親族や過去の仲間・友人たちはもちろんのこと、新たな出会いを持った人たちとつながり、情報を交換・共有することで、そのリレーション(絆)を深めてくれる。若い頃、幼い頃から利用しておけば、人生におけるあらゆる面識者を記録でき、RELAYサービスにより、必要な時にいつでも交流することができる。この辺りが、グループへの既存意識が強い既存のSNSとは異なるコンセプトとなっている。

さらに繋がっている人たちの中から、任意で死亡通知やラストメッセージを送れるのが、「xLife」の特徴だ。死亡通知やラストメッセージは「xLife」独自の機能だが、その判定をどうするかは、非常にセンシティブな問題でもある。そこで、「xLife」では相手の許可を得て、自分の死亡を必ず知り得る家族・親友など2名を選定。この選定された人が「xLife」のサーバに死亡通知を送り、かつ36時間経過しても取消しがない場合に死亡を確定するというプロセスを採用して慎重な対応を図っている。

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■焼却箱のあるデータ保管サービス
震災時には多くのスマホ、PCなどが利用不能になり大事な写真、文書が失われてしまった。「xLife」ではクラウド上に写真・文書データを保管するが、死んだ後に見せたくない、見られたくないデータがあることも事実だ。そこで特別な焼却箱を設け、ここに蓄積されているデータは死亡確定と同時に焼却される。

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■自分の人生を記録するライフログ
「xLife」には自分史を記入できる「100年日記帳」が備わっているが、それは自分だけが振り返れる「非公開版」と、「MyCARD」を通じてつながった人たちと共有する「公開版」で構成されている。

また、特に若者をはじめ、日記を付ける習慣のない人たちのために、「かんたん日記帳スマートログ」を用意。睡眠・食事・仕事・趣味・病院など、140の行動アイコンを装備して日々の記録やメモ、要した時間とお金を簡単に記帳し、月次で分析することができる。

フリー記述式の仕組みもユニークで、自身がテーマを絞って趣味やスポーツ、闘病などを記帳する「テーマ追求ノート」と、あえて愚痴・悪口を記述する「王様の耳ノート」という2つを装備している。「王様の耳」は幾たびものストレスを経験してきたシニアならではの反省や失敗を踏まえたて実装だ。また、「テーマ追求」では東日本大震災被災地の元市村長有志が当時の苦悩と未来への思いをつづる「特別寄稿」を予定するなど、パブリッシャーとしての取り組みも視野に入れている。

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■共生社会を目指して動植物も対象に
家族の一員ペットは当然として、飼育動物、栽培植物、散歩道の桜、動物園のキリン、神社の神木……。私たちの周りにはさまざまな動物、植物が息づいて支えてくれている。

そこで、あらゆる「生あるもの」のつながりとプロモーションを支援・演出するのが「PetCARD」だ。データ保管、ライフログは人間向けのサービスを転用してしているが、同時にペットを中心とした、以下のような新たなサービスも付加されている。

①愛玩スコア:飼主がいかに健全に動物を飼育しているかの指標化
②動物共有カルテ:ワクチンや予防接種等の基本健康データの一元化およびかかりつけトリマーや獣医カルテデータの共有化
③飼主移行 ブリーダやショップからの飼い主へ、里親やペットホテルなどの一時的移行も含めて、成長日記やデータ保管等すべての情報を引き継ぐ

また、他人が飼っているペットをはじめ、自分自身が気になる動植物を応援し、その成長を楽しむ「アバターペット」なる機能も準備。それを広く共有することで、動物園や植物園、地元の銘木を盛り上げることができる.

■最後は「デジタル墓標」で未来へつなぐ
「生存中に蓄積されたデジタルデータの行方はどうなるのか?」というのは、「xLife」に与えられた最後の使命だ。

一方、亡くなった人を「お墓に埋葬して祀る」という日本の風習も、昨今の少子化や未婚率上昇を背景に、お墓の継承が社会問題としてクローズアップされつつある。特に新型コロナウイルス禍にあって葬儀の簡素化が進む中で、さらに深刻さを増している。当然ながら、それはお寺や墓地といった営みの形骸化につながる。そのことは、人口減少に悩む地方において顕著だ。

そこで「デジタル墓標」の活用だ。「xLife」というサイバー空間に故人の人生の記録やデータを収納するとともに、故人をしのび、お参りできるお墓を設けることで、昨今のお墓とお寺の問題解決に少しでも寄与したいと考えた。

生前の記録を通じて故人をしのぶとともに、リモートでお墓参り。また、協賛してくれたお寺が「南無カード」と呼ばれるお経カードを発行することで、読経供養も支援する。これにより、寺社などとともに新しいビジネスモデルを築くことを目指している。

この「デジタル墓標」は当然、大切な家族の一員であったペットにも共通するため、先行してペット向けサービスを提供。人間のための「デジタル墓標」は、お寺などとの共創に努めつつ、家系図つながりで300年、500年先まで祖先をたどれるしかけなどを含めて、2024年のリリースを目指している。

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■今後の展望:DX基盤として共創ビジネスを推進
「xLife」の記録・保管・つながり・コミュニケーションといったサービスは、Webサービスを基軸とするオープン志向のアーキテクチャで開発されている。そのため、各業界におけるDXプラットフォームとなり得るポテンシャルを有している。それだけに、さまざまな業種・業態との共創を積極的に進め、新規ビジネスやイノベーションの創出を通じて、社会課題の解決や底上げを目指している。以下が現在進行中の取り組みだ。

①自治体:地域の「絆」を深め災害情報の共有や地域情報の発信、観光インバウンド
②NPO法人、各種団体:
業務の手軽なDX及び会員管理と情報発信、交流
③お寺寺院(神社):
お寺業務DX及び檀家等の管理と情報発信、交流、供養ペット管理、
新しい収入源としてお経カード発行、サイバー檀家制度導入
④一人暮らし見守り、孤独死対策:
親族、友人、自治体、NPO、お寺、近所と連携した支援
⑤トリマー/獣医:
業務のDX及び顧客ペット管理、ヘルスデータ一元化、共有カルテ導入
さらに動物輸血ネットワークの構築
⑥動物園、植物園、水族館、サファリパーク:
飼育/栽培部門単位でのDX及び一頭単位での飼育記録、プロモーション、
応援者つながりと寄付、動物カード有料発行など
⑦その他飼育業者(ブリーダー、ペット販売、牧場、ペットカフェ、植木/金魚販売等)
  手軽な業務DX及びペット飼育管理とペットプロモーション
⑧その他ペット支援業者(フード、保険、ホテル、ペットテック、ペット介護など)
  手軽な業務DX及びアバターペットによる顧客管理とプロモーション

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エックスライフ株式会社 代表取締役社長 佐藤孝幸氏

<エックスライフ株式会社 代表取締役社長 佐藤孝幸氏のプロフィール>
1951年1月宮城県丸森町生まれ、(株)東芝の電算機事業部、総合研究所にて航空管制や列車/バスダイヤ自動編成等の自動化システムに従事する。
1998年インターネット時代を想定しオープンソースでのネット系システムを開発する(株)タイムインターメディアを創業し社長就任、初のネット楽曲配信、映画等動画配信システムや大学等文教系システムを送り出す。
2021年、70歳を機にエックスライフ株式会社を創業、日本初のライフDXサービスに着手する。
著書として「わかるC言語」(学研)、「システム設計」(翔泳社)など多数。

テクニカルライター 今藤 弘一

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スタジオグリーン編集部
スタジオグリーン
2023-05-19




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