マクドナルド値上げでバーガーキングのほうが低価格&高品質の商品も…低単価客を敬遠


画像:「マクドナルド公式サイト」より

 日本マクドナルドが、7月19日から東京・名古屋・大阪エリアを中心とした都心部184店舗とデリバリーにおいて適用価格を見直し、実質的な値上げをすると発表した。この1年半で4度目の値上げとなり、利用者たちから悲鳴が上がる中、SNS上ではコスパ面や満足度の観点からバーガーキングへの「鞍替え」を検討する人が増えているようだ。バーガーキングが注目された原因や業界への影響について、専門家の見解を交えて検証する。

 すでにマクドナルドは空港やサービスエリアなどの「特殊立地店」と都心の一部店舗で価格を変更していたが、今回の改定によって、賃料や人件費などのコストが高い東名阪エリアを中心として「都心店」「準都心店」に全店舗の約6%にあたる184店舗を分類し、それぞれ適用価格を見直す。

 価格見直し後は、準都心店では通常店舗より10~30円、都心店では10〜90円高くなる。具体例としては、ビッグマックは通常450円(税込/以下同)のところ、都心店では最大50円の値上げで500円、準都心店では最大20円値上げて470円に。さらに、サムライマックは最大60円、ダブルチーズバーガー、てりやきマックバーガー、フィレオフィッシュなどは最大40円(準都心店は10~20円)の値上げとなる。ポテトやナゲットも対象でセットを含めると都心店は最大90円の値上げとなるが、ハンバーガーやポテトのSサイズなどは価格を据え置くという。

 また、デリバリーについては「ハンバーガー:220円→240円」「チーズバーガー:250円→280円」「チキンクリスプ:230円→260円」「ダブルチーズバーガー:480円→520円」「てりやきマックバーガー:450円→490円」など全体的に値上げとなる。

 店舗によって値上げ額にバラつきがあるからか、現在のところ日本マクドナルドの公式ホームページでは値上げ後の店頭価格をアナウンスしておらず、一部では混乱も起きているようだ。「都心店」「準都心店」に選ばれたのは全体の6%なので、すぐに全国のマクドナルド好きに影響があるわけではないが、いつも通っている店が値上げ対象になって「単品で最大50円、セットで最大90円も上がる」などといわれると、これまでどおりの利用を躊躇してしまう人もいるだろう。

 実際、SNS上ではマクドナルドの値上げ発表を受けて「マックは安いから助かってたのに、もう高級外食だよ」「もう気軽に行けないわ…学校帰りに毎日マックに寄ってた時代が懐かしい」「週1の楽しみで行ってたのに、隔週か月1くらいになっちゃうな」といった嘆きの声が多く寄せられている。他のチェーンにおいても、モスバーガーが3月に全商品の約7割について10~50円ほどの値上げを実施、ロッテリアも2月に一部商品を10~30円ほど値上げするなどしているが、マクドナルドの値上げはとりわけ反響が大きいようだ。

 こうした反応と同時に、Twitter上では「マックの値上げでバーガーキング一択になった」「あまり値段が変わらないならバーガーキングのほうが満足感ある」といった意見が続出。マックの値上げが話題になっているはずなのに、トレンドワードに「バーガーキング」が入るという珍しい事態となった。

バーガーキング

 バーガーキングが大きな注目を浴びた要因について、ファストフード・外食産業に詳しいフードアナリストの重盛高雄氏はこのように指摘する。

「従来は比較的高めの価格帯であったバーガーキングでしたが、マクドナルドの価格帯が上がるにつれて同じレンジに入ってしまった。マクドナルドは質が変わらないまま値上げ、という印象に対し、価格が高めであるものの質はいいという印象を持つバーガーキングが見直された、と感じています。マクドナルドは今までも地域単価の導入に取り組んできましたが、ようやく広く実施できる環境になったと感じます。原材料の価格や輸送費などすべてが上昇傾向にある中での『値上げ』は、理解を示す消費者が増えているのも事実です」(重盛氏)

 価格については、「てりやきバーガー」のセットで比べると、マクドナルドの「てりやきマックバーガーセット」は現時点で通常価格が670円だが、バーガーキングの「スモーキーテリヤキバーガーセット」は550円となっている。また、マクドナルドのセットは価格帯が520円~850円ほどだが、バーガーキングは最大180円オフとなる550円、600円、650円の3つの価格帯から好きなバーガーのセットを選べるキャンペーン「オールデイ・キング」を実施。重盛氏が指摘したように、最近は「マックは安い、バーガーキングは高い」というイメージがそれほど当てはまらなくなっているようだ。

 実際のところ、コスパ面や品質面でマクドナルドとバーガーキングはどのような評価となるのか。重盛氏に比較してもらった。

「相対的な価格妥当性は、バーガーキングの商品はマクドナルドに比べて高い印象を受けます。ワッパーJr.を実食しましたが、具材の多さを感じました。咀嚼していて楽しいです。マクドナルドは全体的に質が下がった印象を受けました。基本のハンバーガーはバンズのパサパサ感が強く、パティは味を感じません。コスパ面でも、バーガーキングはセットやクーポンなどを活用すれば実売価格はお得になります。マクドナルドはクーポン類の割引額も下がり、消費者が感じるお得感はかなり下がっていると思います」(同)

 さらに、重盛氏はマクドナルドの値上げの影響をこう分析する。

「マクドナルドはコロナ禍での居場所として業績を伸ばしましたが、決して提供する商品が優れているからではありませんでした。昨年から昼マックのコンビ商品を廃止するなど、低客単価のお客を少なくしようとする試みが続いており、月次を見てもここ数か月は客数が減少し、客単価は上がる図式になっています。昨夜も夜にマクドナルド店舗を訪問しましたが、若年層が多く見受けられました。一回の利用単価が上がることにより、訪問回数を減らすお客はこれからも増加するのではないか、と思います。店舗数や立地の関係もあり、業界勢力図に大きな変動はないと思いますが、例えばマクドナルドで700~800円ほどを支出するのであれば、他チェーンまたは他の飲食店に行く可能性のあるお客は増加すると考えます」(同)

 マクドナルドが業界最大手であることは揺るがないだろうが、相次ぐ値上げによって「ハンバーガー難民」が生まれる可能性もある。そうした人々がコスパ・満足度の面からバーガーキングなどの他店に希望を見出すという流れは、今後強まっていくのかもしれない。

(文=佐藤勇馬、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

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