まな板は毎日の料理に欠かせない道具で、特に軽くて使いやすいプラスチック製のまな板は広く普及しています。しかし、プラスチックでできたまな板で食べ物を切ると、大量のプラスチック粒子が発生してしまう可能性があることが、新しい研究により判明しました。
Cutting Boards: An Overlooked Source of Microplastics in Human Food? | Environmental Science & Technology
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.3c00924
Cutting boards can produce microparticles when chopping veggies, study shows – American Chemical Society
https://www.acs.org/pressroom/presspacs/2023/june/cutting-boards-can-produce-microparticles-when-chopping-veggies.html
Your cutting board might be contaminating your food with microplastics
https://www.zmescience.com/ecology/cutting-board-microplastic/
Your vegetable chopping board is invisible source of Micro-plastics
https://groundreport.in/your-vegetable-chopping-board-is-invisible-source-of-micro-plastics/
まな板で食材を切ったり刻んだりすると、だんだんと溝や傷ができていき、小さなプラスチック粒子が発生して食品に混入してしまう可能性があります。しかし、世界中の家庭でまな板が使われているにもかかわらず、どれくらいのマイクロプラスチックが発生するのかや、それが有害かどうかなどは確認されてきませんでした。
そこで、アメリカ・ノースダコタ州立大学を中心とした研究チームは、現実的な食品調理シナリオで発生するマイクロプラスチック粒子を測定する実験を行いました。この実験には、5人のボランティアが参加し、スチール製の包丁でにんじんをカットしました。そして、プラスチック粒子が含まれていないか検査済みの水で調理後の包丁とまな板を洗浄し、調理により生成された粒子をろ過して分析にかけました。
その結果から研究チームは、ポリプロピレン製のまな板で調理すると年間7940万個、ポリエチレン製まな板では年間1450万~7190万個のマイクロプラスチックが発生すると推定しました。検出されたマイクロプラスチック粒子で最も一般的だったのは、大きさが100マイクロメートル未満の球状のマイクロプラスチックでした。
この量のマイクロプラスチックを重さに換算すると、ポリプロピレン製まな板からは年間49.5gのプラスチック粒子が、ポリエチレン製のまな板からは年間7.4~50.7gのプラスチック粒子が発生していることになると、研究チームは述べています。
実験結果では、個人ごとの食材の切り方やどこまで細かく切るかなどが粒子の発生数に影響していましたが、最も影響が強い要因はまな板の材質でした。研究チームは木製のまな板でも実験を行っており、木製のまな板ではプラスチック製まな板に比べて木材の微粒子が4~22倍が放出されていたとのことです。
まな板を使用すると、その材質の微粒子が大量に発生することが確かめられましたが、健康への影響は未知数です。研究チームは、マウスの細胞をマイクロプラスチックと木材の微粒子に72時間さらす毒性試験も行いましたが、この実験では有意な差が見られませんでした。
短期間の予備試験で毒性が確認されなかったとはいえ、この研究はプラスチック製まな板が人間の食べ物に含まれるマイクロプラスチックの汚染源となることを明らかにしたものと位置づけられており、研究チームはプラスチック製まな板の使用について「他の選択肢を選ぶことで潜在的な食品のマイクロプラスチック汚染を減らすことができます」と呼びかけています。
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