スマートフォンメーカーはカメラ機能の改善や機能更新などを売りにするのが普通だが、米国市場に新たに参入したメーカーは社会的責任をうたっている。
提供:Murena
オランダに拠点を置くFairphoneは、仏Murenaとの提携により、「Fairphone 4」を米国で販売開始したことを発表した。同スマートフォンは、「公正に調達されたリサイクル材料」を用いて、生活賃金を支給された労働者によって作られているという。
2021年9月から欧州で販売されているこのデバイスがついに米国で販売される。OSはMurenaの最高経営責任者(CEO)を務めるGael Duval氏が設立したE Foundationが開発する「/e/OS」だ。これは「Android」をベースにしているが、ユーザープライバシーの保護を重視して開発されたという。
FairphoneのCEO、Eva Gouwens氏は声明で、「これはわれわれにとって米国で製品を試験的に販売する素晴らしい機会だ(中略)米国市場に関してより多くを学べるだろう」と述べている。
Fairphone 4は、モジュール式の設計により修理とカスタマイズが簡単なため、フルアップグレードを先延ばしできる。バッテリーは取り外し可能で、カメラモジュール、USB Type-C(USB-C)ポート、スピーカー、ボディは全て別々のコンポーネントとなっており、交換用パーツはMurenaのウェブサイトを通じて米国のユーザーに販売される。同社によると、普通のドライバーを使って修理できるという。
提供:Murena
Fairphoneは5年保証をうたっており、「iPhone」の通常の1年保証をしのぐものだ。
Duval氏は、米CNETに当てた電子メールで、携帯電話市場はメーカーから目新しいものが出てこないほど成熟した段階にあるとして、「カメラの解像度が数メガピクセル増える程度だ」と述べた(ちなみに、Fairphone 4は背面に48メガピクセルのデュアルカメラ、前面に25メガピクセルのカメラを搭載している)。
「サステナビリティとプライバシーを両立させることで、われわれは新たに拡大している市場ニーズに応えていく」「地球温暖化と気候変動がこれだけの速度で進んでいるのに、本当に追加の数メガピクセルを必要としている人がいるだろうか」(Duval氏)
Fairphone 4はスマートフォンで初めて「TCO Certified」を取得した。TCO Certifiedは、IT製品の持続可能性を認証するもので、製造の社会的責任、環境への影響、ユーザーの健康と安全、製品寿命の延長といった要素を審査する。このスマートフォンはまた、耐久性、エネルギー効率、リサイクル性、CO2排出量に基づいて付与されるドイツ政府の環境ラベル「Blue Angel」も取得している。
Fairphone 4には、USBコードやプラグ、ヘッドホンすら付属していない。Murenaによると、すでに手元にあるアクセサリーを使ってほしいからだという。
Fairphoneは持続可能性だけでなく、プライバシーへの配慮においても際立っている。Googleはデータプライバシーや位置情報追跡をめぐる訴訟で莫大な和解金を支払ってきたが、Fairphone 4の/e/OSはAndroidの「DeGoogle」(脱Google)版だという。
同社のウェブサイトには、「スマートフォンやクラウド上のデータをスキャンすることも、ユーザーの位置情報を1日数百回にわたって追跡することも、ユーザーがアプリで何をしているかという情報を収集することもない」と記載されている。
それでも、ユーザーが望むならGoogleのアプリをダウンロードすることはできるとThe Vergeは伝えているが、Murenaによると、Googleに個人情報を提供することなく、「Google Play」ストアから直接アプリを入手できるという。
ただし、いくつかのトレードオフがあり、その1つがキャリアの選択だ。Fairphoneは、T-Mobile以外のキャリアで使うことを「推奨しない」としている。
入荷まで待たなければならない問題もある。Murenaのウェブサイトを見ると、本記事執筆時点では入荷待ちとなっている。
Fairphone 4の価格は、ストレージ容量128GBが629.90ドル(約9万円)、256GBが699.90ドル(約10万円)だ。
スマートフォンの修理しやすさは、購入者にとって重要性が高まっている。Googleは2022年からiFixitと提携して「Pixel」端末の交換部品を販売しており、新型「Pixel Fold」の交換部品も販売する予定だ。Apple、サムスン、Microsoftも同様に自社のスマートフォンやタブレット向けのDIY修理パーツを販売している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。