仮想通貨暴落などで苦境に立たされたマイニング業者は余ったGPUを「AIトレーニング用のリソース」として提供している

GIGAZINE
2023年07月04日 21時00分
メモ



2010年代後半からの仮想通貨ブームに乗じて、大量のGPUを仮想通貨マイニングのリソースとして貸し出す事業者が続々と登場しましたが、近年の仮想通貨暴落やイーサリアムの消費電力を削減する「マージ」などによってマイニング事業は厳しい状況に陥りました。そんな中、生き残ったマイニング業者は余ったGPUを「AIトレーニング用のリソース」として貸し出す事業に活路を見いだしていると、日刊紙のウォール・ストリート・ジャーナルなどが報じています。

Crypto Miners Seek a New Life in AI Boom After an Implosion in Mining – WSJ
https://www.wsj.com/articles/crypto-miners-seek-a-new-life-in-ai-boom-after-an-implosion-in-mining-92a181fd


Crypto Miner Hive Blockchain Touts Privacy of AI Models Running on Its GPUs
https://www.coindesk.com/business/2023/06/30/bitcoin-miner-hive-blockchain-touts-privacy-of-ai-models-running-on-its-gpus/

Miner Pivots 38,000 GPUs From Crypto to AI | Tom’s Hardware
https://www.tomshardware.com/news/hive-blockchain-pivoting-to-ai

多くの仮想通貨マイニング業者は2021年末~2022年にかけて発生した仮想通貨の暴落による打撃を受けており、イーサリアムのマージが追い打ちとなって撤退する業者も相次ぎました。

GPUを用いた仮想通貨マイニングは「誰も儲からない」とマイナーが続々撤退開始との報道、イーサリアムのマージによる弊害 – GIGAZINE


スペインに拠点を置く仮想通貨マイニング企業のSatoshi Spainも、仮想通貨ブームのさなかに強力なGPUを搭載したマイニングリグを販売・リースして成長を遂げたマイニング業者の1つです。苦境に立たされたSatoshi Spainは、近年急速に盛り上がりを見せているAIのトレーニング用リソースにマイニングリグを改造し、リソースを必要としている顧客に貸し出す事業を始めました。

近年はAI開発の隆盛によってトレーニング用コンピューティングリソースの需要が急増していますが、供給不足のために小規模なスタートアップや大学などはコンピューティングリソースの確保に苦労しているとのこと。AI開発企業は通常、MicrosoftやAmazonなどのクラウドコンピューティングリソースを使用していますが、大手クラウド企業は容量の限界に達しているか小規模の契約に興味がないケースが多いそうです。

Satoshi Spainの新事業はこのニッチな需要に着目したものであり、今日ではヨーロッパに拠点を置くスタートアップや大学、個人開発者などにAI開発用コンピューティングリソースを提供しています。Satoshi Spainの創業者であるアレハンドロ・イバニェス・デ・ペドロ氏は、「まだマイニングリグでお金を稼ぐことは可能です。これはマイニング2.0です」と述べています。

また、大手マイニング企業のHive Blockchainも2023年6月の決算説明会において、保有している3万8000台ものGPUの一部を大規模言語モデルのトレーニング用に転用していることを報告しました。

Hive Blockchainは2022年第4四半期に、ベータプロジェクトとして500枚のGPUをAIコンピューティングリソースとして貸し出し、23万ドル(約3300万円)の収益を上げたとのこと。年間収益に換算しても約100万ドル(約1億4400万円)と、Hive Blockchainの規模と比較すればそれほど目立つものではないものの、今後さらに規模を増加させる可能性もあります。


仮想通貨マイニングでは複雑な数学的問題を個々のGPUで計算しますが、AIのトレーニングでは大量のデータを処理するために多数のチップとメモリが連携して動作する必要があります。そのため、マイニング業者が持っているGPUをAIトレーニング用に変換するのは簡単ではありません。そこで一部のスタートアップは、マイニング業者が持て余していたGPUを買い取って自社でAIトレーニング用ハードウェアを構築し、AIスタートアップなどにリソースを販売しています。

クラウドコンピューティングスタートアップ・TogetherのCEOを務めるVipul Ved Prakash氏によると、マイニング業者が手放そうとするGPUの約20%がAIのトレーニングに転用できるとのこと。マイニング業者から買い取ったGPUでAI開発者向けサーバーファームを構築するPrakash氏は、「マイニング業者は彼らのハードウェアをどうするかについてパニックになっていました」と述べています。

GPUを持て余しているマイニング業者がAIコンピューティング事業に参入する動きは、小規模なAIスタートアップや研究機関にとって喜ばしい事態です。AIスタートアップ・Mellis AIの創業者であるデミ・グオ氏は、主要なクラウドコンピューティングプロバイダーと十分な容量の契約ができなかったため、Togetherのクラウドコンピューティングを利用しているとのこと。グオ氏は、Togetherのサービスは非常に成熟した大企業よりも安価だと述べました。


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