酒好きであれば一度は聞いたことがある名前かもしれませんが、中国には「貴州茅台酒」という酒造企業があります。一般的な知名度でいえばほぼ無名な企業ですが、実は会社の時価総額は42兆円あり、世界第25位の大企業です。これはコカ・コーラやペプシを上回っており、飲料会社では世界最大級といえるでしょう。
貴州茅台酒がどのように巨大企業になったかを、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。
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*Category:テクノロジー Technology *Source:Logically Answered,wikipedia
「貴州茅台酒」が成功できた理由とは?
一般的な貴州茅台酒が販売する茅台酒は、熟成年数にもよりますが1本約4万円から約600万円で取引されます。また、古酒であれば約1.4億円以上で取引されることもあるとのことです。そのため、貴州茅台酒は毎年約2.8兆円の売上と約1.8兆円の純利益を上げ、純利益率は53%を超えています。しかし、貴州茅台酒は昔からこのように稼げていたワケではありません。
実際、ほんの20年前までは会社全体で約280億円の売上と約107億円の純利益しかありませんでした。つまり、貴州茅台酒は20年の間に100倍から200倍の成長を遂げているということです。また企業の成長に伴い株価も跳ね上がり、約290倍になっています。貴州茅台酒は一体どのようにして成長したのでしょうか?
貴州茅台酒が成功した要因の1つは、歴史上最も偉大な中国人が茅台酒を飲んでいたというブランディングを行ったからです。ただ、歴史学者や記録によると、茅台酒のブランディングはマーケティング目的で広められた嘘と言われています。しかし、中国人の多くは茅台酒のブランディングを信じ、歴史的に価値のある飲み物だと思っているのです。
そして、茅台酒は1915年のパナマ太平洋国際博覧会でも注目を集めました。この博覧会はかつてないほどの規模で行われ1,800万人もの人々を魅了していました。博覧会には、アメリカ初の大陸横断電話など、当時の最先端技術が紹介されていました。その中の一角に、茅台酒の展示もありました。 茅台酒は大陸横断電話ほど印象的ではありませんでしたが、その香りと味は、他の国々が経験したことのないものでした。そのため、博覧会で人気を博し、世界の舞台で中国の存在感を示すことになったのです。
また、1927年から1949年にかけての中国内戦にも茅台酒は関係しています。この戦争は、アメリカを後ろ盾とする中華民国と、ソ連を後ろ盾とする中国共産党との間で勃発しました。中国共産党の軍隊は人民解放軍と呼ばれ、この軍隊を勝利に導いたのが茅台酒といわれています。どうやら兵士たちは戦いの際に、気分を高揚させ、傷を消毒するために茅台酒を使っていたようです。
ただ、兵士たちが本当に茅台酒を使っていたかは不明です。なぜなら、この話は中国共産党が広めた話だからです。そして戦後、中国共産党はこのイメージを倍増させ、毛沢東が愛飲していたとも宣伝しました。
すると、茅台酒は外国の指導者たちにも人気が出ました。アメリカのニクソン大統領も中国と会談した際に茅台酒を口にしています。また国務長官のヘンリー・キッシンジャーも「十分な量の茅台酒を飲めば、何でも解決できると思う」と発言しています。このような理由から、茅台酒は中国の飲み物としてだけでなく、エリートの飲み物として確固たるものになったのです。それから数十年の間に茅台酒は大富豪や億万長者の飲み物として定番化していきます。
1999年まで茅台酒には複数の銘柄がありました。そこで中国共産党は有名な茅台酒の蒸留所をすべて貴州茅台酒という1つの国営企業に統合しました。
1999年当時、中国のGDPは約143兆円でした。現在、中国のGDPは約2500兆円で17倍に成長しています。つまり、貴州茅台酒は、中国の富と中国共産党の力を示す一種の指標として機能したのです。
そんな茅台酒の売上の97%は中国からのものです。また、この酒の中心層は40~60歳の男性とのことです。つまり、外国人や若者は茅台酒を習慣的に飲んでいないということです。そのため貴州茅台酒が世代を超えて生き残るかどうかは時間が経たないと分かりません。
結局のところ貴州茅台酒が世界有数の企業になれたのは、巧みなブランディングと中国共産党員などを含むエリートに高額で売りつけているからです。今や貴州茅台酒と茅台酒自体が背負っている歴史は、高額な価格の支払いを正当化する大きな要素になっています。これはまさにブランド力の証明であると「Logically Answered」は述べています。