正直、私はビビっていた。日本橋ふくしま館で出会ってしまった奈良屋の蕎麦、珍しさのあまり、なんと3つも買ってしまっていたのである。
そのうち1つは、いとも簡単にランキング1位へ。一番弱いだろう……と踏んでいた『大内宿場そば』が、なんとまさかの “最強” だったのだ。
今回登場するのは、前回よりもはるかに強そうな『奥会津蕎麦』。何が恐ろしいって、こちらも奈良屋お得意の “乱切り” なのだ……。しかも!
パッケージをよく見ると、過去にランキング4位を奪取した『奥会津山芋蕎麦』の兄弟的な商品であることが判明。共に「細め・乱切り」である。
しかしながら、今回のは「山芋なし」。会津産そば粉「会津のかおり」と国産小麦粉「ゆきちから」を使用しているのがウリのようだ。
また、乱切りの太さも「1.6mm」「1.9mm」「2.2mm」と、以前の『奥会津山芋蕎麦』と完全に同じ。まさにバージョン違いといったところだが……
ランキングは奈良屋に制覇されてしまうのか?
デカい鍋にタップリのお湯を沸かし……
4分位ゆでて……
完成。
して、そのお味は──
まいっちゃうね。これはほんとに……まいっちゃうね……。もうね、食べた瞬間「乱」なんだよね……。
この楽しさ。
三重奏というのですか。そこにつゆが入って絡み合って、いつしかそれはオーケストラにまでなっちゃって……。
相変わらず素晴らしい。「家そば」か「外そば」かなんて愚問でしょう。「外」に決まってる。やはり奈良屋の「乱切り」は半端ない。
でもね、私も経験値を積んでいる。以前に4位を取ったのは事実だけども、それから膨大な経験を積んでしまっている。
さらに、どちらかと言えば「太め」が好きな私に対し、これは「細め」。以前はそれも気にならないほど「乱切り」が珍しかったので大興奮したが、すでにそれも経験済み──。
人は進化する。経験と共に、進化する。大人になるというのは、そういうこと。もしも過去に私がこの蕎麦に出会っていたら、やはりランキング入りしていたことだろう。
でも、今は──。
ちなみに、私はこの蕎麦を、「冷」&ホカホカの鴨つゆと一緒に「鴨せいろそば」でいただきたい。
細めの乱切りに鴨せいろのジューシーなつゆが絡んだら、それはもう大変なことになると思う。いつかやりたい。絶対に、合う。そして、絶対に楽しい蕎麦になるはずだ。
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24